H&Mの店舗には、セールの表示があふれていた。
Business Insider/Mary Hanbury
- H&Mは2017年の第4四半期、売り上げが過去最低を記録したと報じられている。
- トレンドの最先端にあり続けるべく、サプライチェーンの迅速化を図るファストファッションの競合ZARA(ザラ)やASOS(エイソス)に、H&Mは押されている。
- H&Mに何が起きているのか、Business Insiderは実店舗を訪れてみた。
ファストファッションの王者がその座を追われつつある。
H&Mは、同社が流行の最先端にあり続けることを可能にしたそのサプライチェーンの速さから、長きにわたり、革命的な小売業者と見なされてきた。だが、同社の売り上げは2016年から低迷し始め、その傾向は2017年も続いた。直近の第4四半期には、H&Mの売り上げは過去最低を記録している。
その結果、同社の筆頭株主の1つであるスウェーデンの投資ファンド「スカンディア(Skandia)」は、H&M株の大半を売ったとブルームバーグは報じた。
「すぐには解消できないであろう、対処すべき問題がたくさんある」スカンディアのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、エリック・スジョストローム(Erik Sjostrom)氏はブルームバーグに語った。
2017年9月に公表された直近の収支報告で、H&MのCEOカール・ヨハン・パーソン(Karl-Johan Persson)氏は、事業再生が喫緊の課題だと認めた。 同社はサプライチェーンをスピードアップするための新しい技術に投資し、オンライン販売を強化するとともに、2018年にスタートする「Nyden」のような新ブランドを増やすという。
だが、同社はその後、いくつかの不運な出来事に見舞われた。2018年1月上旬、同社の広告がソーシャルメディア上で人種差別的だと糾弾され、ミュージシャンのザ・ウィークエンド(Weeknd)を含むブランド・アンバサダーの一部を失った。
H&Mが苦戦を強いられている理由を探るべく、Business Insiderはニューヨークにある店舗を訪れた。
わたしたちがニューヨークのソーホー地区にあるH&Mを訪れたのは、ある木曜日の日中だった。ここは市内で最もにぎわうショッピングエリアの1つで、隣には同社最大のライバルZARAがある。
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第一印象は、すいている。だが、平日の日中であることを思えば、そう驚くことでもないのだろう。
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ところが、隣のZARAはセール品を求める客でにぎわっていた。
隣にあるZARAの店内。
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H&Mはかつて、そのサプライチェーンの素晴らしさで知られていた。だが今は、ZARAやBoohoo(ブーフー)、ASOSといった競合他社に押されている。
H&Mの売り場。
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こうした企業は、製造拠点を主要市場に近づけることで、デザインと製造プロセスをスピードアップさせることに成功している。
ZARAでは全体の65%の商品が、スペイン、ポルトガル、トルコ、北部アフリカといった核となる市場の近くで作られている。一方、H&Mのサプライヤーの80%はアジアにあるとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
これがサプライチェーンのスピードに影響を及ぼしている。Fung Global Retail & Technologyの調査によると、ASOSやBoohoo、Misguidedでは構想から販売までに1週間~8週間、ZARAでは5週間だが、H&Mでは最大6カ月を要する。サプライチェーンのスピードについて、Business InsiderはH&Mにコメントを求めたが、回答は得られていない。
このスピードの遅さが、新しい流行や消費者の需要に素早く対応する妨げとなっている。それは店内を見ても明らかだ。入り口のディスプレイは本来、客足を呼び込むものでなければならないのだが、どうにもさえない。
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対照的に、隣のZARAはそのきらびやかなデザインで、客を引き付けている。
ZARAの売り場。
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2017年の第3四半期の業績報告でパーソン氏は、積極的な夏のセールにより利益は低下したが、在庫を一掃し、次の四半期に向け、良い準備ができていると話していた。だが、店舗からは異なる話が見えてくる。売り場のほぼ3分の1をセール品が占めている。
H&Mの売り場。セール品が並ぶ。
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Source: The Financial Times
価格はとても魅力的だが、デザインはいまいち。
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一方、ZARAのセールは、古くなった、売れない在庫の処分というより、おしゃれなバーゲンだ。
ZARAのセール品コーナー。
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H&Mの店内をさらに見て行こう。こちらの婦人服売り場のディスプレイは悪くない。だが、スタイルが統一されておらず、どんな人や状況を想定してデザインされているのか、理解に苦しむ。
H&Mのディスプレイ。
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H&Mの職場向けのスタイルは、その的外れぶりを表している……
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……そして、シンプルなアイテムが多すぎる。
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H&Mは、オンライン・ストアからのプレッシャーにもさらされている。店頭でも安いが、オンラインではさらに安くなることも。この黒いスカートは、29.99ドルだ。
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この男性用フェイクレザーのジャケットは69.99ドルだが……
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……こちらのチノパンは、29.99ドルと手頃だ。
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H&Mはデジタル・プラットフォームにも積極的に取り組んでいるが、ASOSのような他のファストファッション・ブランドに比べると、後れを取っている。H&Mのオンラインでの売り上げは、同社全体のわずか6%だ。
ASOS
「ファッション小売業界は成長著しく、デジタル化のよる大規模かつ急速な変化の最中にある。市場の勢力図は書き換えられ、新しいプレーヤーが登場、オンラインでの買い物が増えるなど、消費者の行動や期待も変化している」 パーソン氏は2017年9月、同社の9カ月の業績報告で投資家に向けて述べた。
全体として、H&Mは混乱しているようだ。全てのアイテムを全ての人に提供しようとしているのかもしれないが、そのメッセージは消費者を混乱させるばかりだ。
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同社は現在、オンライン・プラットフォームを成長させ、飽和状態の市場で店舗を縮小させる一方で、新たなブランドをそのポートフォリオに加えることに集中しようとしている。
その1つの形態であるNydenは2018年、オンラインでスタートする。
[原文:We visited an H&M store and saw everything that's wrong with the brand]
(翻訳/編集:山口佳美)