パリ水没 —— 過去の教訓は生かされてなかったのか

洪水

セーヌ川が氾濫。2018年1月29日。

AP Photo/Michel Euler

花の都、光の都。

だが今やパリは、水の都のような有り様に。セーヌ川の水が堤防からあふれ出している。水位は通常時の5倍を超えた。

この冬、パリの降水量は例年の2倍に達した。フランス政府は、セーヌ川が1月29日朝(現地時間)に最高水位を記録したと発表、水位は13区にあるオステルリッツ橋付近で5.85メートル(19.2フィート)に達した。今後水位は下がると予想されているが、下がり方は緩やかだろう —— 少なくとも31日朝までは5.5メートル(18フィート)以上の水位のままと思われる。中心部から水が引くまでには、数週間かかると見られている。

洪水は23日に発生した。ファッションショー・シーズンの真っ最中にセーヌ川が氾濫、周辺に水があふれ出した。

パリとその周辺の様子を見てみよう。

パリの中心部から約15キロ付近の住宅地。数カ月前には歴史的豪雨が降った。

洪水

REUTERS/Christian Hartmann

ル・モンドによると、パリはこの冬、1900年の観測開始以来、2番目の降水量を記録した。

2017年12月1日から2018年1月21日にかけて、約178ミリを超える雨が降った。例年の2倍。

隊員

REUTERS/Christian Hartmann

セーヌ川名物の平底船「ペニッシュ」のロープを点検する消防隊員。

水位をどれくらい上がっているか。2016年8月(上)と現在(下)を比較。

セーヌ川

REUTERS/Philippe Wojazer

フランス政府当局は、正常な水位(約1.5メートル以下)に戻るまでには数週間ではないにしても、数日はかかると述べた。

セーヌ川沿いにあるルーブル美術館、少なくとも2月1日まで低層階を閉鎖。

ルーブル美術館

AP Photo/Michel Euler

出典:Louvre.fr

ボートハウスの住人たちは岸から孤立。友人に苦心して物資を届ける男性。

ハウスボート

REUTERS/Philippe Wojazer


パリに本部を置く経済協力開発機構(OECD)の専門家は、セーヌ川は、1時間に1インチ(約2.5センチ)ずつ水位を増したと推測。

ボートハウス

REUTERS/Philippe Wojazer

出典: OECD

100年前にも洪水があった。

洪水

Reuters/Gonzalo Fuentes

1910年の洪水では、パリ市街は数カ月にわたって浸水し、腸チフスやしょうこう熱などの伝染病が広がった。

1910年、セーヌ川は今回よりも約2.7メートルも高い水位に達した。パリは今回のような洪水への備えができていなかったと考える人もいる。

洪水

パリ市内。2018年1月26日。

AP Photo/Michel Euler


パリジャンたちは、100年前の洪水を「ラ・グランド・クルー(大洪水)」と呼んでいる。市内1万4000以上の建物が2カ月にわたり冠水した。

エッフェル塔

REUTERS/Gonzalo Fuentes


2016年にも洪水に襲われ、2人が亡くなった。

巡回

Reuters

出典: The Guardian

1000億円を超える被害となった。

男性

Reuters

出典: OECD

今回の洪水は2016年ほどひどくはない。最高水位は約30センチほど低い。

ボート

REUTERS/Philippe Wojazer


ネズミが下水道から出し、街をうろついていると苦情を言う人も。

パリ

AP Photo/Thibault Camus

パリ市長は、街のゴミ箱にネズミのエサになるような食べ物を捨てないようにとFacebookで呼びかけた。

洪水被害はパリだけではない。

洪水

AP Photo/Thibault Camus

他の川も洪水を起こしている。パリ東部の町エスブリー(Esbly) は、グラン・モラン川の洪水による被害を受けている。

またセーヌ川がイギリス海峡に注ぐノルマンディー(Normandy)では、パリを襲った水に備えている。

APによると、フランス北部から東部にかけて、現時点で少なくとも242の市町村が被害を受けている。

救助

Reuters/Christian Hartmann

消防隊員に無事に救出された女性。ペットにエサをやるために家に戻っていた。パリ近郊。

2014年以降、パリは大規模な洪水に備えていくつかの施策を講じている。

パリ

REUTERS/Gonzalo Fuentes


しかし多くの人は、さまざまな施策にもかかわらず、1910年の大洪水のような「100年に1度」の洪水への備えができていないと語った。

救助

REUTERS/Christian Hartmann

ちょうど数日前に発表した最新レポートで、OECDは、パリは将来の大規模な洪水への対策に、より多くの予算を投入すべきと警告していた。鉄道網や浄水場、送電網を洪水から守るためには、さらに多くの対策が必要とOECDは述べている

パリのコロンブ・ブロッセル(Colombe Brossel)副市長は、気候変動で地球が温暖化し、干ばつ、山火事、嵐などを引き起こしている今、市は洪水がますます増えると考えているとワシントンポストに語った。

アルマ橋

洪水の際に目安とされるズアーブ像があるアルマ橋。2018年1月27日。

AP Photo/Christophe Ena

出典: The Washington Post

市関係者は、洪水に備えるためには、冠水した地域を「再整備」し、コンクリートで覆われた街に多くの緑を植える必要があるだろうと語った。

ゾワブ像

セーヌ川を見つめるズアーブ像。

REUTERS/Gonzalo Fuentes

「洪水は自然現象。我々が、我々自身とインフラを間違った場所に置いているから、大災害になってしまう」とパリ市チーフ・レジリエンス・オフィサー、セバスチャン・マリー(Sebastien Maire)氏は2016年の洪水後、ガーディアンに語った。

洪水防止計画には、パリ上流での調節池や遊水地の建設が含まれている。5500万立方メートルの水を溜めることができる。

パリ洪水

REUTERS/Christian Hartmann

費用は、約7億4490万ドル(約810億円)

[原文:The heart of Paris is underwater — and the images are a shocking reminder that the city is unprepared

(翻訳:本田直子/編集:増田隆幸)

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