実際の取材の現場にも持ち出している10.5インチiPad Proと12.9インチ向けSmart Keyboard。
・iPad Pro 10.5はノートPCより軽くて、バッテリーが持つ。LTE入りで約477g
・SmartKeyboardはあえて12.9インチ用。幅広で打ちやすい
・ペン入力でメモやクリエイティブな仕事にも使える
ビジネスでiPad ProとSmart Keyboardがどこまで使えるか? —— 編集部からこんなお題を投げかけられた筆者だが、結論からいうと、この2つを購入してから、iPadをビジネスで使う機会は大幅に増えている。主な用途は、取材や打ち合わせの際のメモ取り。シーンによってはApple Pencilを利用し、手書きにすることもある。Apple Pencilについては、主に紙媒体の校正にも活躍している。
昨年6月に発売された10.5インチ版のiPad Pro。
【レビュー製品概要】
『10.5インチ iPad Pro(64GB、Wi-Fi+Cellular)』
メーカー:アップル
直販価格:8万4800円(税別)『12.9インチiPad Pro用Smart Keyboard(JIS)』
メーカー:アップル
直販価格:1万8800円(税別)
あえてサイズ違いの12.9インチ用キーボードを使う理由
10.5インチ iPad Proと12.9インチ iPad Pro用Smart Keyboardという変則的な使い方をはじめたきっかけは、同業者のジャーナリスト・西田宗千佳氏がこの組み合わせで使っていて、気になったため。事前に試させてもらったが、確かに打ち心地がいいと感じ、購入に至った。
元々、取材や打ち合わせのメモは、Windows搭載のモバイルPCで行っていた。ただ、こと取材に関しては、PCだと機能性が豊富な割に、重くて起動にも時間がかかってメモ取りには役不足な印象がある。役不足だけならいいが、持ち運ぶのが重いし、バッテリーの持ちもiPadと比べると心もとない。そのため、iPad ProにSmart Keyboardを付け足してからは、もっぱらこの組み合わせを活用するようになった。
筆者所有のiPad Proは、10.5インチ版でWi-Fi+セルラーモデルのため、重量は477g。少し変わっているのは、これに(10.5インチ用ではなく)12.9インチ用の幅の広いSmart Keyboardを装着している。
12.9インチ用のSmart Keyboardは約330gだから、2つを足しても800g強だ。今では800gを切るPCもあることはあるが、選択肢が極端に少なくなる。Smart Keyboardは不要なときは、持ち運ばないでもいいのもメリットだ。
10.5インチ版のiPad Proに、12.9インチ用のSmart Keyboardを装着している。
なぜ、10.5インチ版のiPad Proに、12.9インチ用のSmart Keyboardを装着しているのか?
これは単純にキーピッチが広くなるためだ。10.5インチと12.9インチのSmart Keyboardを比較すると、横幅ほどキーピッチに違いはないが、やはりわずかでも大きい方が打ちやすい。幅も12.9インチ用だとキーを打つ際に腕を自然な姿勢で机に置くことができる。
キーピッチが広くなり、かつ腕を自然に机に置くことができる。
よく聞かれることだが、「iPad Proを12.9インチ版にすればいいのでは」と思われるかもしれない。しかし、それだと本体の重量が692gと一気に重くなってしまう。カバンの中でもかさばるため、本体は10.5インチ版、Smart Keyboardは12.9インチ用という組み合わせが、使い勝手と重量を両立させるために正解だったと感じている。ただし、Smart KeyboardをiPad Proのカバーとして使うことができなくなるため、その点だけは注意しておきたい。
キーがカバーと一体になっておりキーストロークが浅いため、しっかりとしたキーボードと比べると、どうしても打ち心地に違和感は覚える。一方で、これは慣れるとかなりの範囲をカバーできる。長時間、じっくり腰を据えて原稿を書くには向かないが、1時間前後のメモを取るにはこのキーボードで十分。
Smart Keyboardであれば、Bluetoothキーボードのように充電やペアリングも不要なため、とにかく手軽だ。この手軽さ、面倒のなさも、長期間使ううえでは重要な要素になっている。
マグネットで端子を接続するだけでよく、充電も不要で手軽だ。
ノートPC並みに使える愛用のメモアプリ「Wrix」
メモ取りには、「Wrix」というテキストエディタを利用している。
ただ、やはり原稿をきちんと書くには、しっかりしたキーボードを持つPCの方が優位だ。
あくまでも取材に特化、一般企業であれば会議や打ち合わせに持ち歩くマシンという役割だ。
文字入力をする際に、筆者は「Wrix」というテキストエディタを愛用している。1行の文字数を指定できたり、直接Googleドライブにファイルを保存できたりと、機能についてはPCのテキストエディタ顔負けだ。
iPadならではの2画面づかいで作業効率をあげる
実際の仕事となると、単にアプリを揃えるだけでは不十分だ。iPadの使い方のポイントは「2画面で使うこと」だ。筆者の場合は、調べ物をしながら原稿を書いたり、合間合間に届くメールをチェックしたりする。資料やメモを見ながら次のプレゼンの資料をつくったり、メールを見ながらマップアプリで出張先の場所を調べたりなど、といった使い方もできる(当然、PCに比べれば制約はある)。
マルチウィンドウ機能はiOS 9から搭載されており、iOS 11ではその機能がさらに向上している。2つのアプリを同時に開きたいときは、ドックから対象となるアプリをドラッグするだけでよく、操作も簡単だ。
マルチウィンドウ機能も強化されてはいるが、まだ制約も多くPCと同等とはいかないが、用途を選べば十分使える。
iPadならではの「難点」
iPadでは、例えばウィンドウのサイズには制約があるし、3つ、4つのウィンドウを同程度のサイズにして、好きな場所に置いておくこともできない。そもそもiPadにはデスクトップという概念もないため、ファイルがアプリごとに散らばってしまう。
詳しい人ならご存知のように、ファイル操作の難点を解消するために、iOS 11から「ファイル」というアプリが加わった。ただ、これも結局はアプリごとに管理しているファイルやフォルダーを参照できるだけで、根本的な使い方が変わったわけではない。そのため、10.5インチのディスプレイを縦横無尽に使って仕事をするということは、残念ながらできない。
ファイルアプリは、機能が限定的でPCのようには使えない。
ただ、表示できるウィンドウが少ないという制約のおかげで、目の前のメモどりに没頭できることにもなる。
原稿の執筆も、部分的にはできる。とりあえず頭にインプットした情報で、本文だけ一気に書き上げてしまうようなスタイルであれば、iPadで十分といえる。
ペンや内蔵SIMもビジネスに欠かせない
原稿執筆以外では、Apple Pencilの書き味が非常によく、ペン先の動きにディスプレイ上の描画がしっかりと追従するため、文字や線が本当に書きやすい。ガラスの上に樹脂のペン先を走らせているため、紙とペンを使う感覚そのままというわけにはいかないが、他のペン入力デバイスと比べても再現性は高い方だ。iPad Proは校正には欠かせないデバイスになっている。
Apple Pencilの書き心地は抜群で、主に校正で活躍。
主に海外で活躍しているApple SIM。
iPadに最適化された、豊富なアプリがそろうのがiOSの魅力だ。
ほかにも、Apple SIMが内蔵されていて海外出張時、特に北米では割安なデータプランを使えたり、ディスプレイの反射が少なく見やすかったりと、iPad Proならではのメリットは多い。また、大前提として、iOSはタブレットサイズに最適化された専用アプリが充実していることも特徴として挙げておきたい。
ソファでくつろぎながら「Booking.com」や「Skyscanner」アプリで出張の段取りを練ったり、「dマガジン」で情報収集したり、必要ならPCにリモート接続したりとさまざまな場面で活躍している。一部は他のタブレットやPCでもできることだが、アプリが総じて高品質で、ほしいと思ったアプリがすぐに見つかるのもiOSの強みといえるだろう。
よりPCに近づくような進化も必要だが、現状でも十分満足できる完成度の高いタブレットというのが、iPad Proに対する筆者の評価だ。
記者というと特殊な職業に思われるかもしれないが、ドキュメント作成と考えれば、他のビジネスとの共通点も多い。上記のような利用スタイルでiPad Proを活用することは、十分できるはずだ。
(文、写真・石野純也)
石野純也:ケータイジャーナリスト。出版社の雑誌編集部勤務を経て独立後、フリーランスジャーナリストとして執筆活動を行う。国内外のスマートフォン事情に精通している。
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