トップ交代から始まるソニーの危機感とは —— “冬の時代”を越えて最高益へ

Sony CEO

写真左から現CEOの平井一夫氏、4月1日から新CEOとなる吉田憲一郎氏。

過去最大の連結純損失を出した2012年3月期から、聖域なき改革を断行して完全復活を遂げたソニー。この間、1万人以上の人員削減やパソコン事業の売却など、ソニーの構造改革を進めてきた平井一夫社長兼最高経営責任者(CEO)は2月2日、誇らしげに今期(2018年3月期)の営業利益が20年ぶりに過去最高をマークすると発表した。

ソニーの株価は5日、国内の株式相場全体が下落する中、午前の取引で3%上昇。時価総額は7兆円を超えた。

有終の美を飾る平井氏は、CEO(最高経営責任者)のポストを、同氏の右腕であり、財務のトップである吉田憲一郎・副社長兼最高財務責任者(CFO)に譲る。「最高益」と「サプライズ・トップ人事」を披露したソニーの会見で、両氏はもう一つの重要なキーワードを残した。 ソニーの新たな危機感だ。

2017年度は過去最高益「ゲーム」と「半導体」がキー

ソニー 業績スライド

ソニーが発表した2017年度連結業績見通し。

ソニー

ソニーはこの日、2017年度の営業利益(連結)の見通しを7200億円に上方修正した。実現すれば、過去最高を記録する。平井氏は会見で、これまでの6年間で最もうれしかったことを「あと2カ月残っているが、好業績なソニーを吉田さんにバトンタッチできること」と語る。

この業績の拡大に最も貢献しているのが、同社の「PlayStationおよびそのネットワーク」「半導体」「金融」分野だ。PlayStationに関しては、2017年12月末時点で「PlayStation 4」の累計実売台数が7360万台を突破、その有料会員サービスである「PlayStation Plus」は会員数3150万人を突破するなど、国内外で好調だ。

ソニー 業績 スライド

ハードの売り上げ、有料会員サービスが好調なゲーム分野。

ソニー

また、2016年度と比べて特に伸長しているのは「半導体」分野で、スマートフォンなどのモバイル端末向けイメージプロセッサーの売れ行きが伸びた。

これは、カメラモジュールを背面に2つ搭載する「複眼式」のモデルが世界的なトレンドとなっている影響だろう。載せるカメラが多くなれば、当然イメージセンサーの需要も高くなる。同社が展開するスマートフォン「Xperia」は現時点で単眼式だが、複眼式を採用するアップルの「iPhone 8 Plus」は、分解結果からソニー製のセンサーを採用していることが知られている。またハイエンドAndroidスマホを発売する一部メーカーは、ソニー製センサーの採用を公言してもいる。

ソニー 業績スライド

ソニーの半導体分野は昨年度より大幅に改善している。年間利益の見通しが下方修正された点については、iPhone Xの減産報道を受けての対応ではなく、「中国のスマホ市場減速によるもの」(吉田氏)としている。

ソニー

「スマートフォンのカメラを使いたいというニーズは年々増えている」(吉田氏)と今後もモバイル向けセンサーの開発を続けるとしながらも、監視カメラ、自動化工場(FA)、自動車などの長期的成長が見込める分野にアプローチする計画だ。

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最高益記録後、ソニーは成長し続けられるか

2日の記者会見でやや緊張した表情を見せた吉田氏は、1983年4月にソニーに入社。2000年7月からはインターネットプロバイダーである「So-net」を運営するソニーコミュニケーションネットワーク(現・ソニーネットワークコミュニケーションズ、以下ソネット)に移籍し、2005年4月にソネットの代表取締役社長に就任した。2014年にCFOのポストに就くと、平井氏の右腕としてソニーの復活に貢献した。

吉田氏は経営の舵を取るポストについて「大変な重責」と表現しつつ、「ソニーのこれからを考え抜き、よりよいソニーをつくっていきたい」と話すと、4月1日から取締役会長に就く平井氏は、「(これからの)ソニーグループのリーダーは、吉田さんとそのチーム」と述べ、経営からは一歩距離をとる方針を示した。

Sony 吉田CEO

緊張な面持ちで所信表明を行う吉田憲一郎氏。

時価総額は7兆円を超え、株価は1年で50%以上上昇しているソニーの「最大の課題」は何か?

平井氏は質疑の中で、「危機感がなくなることが心配だ」と語り、吉田氏もこれに同調した。最高益を記録しようとする足元では、競合企業もさまざまな戦略を展開している。好業績を背景に、同社のマネージメント担当の社員までもが気を緩めるようなことがあってはならない、という自戒の念を込めた発言ととれる。

吉田氏は、テクノロジー企業が世界のトップ企業ランキング(時価総額ベース)を占めている事実を述べた上で、「そこにテクノロジー企業としてのソニーの危機感がある」と強調した。

現在のソニーの姿は、吉田氏が描く近未来のソニーと大きく異なるのかもしれない。4月以降の吉田新体制では、どのような新しい経営戦略を打ち出すのか。また映画やモバイル分野などまだ課題のある事業分野をどう「改善」していくのか。

ソニーは、年度決算後に開催する「経営方針説明会」で今後の方針を発表する。

ソニー 会見

説明会の質疑応答の最中、現新CEOがお互いに顔を見合わせ笑い合う場面もあった。

(文、撮影・小林優多郎)

(編集部より:記事は、ソニーの株価、時価総額を追記し、更新しました)

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