中国のスマートフォンメーカーOPPOが、ついに日本上陸を果たした。写真中央の男性がOPPO Japanの代表取締役 鄧宇辰氏。
スマートフォン世界シェア4位の“隠れた巨人”、中国発のOPPO(オッポ)が日本市場にいよいよ参入する。2月9日の端末発売に先駆け、1月31日に報道陣向けの発表会を表参道ヒルズで開いた。
同社の日本参入第1号のスマートフォン「R11s」は、高画質なカメラを売りにしており、会見はそのアピールが中心だった。アジア各国で高いシェアを占めている同社の強みと日本市場参入の狙いは何か。OPPO Japanの代表取締役 鄧宇辰(トウ・ウシン)氏の話をもとに考えてみよう。
「カメラで得られる体験」がウリ
2月9日より家電量販店などで発売となる「R11s」。予想実売価格は5万7980円(税抜)。
OPPOは現在、世界約30カ国で製品を展開している。母国中国ではアップルやファーウェイを抑えてスマホのシェア1位の座についた人気メーカーだ。Strategy Analytics社の調査によると2017年第1四半期にはグローバルで4位、アジアで1位となっている。スマートフォン本体のデザインの良さに加え、高性能なカメラ、そして独自の高速充電技術「VOOC」を備えたバッテリー周りの使い勝手の高さが若者を中心に受け入れられている。
OPPOのスマートフォンの人気を支える3つの特徴。
トウ氏によると、日本市場でもOPPOはカメラ機能を大きくアピールする予定だという。「OPPOのカメラはそもそも設計思想が他社とは異なる」と語るように、とくにR11sのカメラはデュアルレンズカメラという形は同じでも、その使い方のアプローチが他社とは異なる。
R11sには取り込める光量の異なる2つの背面カメラが搭載されており、昼間と夜間でシームレスに切り替わる。また、正面カメラに搭載されているAIビューティー機能を使い、人種や年齢を自動判断して最高のセルフィーが撮れる。
OPPOはセルフィーの強さも大きくアピール。
一眼レフで撮ったかのような高性能さをウリにするライバル製品もすでに日本で展開されているが、OPPOのカメラは、普段の生活の中や旅行先などユーザーの生活体験の中で楽しめる点が特徴になっているのだ。
オフラインでも得られる体験を広める
OPPO Japanトウ・ウシン代表取締役。シンガポールの支社でもCEOを務める。
もちろんR11sは基本的な操作感や外観を含めた質感も「世界戦略品質」だ。金属製の本体の質感は高く、クレッセントアークと呼ぶ形状の本体下部のくぼみにはヘッドフォンジャックやマイクロUSB端子がきれいに収まっている。
2000万画素+1600万画素の背面カメラの写りは他社のフラッグシップモデル相当と感じられたし、AIビューティー機能を備えた2000万画素の正面カメラ画質はスマホ業界でも飛びぬけた性能だ。
もっとも、若者向けを意識した製品をただ導入すれば売れるか、と言われれば日本市場においては絶対に「ノー」だ。当然だが、日本においては新参者のOPPOは、まずその知名度を高めていく必要がある。
その点でマーケティングが重要になるが、この分野でトウ氏ほど最適な人物はいない。トウ氏はインドネシアで代表取締役、シンガポールではCEOとして腕を振るい、インドネシアで2位、シンガポールでは3位までOPPOの人気を引き上げた実績を持っている。
トウ氏はマーケティング戦略への質問に対して「日本の消費者は広告を見てすぐに製品を買わない。実際に製品を体験してもらうプロモーションが有効だと考えている」と答えた。
東南アジアなどの市場と違い、日本の消費者は教育水準が高いため、他国とは異なる戦略をとる予定だという。
中国並みのスーパー旗艦店は「あり得る」
具体的な戦略について言及はなかったが、トウ氏は「消費者とより密接にコミュニケーションを取る方向を考えている」と語る。
OPPOのアジア圏での勝ち方の特徴の一つは、進出地域に専門店を数多く設置するという作戦だ。しかし、日本ではこうした戦略はとらないという。「日本には通信キャリアの店舗や家電量販店など、販売チャンネルがすでに構築されている。OPPOが店舗展開を行わなくとも、それらを利用することで消費者にリーチできる」からだ。
一方、中国で同社の世界観などの体験の認知を重視した「スーパー旗艦店」については、日本での展開の可能性も十分ありうるという。
今回のR11sの発表会会場では、女性参加者がフロントカメラを手にし実際にセルフィーを体験して楽しんでいる姿が見られた。このようなコミュニケーションをどのように増やしていくか、トウ氏の手腕が大きく問われる。
中国・深センに建設中の「スーパー旗艦店」。
OPPOが考える「日本市場が重要な理由」
そもそも、中国や新興国などでシェアを伸ばすOPPOは、なぜ今になって日本に進出するなのだろうか? トウ氏は「日本への参入は新たな1カ国への参入ではなく、重要な意味合いを持つ」と言う。日本市場は製品を拡販する場所以上の位置付けになっており、「今後ヨーロッパやアメリカなど他の先進国へ進出する際も、日本での経験は大きな武器になる」(トウ氏)。
OPPOの今後のグローバル市場展開を考えると、日本市場への参入は必要不可欠だという考えだ。
レッド、シャンパン、ブラックの3つのカラーバリエーションを用意。
長期間かけて日本市場に根を下ろす
日本市場でトップシェアを誇るのはアップルのiPhoneシリーズだ。トウ氏は「日本でiPhoneのシェアが高いことは存じ上げている」と話し、それは「日本のお客様方がスマートフォンに対して製品デザインとユーザー体験を大事にしている証でもある」と述べた。iPhone人気が高い日本は、OPPOの製品を受け入れてくれる下地ができあがっているという。
一方で、中国のアルカテル、フランス生まれのWikoなど1、2年前から海外の若者を意識した格安スマホメーカーの参入は続いている。しかし、現時点ではどのメーカーもパッとした動きはなく、海外勢であればファーウェイやASUSなど、ある程度日本で活動してきたメーカーが一定のシェアをとっている。OPPOが進むのは極めて厳しい茨の道だ。
OPPOは横浜にある同社開発拠点を中心に、日本の消費者ニーズを研究し、それに基づいた製品開発を行う予定だ。大手キャリアや格安SIM提供事業者(MVNO)との提携も視野に入れつつ、販売チャネルを増やす方針。これを今後1、2年の間に「日本市場に根を下ろすこと」(トウ氏)として実現していく。
(文・山根康宏、撮影・山根康宏 小林優多郎)