どうなる仮想通貨の確定申告 —— コインチェックの影響、国税庁の見解は?

2018年2月16日から3月15日にかけ、今年も確定申告のシーズンがやってくる。注目されるのは、2017年に価格が大きく上昇した仮想通貨の確定申告だ。2017年9月に発表された国税庁の見解により、仮想通貨で得た利益は雑所得とされ、最大45%の所得税が課せられることになった。国税庁は同年12月、仮想通貨取引による損益をどのように計算するかを示すガイドラインを発表したが、納税者には不安が残る。

仮想通貨アプリ

2017年12月、国税庁は仮想通貨取引による損益の計算方法についてガイドラインを発表した。

写真:Sam Shobeiri

「できる気がしない」納税に不安

ビットコイン

仮想通貨を売却した場合、仮想通貨で商品を購入した場合、 他の仮想通貨と交換した場合に得た利益も課税の対象になる。

写真:今村拓馬

「どうなることやらわからない。(計算)できる気がしないので本当に誰かに任せたいです」

フリーランスで新規事業立ち上げのコンサルタントをしている黒田悠介(32)さんは今年、初めて仮想通貨の確定申告をする。

黒田さんは2015年4月、当時1BTC(BTCはビットコインの通貨単位)あたり3万円ほどだったビットコインを40万円分ほどbitFlyer(ビットフライヤー)で購入した。2017年にビットコインの価格は大幅に上昇、黒田さんは何度か売買を繰り返し利益を得た。「一回崩して他のもやってみよう」と2017年前半、コインチェックで継続的に10種類ほどの仮想通貨を日本円で購入。保有通貨を把握するため、ポートフォリオが見やすいコインチェックに資産を移した。

確定申告の季節が近づく1月26日、コインチェックから仮想通貨NEM(ネム)が不正に流出。

ハッキングのリスクがあるのは知っていたけれど、まさか自分ごとになるとは

現在、コインチェックは日本円の出金を停止している。黒田さんの場合、このまま出金停止の措置が続いたとしても貯金を切り崩せば納税には対応できそうだが、やはり「困りどころです」と言う。

国税庁がガイドライン示す

国税庁は2017年12月1日、ガイドラインを発表し、仮想通貨を売却したり買い物に使ったりすることで生じた利益は課税の対象になるとの見解を示した。基本的には、仮想通貨を売却した際の価額と取得価額の差額が所得となり、それに基づいて税額が算出される。

所得金額=売却価額ー1BTCあたりの取得価額×売却したBTC

以下が計算例だ(手数料は考えないものとする)。

  • 3月9日、1BTCあたり50万円のレートで、ビットコインを200万円分購入(4BTCを保有することになる)
  • 5月20日、ビットコインは1BTC=55万円に上昇。保有分の0.2BTCを11万円で売却

計算は次のようになる。

  • 110,000(売却価額)ー(500,000【1BTCの取得価額】×0.2【売却したBTC】)=10,000

このケースの場合では、所得は10,000円になる。買い物での使用やビットコインをほかの仮想通貨に交換したときも、同様の考え方が適用される。

確定申告には課題も

仮想通貨による所得の確定申告は、事例が積み上がっていないだけに、課題が多い。例えば、過去の公式な仮想通貨レートが提示されていない点が挙げられる。レートは取引所ごとに異なるため、個人が取引当時のレートを取得する必要があるが、仮想通貨の価格は刻一刻と変化するため、個人で正確なレートを管理するのは難しい。

「会計 freee for 仮想通貨」デモ画面

「会計 freee for 仮想通貨」デモ画面。対応取引所からダウンロードした取引履歴データをアップロードすることで計算ができる。

写真:西山里緒

こうした背景から、仮想通貨の確定申告サービスを提供する企業が出てきた。一例がクラウド会計ソフト freee(フリー)を提供するfreeeが2月5日から打ち出す新サービス「会計 freee for 仮想通貨」だ。

対応する取引所の取引履歴データをアップロードすることで、損益の計算ができる。現時点ではbitFlyerとbitbank(ビットバンク)の2取引所での取引に対応している。メールアドレスを登録すれば、クラウド会計ソフト freeeのユーザーでなくても利用できる。

freeeで広報を担当する原晃則さんによると、国税庁の見解には不明確な点も多いため、同社は過去のレート情報を提供している外部サービスを使って損益を計算している。しかし、この数値もあくまで参考値だといい、税務署が申告を受理するかどうかは「私たちにもわからない」と原さんは率直に語る。

freeeによると、レート情報に関する公式見解が出るまでは、税理士と相談するなど専門家と一緒に準備することを推奨しているという。

freeeロゴ

クラウド会計ソフト freeeは、確定申告や日々の経理を効率化するサービスだ。

写真:西山里緒

同社の個人事業部部⻑・前村菜緒さんによると、freeeが仮想通貨向けの確定申告サービスの提供を検討し始めたのは9月に国税庁の見解が発表されて以降。開発を本格化させたのは2018年に入ってからだという。

「まだすごくリッチな機能が付いているというわけではないが、困っている方も多いことからやらないわけにはいかないと決意した」と前村さんは言う。

コインチェック流出の被害を受けた人たちは?

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2018年2月2日、金融庁はコインチェック本社に立ち入り検査に入った。

写真:木許はるみ

コインチェックから不正流出したNEMの保有者は26万人にのぼる。黒田さんは自分の貯金から納税できるというが、納税できない人はどうなるのだろうか。

国税庁の担当者に問い合わせると、「納税義務は失われていないが、震災の被災者などに適用されるように、今は納めることはできないという『納税の猶予』の相談はできる」と回答した。この担当者は、所管の税務署に問い合わせることを勧めている。

コインチェックは流出したNEMの保有者に対し、日本円で総額約460億円を返金すると表明している。この返金が税法上どのような扱いを受けるかについて、国税庁の担当者は「事実関係がまだわからないため、一概には申し上げられない」とした。

一方で、コインチェックの返金措置の発表は2018年内にあったことから、返金分は2019年の確定申告の対象となる。担当者は「それまでにはある程度の方針が確定しているはず」との見通しを示した。

編集部より:「会計 freee for 仮想通貨」の対応について、表現を一部追記しました。 2018年2月6日 15:35

(文・西山里緒)

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