「人工知能による広告」をフォルクスワーゲンはどう活用したのか?

フォルクスワーゲン

提供:DIGIDAY[日本版]

フォルクスワーゲンが自動化したいのはクルマだけではない。AIを活用することで、ドイツ国内におけるメディアバイイングを管理し、それがメディアエージェンシーよりも効果的だということを証明しようとしている。

フォルクスワーゲンで、乗用車のマーケティング・PR部門のトップを務めるラッツ・コーセ氏によると、自社が広告投資の意思決定を行う際、AIや予測分析を活用するデンマークのメディアエージェンシー、ブラックウッド・セブン(Blackwood Seven)の勧めに従うときは、いつもほかのメディアエージェンシーを活用したときより売り上げが向上するという。彼のチームは売り上げに基づいた適切な広告購入を行うためにブラックウッド・セブンのアルゴリズムを活用していると、コーセ氏は語る。

しかし、これまでフォルクスワーゲンがAIプラットフォームの役割を見出すまでには、多少の時間が必要だったのも事実だ。2016年、彼らは大手エージェンシーのメディアコム(MediaCom)との契約を打ち切り、ドイツ国内でのデジタルビジネスをブラックウッド・セブンに委任した。当時コーセ氏は、そのアルゴリズムがほかのエージェンシーよりも優れたメディアプランニングを行ってくれるという確信があったわけではないが、契約後わずか数カ月で成功の兆しが見えたという。

そして2016年の9月から12月、フォルクスワーゲンはそのアルゴリズムが推奨するメディアを、コンパクトカー『up!』モデルのキャンペーンに活用。その結果、エージェンシーからの推奨メディアだけを使ったときと比べてディーラーからの受注が14%増加し、ある事例では20%になることもあったと、コーセ氏は明かした。

市場データに基づき予測

フォルクスワーゲンは、初期のこうしたキャンペーン以来、ドイツ国内でのメディア戦略のすべてに対してこのアルゴリズムを採用してきた。広告主が提供する車種にはそれぞれ違った戦略があるが、ブラックウッド・セブンのAIは、その戦略ごとにどのメディアがマーケターにとってもっとも良い結果をもたらすかを予測している。この予測は、フォルクスワーゲンの取引データや受注数、そして燃料や競合車の価格、国内全体の登録車の数などといった、ニールセン(Neilsen)らが提供する市場データに基づいたものだ。ほかのAIプラットフォームと同様に、このデータが増えれば増えるほど、ブラックウッド・セブンのAIからの提案の精度が向上するという仕組みだ。

フォルクスワーゲンのマーケティングチームは2017年、このアルゴリズムの勧めどおりにディスプレイ広告、検索やSNS向けの広告をプラットフォームから直接購入した。エージェンシーを介さずに直接メディアの所有者と取引を行うことで、エージェンシー経由でのメディア購入の際に起こり得る、(表向きはわからない)リベートコストを支払わずに済んだ。

だが2018年の現段階では、フォルクスワーゲンがAIプラットフォームのみを活用するのは、キャンペーンの計画に留まっており、メディア購入に関してはエージェンシーも併用していく予定だ。これは、マーケティング大手のオムニコム(Omnicom)グループのPHDをグローバルメディアエージェンシーとして起用しはじめてから1年近く経ったあとのことだ。

AIの活用で属人性を排除

コーセ氏は、フォルクスワーゲンが今後、徐々にエージェンシーをすべてAIプラットフォームに置きかえるかどうかの見通しについては口を閉ざしたが、メディアでの収益をどのように見出して行くかという点で、AIがどれほど重要なものであるかということを強調した。

コーセ氏によると、ブラックウッド・セブンがフォルクスワーゲンのエージェンシーと比べて優れている点は、AIプラットフォームが有する莫大なデータの処理能力にある。フォルクスワーゲンのマーケターは、1400以上のタッチポイントからのデータを収集しているが、それらは「エージェンシー側の属人的な解釈」によるものであり、完全にデータに基づいたものではないと、コーセ氏は語る。また、このアルゴリズムがもたらす最大の利点は、ブランドのメディア投資にあたって正確な予測ができるところにあると付け加えた。そして、そのデータの正確性が高まるほど、「メディアの活用が最適化されていく」とコメントを締めくくった。

これはつまり、ブランドはいくつかのキャンペーンへの投資額を抑えつつ、売り上げアップを見込めることを意味していると、コーセ氏は語る。それらのキャンペーンの詳細については明かしてはくれなかったが、新車の発表の際にはそのアルゴリズムの予測に基づき、ほかのメディアと比べると古臭いメディアだと考えられてきた、ラジオのようなメディアがより頻繁に使われはじめているという。

台頭には時間を要する

だが、人間ではなく機械を信用するというのは、そう簡単なことではない。ブラックウッド・セブンと2年間協働し、初期の議論までにさらに1年かかったフォルクスワーゲンのドイツ国内のチームは現在、このアルゴリズムのパフォーマンスについてほかの業界と話し合っているところだ。AIがメディアエージェンシーに取って代わる、というウワサが盛り上がっているが、現実的には、それがすぐに起こるということはないだろう

ブラックウッド・セブンのイギリス市場への参入が失敗に終わったことが、それを如実に表している。透明性に対する危機感が高まりを見せていた2017年12月、このスタートアップは、マーケターに対してメディア投資を管理できる機会を与えていたにも関わらず、1年足らずでオフィスを畳まなければならなくなった。

Seb Joseph(原文 / 訳:Conyac

DIGIDAY[日本版]より転載(2018年1月18日公開の記事

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