Twitter/Ingvar Kamprad
イケア(IKEA)の創業者イングバル・カンプラード(Ingvar Kamprad)氏が27日(現地時間)、この世を去った。
カンプラード氏は、70年以上にわたり、この世界最大かつ多くのファンを持つ家具ブランドを率いてきた。
最も多いときで481億ドルの純資産を誇った同氏は、一代で富を築いた、世界で最も裕福なビリオネアの1人だ。
ベストセラー作家のマルコム・グラッドウェル(Malcolm Gladwell)氏によると、カンプラード氏の成功は、そのとっつきにくさや、他人にどう思われようと気にしない、どちらかというと周りから敬遠されがちな性格にあったという。
カンプラード氏の半生を写真とともに振り返ってみよう。
スウェーデン南部で1926年に生まれたカンプラード氏は、5歳でマッチ売りをしていた。10歳になると自転車に乗って、クリスマスの飾りや魚、鉛筆を売った。
カンプラード氏の地元、スウェーデンのスモーランド地方。
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Source: Business Insider, Sweden.se
10代の頃、カンプラード氏は「ヒトラーの熱狂的な支持者」であったドイツ人の祖母の影響で、ナチスの青年運動に関与。後に「人生最大の間違い」だったとして、従業員に許しを請う手紙をしたためている。
Denis Balibouse/Reuters
17歳のとき、ディスレクシア(文字の読み書きが困難)をものともせず、学校で良い成績を取ったご褒美にと、父親から現金をもらった。カンプラード氏はそのお金で1943年にイケアを創業、写真立てといった小物雑貨を売り始めた。家具の取り扱いを始めたのは、創業から5年が経ってからのことだ。
カンプラード氏の地元にあるイケア1号店。
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Source: Business Insider
「イケア(IKEA)」という名前は、自身の名前イングバル・カンプラード(Ingvar Kamprad)と、自身が生まれた農場エルムタリッド(Elmtaryd)、その近くの村アグナリッド(Agunnaryd)の頭文字を取って付けられた。
イケア1号店のマネジャー、ハンス・アックス(Hans Ax)氏と握手を交わすカンプラード氏(右)。
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Source: Wealth-X, Business Insider
1956年、カンプラード氏は今やイケアの代名詞とも言える「フラットパック」を導入、消費者自身に組み立て作業をしてもらうことでコストを削減するこの手法により、家具業界に革命をもたらした。
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Source: Business Insider
ベストセラー作家のマルコム・グラッドウェル氏によると、カンプラード氏は誠実さと寛容さ、とっつきにくさを合わせ持っていた。こうした性格が、カンプラード氏を恐れを知らぬイノベーターに育てた。
Screenshot/YouTube
Source: Business Insider
1973年、カンプラード氏は成長中のビジネスにとって好ましくない事業税を避けるため、イケアの本社をスウェーデンからデンマークのコペンハーゲンに移した。スウェーデンの上がり続ける税に反対し、自身と家族もスイスへ移住した。今日、イケアの本社はオランダに置かれ、カンプラード氏はスウェーデンで暮らしていた。
デンマーク、コペンハーゲン。
Bucchi Francesco/Shutterstock
Source: Business Insider
イケアの企業構造は複雑だ。オランダに拠点を置くイケア・グループは、財団法人スティヒティング・インカ・ファウンデーション(Stichting INGKA Foundation)が所有。同財団は、イケア・グループとそのフランチャイズに再投資を行うとともに、慈善活動に資金援助を行う。
IKEA
Source: IKEA.com
カンプラード氏には、養子の娘が1人、生物学上の息子が3人いる。息子たちはイケア全体のビジョンや長期戦略をリード、同社に多大な影響をもたらしている。2013年には一番下の息子マティアス氏が、カンプラード氏からインター・イケア・ホールディングの会長を引き継いだ。
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カンプラード氏とその家族の資産をめぐっては、ここ数年、さまざまな憶測が飛んでいた。同氏の弁護士はスティヒティング・インカ・ファウンデーションの資金は2つの目的でしか使用されないことから、同氏個人の純資産については明らかにしてこなかった。だが、情報サイトWealth-Xによると、その純資産は481億ドル(約5兆2400億円)にのぼる。
Heribert Proepper/AP
Sources: Business Insider, Wealth-X
イケアの上場について、カンプラード氏はこうコメントしている。「イケアにとって、株式市場は選択肢になかった」「我々の成長計画は、長期的な視点に基づいてのみ確保される。イケアを金融機関に依存させたくなかった」
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Source: Business Insider
イケアに関する著書を、これまでに2冊出版している。同社のコンセプトと思想をまとめた、1976年の『ある家具商人の言葉(原題:The Testament of a Furniture Dealer)』は今日、イケアのマニフェストになっている。1990年代後半にスウェーデンのジャーナリストと出した『Leading by Design: The IKEA Story』は、イケアとカンプラード氏の生活に通じる、シンプルさの維持について書かれている。
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カンプラード氏は、その驚くほどの倹約家ぶりでも知られる。飛行機はエコノミークラス、宿泊先には安いホテルを好むと言われ、同じボルボ車に20年間乗り続けている。
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Source: Wealth-X
現在、イケアは47カ国、370店舗を展開している。Wealth-Xによると、財団にイケアを委ねるまで、カンプラード氏は一度も資金の借り入れや株式の発行をしなかった。
青色はすでにイケアが出店している国を、黄色は出店が計画されている国を示している。
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フードサービスも人気で、年間約18億ドル(約2000億円)を売り上げている。それぞれの店舗にビストロがあり、スウェーデン料理や出店先の地元料理などを提供している。スウェーデン人に馴染み深いミートボールやワッフルのデザートは、店頭やオンラインでも購入できる。
REUTERS/Toby Melville
スイスで40年を過ごし、イケアを現在のようなグローバル企業に育て上げた後、カンプラード氏は2013年、家族や友人の近くで暮らすため、スウェーデンの地元へと戻った。カンプラード氏の妻は2011年に亡くなった。
カンプラード氏が育ったスウェーデンのスモーランド地方。
Flickr/Alexander Cahlenstein
Source: Telegraph
カンプラード氏は亡くなる直前まで、イケアの意思決定の責任者を務めていた。2017年3月に91歳になった。2014年にはこう話していた。「やることがたくさんあり過ぎて、死んでいる時間がない」
Getty Images/Chris Jackson
Source: Telegraph
(翻訳/編集:山口佳美)