アマゾン、スタバが進める「キャッシュレス」に隠れた貧困問題

Amazon Go

Amazon Goでは、客はスマートフォンをかざして入店する。

AP/Elaine Thompson

  • スターバックスアマゾンといった企業は、現金を取り扱わない店舗を試し始めている。
  • 営業効率を高めたり、強盗被害を予防できるなど、レジなしの店舗は小売業者に大きなメリットをもたらす。
  • だが、アメリカ人の7%は銀行口座を持っておらず、キャッシュレスな社会はこうした人々を完全に排除することになる。

アメリカはキャッシュレス経済に向かっているのかもしれない。

現金が不要になることで、小売業者にメリットがもたらされる一方、一部の社会的に弱い立場にある人々に危機をもたらす可能性がある。

アマゾンは1月22日(現地時間)、ついに未来の食料品店Amazon Go(アマゾン・ゴー)をシアトルにオープンさせた。レジなしのこの店では、客は現金を支払うことなく、欲しい商品を持って出るだけで、後から正しい代金がアマゾンのアカウントを通じて請求される。

キャッシュレスに取り組んでいるのは、アマゾンだけではない。アメリカで人気のサラダ・チェーン「スウィート・グリーン(Sweetgreen)」は2016年、完全なキャッシュレスに移行する考えを表明。スターバックスも最近、現金を必要としない店舗をシアトルにオープンさせている。

「アメリカでは、モバイル端末による支払いは全体の30%超にまで成長している」スターバックスのCEOケビン・ジョンソン(Kevin Johnson)氏は、25日に行われた投資家向けの電話会議で述べた。「モバイル端末とクレジットカード払いの普及により、アメリカ国内ではキャッシュレスの店舗を展開できるようになった」

スターバックスのアプリ画面

スターバックスのアプリ。注文と支払いができる。

Starbucks, via The Motley Fool

小売業のアプリ開発を手がけるGPShopperのCMOマヤ・ミハイロフ(Maya Mikhailov)氏は、Business Insiderの取材に対し、ファストフードや、スウィートグリーンやスターバックスのようなチェーン店が、現金を必要としない小売り革命をリードするだろうと語った。キャッシュレスがサービスのスピードを向上させ、強盗被害を予防し、ロイヤルティー・プログラムとリンクさせることで、顧客の情報を企業が集めやすくなるのだ。

CivilScienceが1月に実施したオンライン調査によると、回答者の約75%は、レストランがキャッシュレスになっても、外食の頻度に影響はない、もしくは行く回数が減ると答えている。回答者の15%は、現金が使えなくなったら外食はしないと答えた。

だが、この15%の中には、現金の取り扱いがない店では純粋に買い物ができない人も含まれる。

2015年の時点で、アメリカ人の7%は銀行を利用しない、もしくは銀行口座を持っていない。つまり企業が完全なキャッシュレスに移行した場合、約2200万人の顧客を排除することになる。

銀行口座を持たない人の大半は、自ら口座を持たないことを選択したわけではない。お金がないからだ。これが悪循環を招く。銀行口座がないと、クレジットカードが持てず、生活に支障が出てくる。

つまり、キャッシュレス化という現金を否定する国際的な流れは、世界中の貧しい人々にとって、大きな障壁となりつつあるのだ。

「途上国で暮らす数十億もの貧しい人々は、物を買うためのわずかばかりの現金(しばしば、それは数十円ほど)が頼りだ」ブルームバーグのスリニバサン・シババラン(Srinivasan Sivabalan)記者は指摘する。「ネットワーク上のこうした取り引きを行うのは、コストが高すぎる。銀行サービスにアクセスがあるかどうかで、人々の間に階級を作り出す可能性もある」

「現金の素晴らしさは、金持ちであろうとそうでなかろうと、多様な人々の間の直接的かつシンプルな取り引きを可能にすることだ」金融ライターのドミニク・フリスビー(Dominic Frisby)氏はガーディアンに語った。「キャッシュレスを追求し始めると、銀行にお金を預け、金融システムに組み込まれなければならなくなる。最も貧しい人々の多くはこのシステムの外に取り残されてしまうだろう。こうした排除の危険が現実にある」

ただ、ミハイロフ氏は楽観的だ。アメリカで銀行口座を持たない人の割合は減少していると指摘した上で、キャッシュレス化が広まるにつれ、企業側も銀行口座を持たない場合の解決策を探し出さざるを得なくなるだろうと言う。

フィンテックのスタートアップはすでに途上国で、銀行口座を持たないコミュニティーに取り組み始めている。キャッシュレスの小売りが増えれば、銀行口座を持たない場合の処置が必要とされる場面も増える。

事実、社会的に弱い立場にある人々を守ろうとするなら、それは必要不可欠だ。小売業者がキャッシュレス化を試みる中、銀行口座を持たない人々の存在を無視すれば、アメリカだけでも数百万人が取り残されることになるだろう。国民の多くがデジタル決済に移行する一方で、現金を使い続けるのだ。

[原文:Companies like Amazon and Starbucks want to kill cash — and it could be a huge blow to the most vulnerable Americans (SBUX, AMZN)]

(翻訳/編集:山口佳美)

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