薬は毎日飲むものから、週に1度飲むものへ?
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- 薬は毎日飲むものというアイデアは、過去のものになるのかもしれない。
- Lyndra(リンドラ)は、薬を毎日飲むものから、週に1度飲むものに変える技術を開発している。
- 週に1度の服用で事足りるようになれば、飲み忘れの予防にもつながる。特にHIVのような、日々の治療が欠かせない病を抱えている患者にとってはメリットが大きい。
薬を毎日飲むのは、いつか時代遅れになるだろう。
これが、エイミー・シュルマン(Amy Schulman)氏がCEOを務めるスタートアップ「Lyndra(リンドラ)」のビジョンだ。同社は毎日ではなく、週に1度服用すればよい薬を開発している。
「わたしは、自分の孫が『分からないな。どうしておばあちゃんは毎日薬を飲んでいるの? 』と尋ねてくる世界を想像している。ちょうどわたしが、祖父母と留守番電話のいる、いらないをめぐって議論したように、孫たちは薬を毎日飲むなんてあり得ないと思うようになるだろう」シュルマン氏は言う。
アメリカでは年間、推定1000億ドル(約11兆円)の医療費が処方薬を正しく服用しないことで無駄になっている。そしてこうした飲み忘れによって、薬の長期的な効果が失われたり、HIVのように薬が効かなくなってしまうこともある。
LyndraのCEO、エイミー・シュルマン氏。
Courtesy Lyndra
Lyndraは、ゲイツ財団からマサチューセッツ工科大学(MIT)のボブ・ランガー(Bob Langer)教授が、長期的な効き目を持つマラリア予防薬の開発で助成を受けた後、2015年に創業した。2017年には人間での臨床試験を行うため、2300万ドル(約25億円)を調達している。
この薬の技術は、将来的にさまざまな治療に使われるだろう。ただ、Lyndraでは現在、いくつかの分野に絞って開発を進めている。製薬会社アラガンと共同で進めるアルツハイマー病のような神経疾患や、行動疾患に加え、糖尿病もしくは循環器疾患向けのより長い効き目を持つ治療薬の開発などがこれに含まれる。
1月には動物を使った実験で、HIVの一般的な薬の服用を毎日から、週に1度に減らすことに成功したことが分かった。
ヒトデ型の薬が変える投薬治療のあり方
効き目が1週間持続する薬は、一般的なビタミン剤やカプセル剤と見た目は変わらない。違いは中身だ。
薬を飲むと、胃で溶けたカプセルから薬がヒトデ型に6つに展開、その中身が広がる。
「多くの素晴らしい解決策と同じく、1度見つかれば、答えは本当にシンプルだ」シュルマン氏は言う。
投薬治療をより人間の生活に沿ったものにしようと試みる企業は、Lyndraだけではない。毎日の飲み薬を、月に1度もしくは2度の注射に代えたり、デバイスを埋め込むなど、さまざまな治療法が登場している。だが、こうした治療法は侵襲的かつシンプルな処方薬以上に医学的な注意を必要とするため、それぞれに課題を抱えている。
中でもHIVについては、注射による治療が受けられる医療機関が限られているとシュルマン氏は言う。
「多くの人が服用できる薬を選ぶだろう」
[原文:A Gates Foundation-backed startup wants to make daily pills a thing of the past]
(翻訳/編集:山口佳美)