開業ラッシュで供給過剰?「東京オフィス2018年問題」の鍵は二次空室の動向

アベノミクスによる景気拡大や2020年の東京オリンピック特需期待で、オフィス、ホテルなど首都圏の事業用不動産市場は活況が続いてきた。

だが、2012年から上昇基調にあった東京のオフィスビルの賃料相場が2017年半ば以降頭打ちとなり、加えて2018年から2020年にかけ大型ビルの新規開業ラッシュが控えることから、市場の腰折れも懸念されている。グローバルで法人向け不動産のトータルサービスを手掛けるCBRE日本法人の坂口英治社長兼CEOに、「オフィス2018年問題」の見通しを聞いた。

日本橋

再開発が急ピッチで進む日本橋。手前左のビルは今年竣工予定。

撮影:浦上早苗

オーナーは強気と弱気交錯

2018年から2019年にかけて、東京では大型オフィスビルが続々と開業する。2年間の年平均新規供給面積は23万3000坪で、過去10年間の平均18万坪を3割近く上回る。CBREは東京オフィス市場の2019年末の空室率が、2017年末比3ポイントほど上昇し、5%弱になると予測。実際、賃料水準も2017年第3四半期をピークに、緩やかに下落している。

東京オフィスビル市場は以前から、大量供給が引き起こす「2018年問題」が取りざたされているが、坂口氏は、「今年竣工するオフィスビルについては、強い景気に支えられ、大半が既に入居テナントを見つけているため、だぶつく心配はしていない」と話す。

一方で、これらの新築ビルに入居する企業は、既存の大型ビルからの移転が中心であるため、移転元のビルが空く「二次空室」の動向が、今年の市場の景況感を左右していくという。

2018オフィスビル

東京都心部で2018年に竣工予定の主なオフィスビル

CBRE提供

「テナントが移転したビルのオーナーが、どの程度賃料を落とさずに次のテナントを決められるかで、市場の強さが見えて来る。賃料を維持するにはビルのクオリティーを保たねばならず、オーナーの資金力も重要な要素だ」(坂口氏)

既存ビルのオーナーのマインドは、強気、弱気が交錯するまだら模様で、「焦っている感じは受けない」という。それでも、この数年、オフィスビルの賃料の上昇が続いたこともあり、坂口氏は大量供給によって「今年の市場がクラッシュすることはないだろうが、平均10%程度の賃料下落は想定している」と語った。

2019オフィスビル

東京都心部で2019年に竣工予定の主なオフィスビル

CBRE提供

消費税10%なら2020年は調整局面へ

東京のオフィスビル市場にとって重しとなるのは、大量供給そのものよりも、2019年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げだという。

坂口氏は「消費税増税が正式決定すると、景気減速を先読みして株価が落ち始め、日本経済のマインドが急速に冷え込む可能性がある。そうすると、企業はオフィス移転などの投資に消極的になるだろう」と指摘。

東京オリンピックという追い風はあるものの、2020年はビルの新規供給が2018年を上回るペースで予定され、CBREは都内好立地(グレードA)オフィスの賃料が2017年末時点から2割前後下落すると試算する

地方都市はオフィスひっ迫続く

東京でオフィスビルが大量供給される一方、地方では2018年以降も需給ひっ迫が続く。札幌、仙台、名古屋、大阪、京都、福岡など地方都市では2019年まで空室率が低水準で推移し、賃料上昇が続く見通し。

坂口社長

「二次空室の動向が今年のオフィスビル市場の鍵」と話す坂口社長。

撮影:野中りさ

地方都市は東日本震災後の建築費高騰で、オフィスビルの建て替え需要が低迷。その後、アベノミクスで景気拡大と円安が進み、インバウンドブームが起こったことで、オフィスビルが分譲マンションやホテルに建て替られる動きが加速し、オフィスビルの新規供給が滞ったままだという。

坂口氏は「不動産投資としては市況や季節の変化の影響を受けにくいオフィスの方が、ホテルより安定しているのだが、今はそこにオーナーの目が行っていない。オフィス賃料が今後上昇するに従いオーナーのオフィス回帰が起きるだろうが、まだ3~5年はかかりそうだ」と分析した。

働き方の多様化は人材獲得のマーケティング段階

また、働き方改革の一環として、フリーアドレス制やリモートワークの導入、副業容認など、働き方の多様化が進む中、オフィス移転でより広いスペースを確保し、若者を引き付けるワークプレイスづくりや、レイアウトの見直しに着手する企業が増えている。

坂口氏はこれらの動きに対し、「優秀な人材を高報酬で獲得する外資企業に対し、国内企業はリモートワークなどのオプションを提供し、働きやすさをアピールして人材を確保しようとしている。目下の企業の取り組みは、売り手市場を背景としたリクルーティングの手段にとどまっている印象」と冷静に見る。

2020オフィスビル

東京都心部で2020年に竣工予定の主なオフィスビル

CBRE提供

また、「優秀な人材ほど、会社を見切るのが早いのも最近の傾向。今後、会社は獲得した人材をつなぎとめられるかを問われるし、働き方の自由度を高めると、組織の核となる文化の醸成や技術の継承といった課題が出てくる。オフィス改革に伴い、情報を共有するテクノロジーの整備など、新たな需要が出て来るだろう」と話した。

今年のトレンド「データセンター」

このほか、2018年に注目すべき不動産市場のトレンドとして、坂口氏は「データセンター」を挙げた。eコマース市場の拡大で物流倉庫の需要が伸びているが、データセンターは物流設備とともにeコマースを支える両輪であるだけでなく、IoTや自動運転など、次世代技術にも不可欠な存在。「特別高圧線が敷かれている、津波の影響を受けないなど、立地に制約があるものの、今後、工場をデータセンターに建て替える動きも増えるのではないか」と坂口氏は分析した。

(文・浦上早苗)

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