2017年10月〜12月期の決算発表が徐々に始まるシーズンになってきました。
いつもネット企業の中で一番決算発表が早いNetflixを、今日は詳しく見ていきたいと思います。
四半期売上は$3.3B(約3,300億円) YoY +32.6%成長、有料会員は+800万人増
はじめに決算資料から数字を詳しく見てみましょう。
2017年10月〜12ヶ月の四半期において、売上がYoY+32.6%の3.3B(約3,300億円)と、非常に大きな成長をしました。
その背景にあるのは、有料会員数の増加です。
アメリカ国内のストリーミング事業の有料会員数が198万人増え、累計で5,281万人になっています。
アメリカ以外を見ても、四半期で有料会員数が636万人増え、累計で5,783万人となっています。
上の表を見れば分かる通り、この四半期あたりの有料会員の増加数は、過去1年間で最大となっており、成長スピードが早まっていることがよくご理解頂けると思います。
営業利益も245M(約245億円)と、好調な数字だと言って差し支えないでしょう。
2017年の年間を通して見ると、純利益が過去最高になっていることもよくお分かり頂けると思います。
一方で、上の表の下の部分を見ると、キャッシュフローベースでは大きなマイナスとなっており、フリーキャッシュフローは524M(約524億円)もマイナスになっています。
これまで何度も記事で取り上げてきましたが、Netflixは非常に大きな金額をコンテンツ制作に投資し続けており、表の一番下にある Streaming Contents Obligations は17.7B(約1兆7,700億円)と、こちらも非常に大きな金額になっています。
2018年は年間を通してコンテンツ制作に8B(約8,000億円)、マーケティングに2B(約2,000億円)を投じるとも言われており、巨額の先行投資を続けていく意思表示が明確になされています。
棲み分けが進む米動画ストリーミングサービス
ここで少し、アメリカにおける動画ストリーミングサービスのユーザー調査のデータを見てみたいと思います。
Netflix、Hulu、Amazonプライムという三つのサービスの利用時間の比較になっています、
図の黄色い部分が各サービスが独自に制作したオリジナルコンテンツ、紫の部分がテレビ局などから配信する権利を購入して配信しているオリジナルではないコンテンツ、赤い部分が映画となっています。
これを見れば分かる通り、各サービスにそれぞれ強みと特色があることがよくご理解頂けると思います。
Netflixは独自コンテンツが最も視聴されており、Huluに関しては独自ではないテレビ番組などが視聴されており、Amazonプライムは映画が最も視聴されている、という調査結果になっています。
逆の言い方をすると、Netflixと言えどもまだ盤石の地位にあるとは言えず、Netflixの有料会員でありながらHuluやAmazonプライムのサービスも利用している、というユーザーが多そうに見えます。
今日の記事では、Netflixがこういった競争が激しい市場の中でどのように差別化をしていこうとしているのかを、詳しく見てみたいと思います。
Netflixは15分以下の短時間コンテンツに注力
「Netflix Will Release a Series of 15-Minute Stand-up Specials in 2018」という記事から詳しく見てみましょう。
この記事によると、Netflixは2018年に、一話あたり15分程度のコメディやアニメを積極的に投入していく計画があるとのことです。
では一体何故、60分のテレビ番組や120分の映画ではなく、15分という短い番組をNetflixは積極的に投入して行こうとしているのでしょうか。
Nerflixが短時間コンテンツに注力する理由
理由は、スマホでのユーザーに最適なコンテンツを届けるためです。
スマホで動画を見るユーザーがどの程度の時間、動画を閲覧しているかを見ると、47%のユーザーは20分以内、39%は5分以内しか閲覧していない、というOoyalaのデータがあります。
このデータを見ると、Netflixがよりカジュアルに動画をスマホで閲覧できるようにすることに注力し、そういったカジュアルなユーザーをたくさん獲得していきたいという、強い意志が感じられます。
実際、今でもスマホで最も利用されている動画アプリはYouTubeであり、Netflixが短時間コンテンツのラインナップを拡張して、YouTubeで短時間コンテンツを閲覧しているユーザーを自社サービスに貼りたいと考えるのは、自然な事なのではないでしょうか。
Facebookと正反対のNetflixのコンテンツ戦略
もう一つ興味深い点としては、Netflixのこの短時間コンテンツに投資をしていくという戦略は、Facebookの戦略と真逆であるという点です。
Facebookは2017年12月に、「より長い時間で何度も閲覧される動画によりプライオリティを置く」という発表をしました
「Watch」というコーナーで、「Lean-back」するユーザーをたくさん獲得できる動画が優先的に表示されています。
元々カジュアルな動画が多いFacebookは、より長時間でしっかりとしたコンテンツを欲しがっており、逆に長時間のコンテンツを多数有しているNetflixは、よりカジュアルな短時間コンテンツに注力していくというのが非常に対照的です。
まだまだマーケットリーダーが決まりそうにない動画ストリーミング市場ですが、今後の動向にも注目していきたいと思います。
決算が読めるようになるノートより転載(2018年02月06日の記事)
シバタナオキ:SearchMan共同創業者。2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了。楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、2009年からスタンフォード大学客員研究員。2011年にシリコンバレーでSearchManを創業。noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中。