LINEが驚かせた決算会見 —— ソフトバンクとの提携、金融事業拡大で変わるLINE

LINE 決算会見

会見には、LINE代表取締役社長CEOの出澤剛氏、取締役CSMOの舛田淳氏が登壇した。

LINEが開いた決算会見はむしろ事業戦略説明会と称した方が適当だったのかもしれない。

2018年1月31日、LINEは2017年通期決算を開示すると同時に、同社の事業基盤をさらに拡大させる3つの内容を発表した。一つが子会社LINEモバイルが計画するソフトバンクとの資本業務提携、もう一つは金融事業のさらなる拡大。そして3つ目が仮想通貨だ。

同日、会見会場である新宿の本社オフィスには、経済誌など30人程度の報道陣が集まった。LINEのサービス規模を考えると非常に少ない印象だが、記者の間では同日同社が発表した「格安スマホ」「仮想通貨」に関する詳細を聞くべく、張り詰めた空気が流れていた。

LINEとソフトバンクの提携は寝耳に水

LINEはまずモバイル業界全体に衝撃を与えた。

格安スマホ事業(MVNO)を展開するLINEモバイルとキャリア(MNO)であるソフトバンクの両社は、同日に戦略的提携に向けた基本合意に至ったと発表。このまま協議が進めば第三者割当増資が行われ、現在LINEの100%子会社であるLINEモバイルの出資比率はLINEが49%、ソフトバンクが51%となる。

LINEモバイル スライド

LINEモバイルは今後ソフトバンクとLINEの2社で展開していく。

出典:LINE

LINEモバイルは、NTTコミュニケーションズの設備を借りる形でドコモのネットワークにつながる格安SIMを提供している。市場のシェアは楽天やNTTコミュニケーションズ、IIJなどと比べるとそれほどの規模感ではないが、申込件数は2017年10〜12月間で前年同期比約2.3倍になるなど着実に成長を遂げている。

ソフトバンクについても、自社内ではすでにサブブランド「ワイモバイル」として格安SIM事業を展開している。ワイモバイルは約4000もの実店舗数(量販店窓口を含む)と通信料の安さで着実にシェアを広げている。そんな規模は違えど、好調な格安SIMの大手事業者とキャリアが手を組むことは、業界関係者にとって寝耳に水のような出来事だった。

LINEモバイルの成長に「端末」や「店舗」が課題に

ワイモバイル店舗

ワイモバイルの実店舗数は量販店窓口を含めると4000。ブランドショップでは1000もの規模になる。

ワイモバイル

LINE代表取締役社長の出澤剛氏は、今後の具体的な戦略について「現時点では、戦略的提携に向けた基本合意の段階」と、詳細は語らなかった。

一方、取締役CSMO(最高戦略・マーケティング責任者)の舛田淳氏は「これからもLINEモバイルの価値を攻めて行くには、端末の問題や店舗の問題を含めて、やるべきことがあるのではないか、ということで合意に至った」と話す。LINEモバイルの今後の広がりを考える上で、端末の調達ルートや実店舗数などが課題になっているようだ。

また、LINEモバイルユーザーであれば、自分が現在使っているネットワークがある日を境にドコモからソフトバンクになるのかと不安になるところ。同社広報は、「利用ネットワークの切り替えや新プランの提供も含め検討段階」とコメントした。

LINE Pay好調、仮想通貨も含めFintech事業に本腰

LINE Pay

スマホのモバイル決済としてすでに展開されているLINE Pay。

そして、衝撃を与えたもうひとつの発表が、新会社「LINE Financial」の設立だ。

LINEは現在、モバイル決済サービスの「LINE Pay」を世界各国で展開している。同日のリリースによると、登録ユーザー数は4000万人。年間取引高は4500億円を突破したという。なお、2017年10月時点でユーザー規模を「国内3000万人、全世界3800万人」(舛田氏)と答えていたことから大半が日本国内のユーザーと思われる。

2018年度は、そんな成長事業である金融事業領域をさらに拡大するため、資産運用や仮想通貨、各種ローンを扱うLINE Financialを立ち上げたというわけだ。

まず、1月に資本提携を発表した「フォリオ」による資産運用サービスをスタートさせる。フォリオは今後LINE Financialの持ち株会社として、LINEのプラットフォームと親和性のあるサービスを展開していく。

LINE スライド

LINEのFintech分野の関連図。LINE PayとLINE Financialは別会社で、仮想通貨などの金融系サービスは後者で展開される。

出典:LINE

そして、今回の発表の目玉の一つが、仮想通貨の取り扱いだ。発表文には「仮想通貨交換や取引所」と昨今話題の事業内容が記されており、単なる仮想通貨取引所を立ち上げるのか、それともLINE独自の仮想通貨を展開していくのか注目が集まっていた。

LINE 決算会見

記者からの質問を受ける出澤氏と舛田氏。

出典:LINE

出澤氏は「自社の仮想通貨をやるかと言われれば、現状ではそうではない」と、独自仮想通貨説を否定。さらに、「単に取引所を始めるわけではなく、仮想通貨やその背景にあるブロックチェーン技術に幅広い可能性を見ている」と、やはり同社のLINEプラットフォームの強みを生かしたサービスを検討しているようだ。

また、コインチェック社の流出騒動を持ち出すまでもなく、仮想通貨を扱う上でセキュリティー面は最重要事項だ。出澤氏は当然一連の騒動は「認識している」と話し、「LINEとしてセキュリティーは第一に考えている。長い間、セキュリティーに関する知見を貯め、リソースを費やしてきた」と安全性をアピール。同社はすでに仮想通貨取引所の運営に必要な金融庁への登録手続きを開始しており、現在は審査中とのことだ。

AI分野を含めて2018年度に300億円の投資を実施

LINE社は2018年度の戦略投資事業として、LINE PayとLINE FinancialをあわせたFintech事業、そして音声アシスタント「Clova」に関するAI事業を挙げている。投資額は300億円を見込んでおり、システムを含めたテクノロジーと、金融系の人材確保に活用する。メッセージアプリの普及率の高さを生かした、同社の新規事業に今後も目が離せない。

LINE スライド

LINEは2018年度にアシスタントAI「Clova」のプラットフォーム化を目指している。

出典:LINE

(文、撮影・小林優多郎)

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