プリンスやトム・ペティの死にも関係 —— 強力なドラッグ“フェンタニル”、中国から郵便でアメリカに

トム・ペティ

2017年10月に急死したロック・ミュージシャンのトム・ペティ。

Jerod Harris

フェンタニル(麻酔や鎮痛剤として使われる合成オピオイド)は、ヘロインよりも30倍強力だと言われ、2017年、2万人以上のアメリカ人の命を奪ったとされる。しかも郵便でやり取りされている。

フェンタニル取り引きについての上院の最新調査では、プリンストム・ペティなどの著名人の死にも関係していたフェンタニルが、アメリカ合衆国郵便公社を使って中国から持ち込まれていることが分かった。

アメリカは今、大きな問題を抱えている。

フェンタニルは様々な形をとる。処方箋があれば合法的に手に入り、パッチや点滴で投与される。路上では錠剤やオキシコドンなど他のオピオイド系鎮痛剤として流通している。

フェンタニル注射液

フェンタニル注射液のアンプル。

Erowid Center

出典 : Centers for Disease Control and Prevention

1999年以降、オピオイド系鎮痛剤の過剰投与による死者数は4倍になっている。2016年、6万4000人近いアメリカ人がオピオイドが原因で死亡した。このうち約2万100人はフェンタニルのみの使用によるもの。

過剰摂取による死者数を示すチャート

Business Insider / Samantha Lee


路上で押収された偽造薬の中にもフェンタニルが増えている。この偽造薬はヒドロコドン(hydrocodone)と呼ばれ、ノースカロライナ州での捜査で押収された。

錠剤

Reuters


フェンタニルは、他のオピオイド系鎮痛剤よりもはるかに強力。麻薬密売人は少量のフェンタニルを混ぜるだけで、強力な薬物として売ることができる。だが、摂取量がほんの少し多いだけでも死に至る。

左は致死量のヘロイン、右は致死量のフェンタニル。

左は致死量のヘロイン、右は致死量のフェンタニル。

New Hampshire State Police Forensic Lab

出典 : Fusion, "Death by Fentanyl," 2016; The Globe and Mail, "How Canada got addicted to fentanyl," 2016

今回、上院の調査を受けたフェンタニルのオンライン販売業者6つのうち、5つは中国が拠点。販売業者はUSPS(アメリカ合衆国郵便公社)を使い、アメリカ国内300カ所以上に数百パッケージを郵送している。

白い粉末を持つ手

AP


過去の調査でメキシコの関与も明らかになった。中国から送られた原材料がメキシコの密売人によって大量のフェンタニルに加工されているケースもある。もちろんアメリカに直接送られ、アメリカ国内で加工されていることもある。

フェンタニルの警告ラベル

Drew Angerer/Getty


麻薬密売人はニセのラベルを貼って原材料の粉末が入ったパッケージを発送する。南カリフォルニアで当局が押収した箱のラベルは、オフィス用品になっていた。箱の1つには、錠剤の成形に使う250キログラムの錠剤プレス機が入っていた。「穴開け機」というラベルが付いていた。

郵便物の仕分け作業

Joe Raedle/Getty Images


メキシコでは、ヘロインと混ぜて「エル・ディアブリート(El Diablito)」という麻薬が作られる。意味は、小さな悪魔。「純粋なヘロインを作っている者はもうほとんどいない。エル・ディアブリートの方が強力だから」と密売人の1人が捜査の中でFusionのレポーターに語った。

麻薬の加工

Fusion/YouTube

出典 : Fusion, "Death by Fentanyl," 2016

密売人は、原材料は中国から入手し、コロンビア人薬剤師に5万ドル(約540万円)を払ってフェンタニルの作り方を教わったと語った。

白い粉末

YouTube/Fusion

出典 : Fusion, "Death by Fentanyl," 2016

ドラッグ製造者は、原材料を素早く変える。当局はそのスピードについて行けない。しかも極めて大量に製造している。2013年から2014年の間に、フェンタニル関連の逮捕者数は426%増加した。

作業する男性

YouTube/Fusion

出典 : STAT News, "Chinese labs modify deadly fentanyl to circumvent ban on sales to US," 2016

この急激な増加に対して、アメリカ麻薬取締局(DEA)は十分に対応できたとは言えない。2015年のアメリカ国内の麻薬の脅威に関するレポートで、麻薬取締局は、フェンタニルが「オピオイド・マーケットの大部分を占めるとは考えにくい」と記した。

白い粉末

YouTube/Fusion

出典 : 2015 National Drug Threat Assessment Summary, DEA

見通しは間違っていたようだ。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のデータによると、フェンタニルの過剰摂取による死亡数は減少することはなく、現状維持にも収まらなかった。それどころか、2013年から2016年にかけて毎年88%増加した。

ニセのパーコセット錠剤

テネシー州の捜査当局が押収したニセのパーコセット錠剤。実際はフェンタニル。

Tommy Farmer/Tennessee Bureau of Investigation via AP


「麻薬密売人が我々の郵便システムを使い、フェンタニルや他の合成薬をアメリカ国内に持ち込んでいることがようやく把握できた」と、調査レポートを執筆したロブ・ポートマン上院議員は声明で述べた。「政府はこの危険な麻薬に対する対策を立て、人の命を救わなければならない」

発言するロブ・ポートマン議員

Jay LaPrete/AP


[原文:Fentanyl, the powerful drug implicated in Tom Petty's death, is getting to the US from China via the postal service — here's how

(翻訳:まいるす・ゑびす/編集:増田隆幸)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み