日本のミレニアルが家を買わない2つの理由 —— 英米の若者とは大きなギャップ

「日本のミレニアル世代が抱く"マイホーム"を手にしたいと思う意欲は、アメリカやイギリス、中国やインドの若者たちに比べはるかに弱い」 —— 。不動産の総合サービスをグローバルに提供するCBREが行った意識調査の結果だ。国内の20代や30代の住宅に対する購買意欲を削ぐものとは何か? CBREジャパンのリサーチ部門に聞いた。

原宿のショッピング街の鏡に映る買い物客

Chris McGrath/Getty Images

CBREが世界12カ国で22〜29歳の1万3000人を対象に実施した調査によると、「親元から離れて住むとしたら? 」との質問に対して、「すぐ/将来的に住宅を購入する」と答えた日本のミレニアルは34%で、アメリカの71%やイギリスの73%に比べて割合は少なかった。中国の同世代では80%以上で、インドは72%。「分からない」と答えた割合は、日本が28%で最も多く、英米では15%以下だった。

欧州、北米、日本の経済は低成長時代に突入し、ミレニアル世代の消費動向は大きく変化している。同様の変化が起こるなか、住宅に対する意識が日本と欧米で大きく異なるのは、国内の若者世代が経験した過去20年の経済変化と、その変化がもたらした新たなライフスタイル・価値が理由としてあげられる。

「親元から離れて住むとしたら」の回答結果

「購入する」と回答した割合の低さが際立つ日本の回答。

CBRE

生まれた瞬間にバブル崩壊

日本のミレニアル世代は、「生まれた瞬間にバブル経済が崩壊していて、就職しようと思っていたらリーマンショックが起きた。資産を買ったらその価値が上がるという感覚が希薄なのでは」と話すのは、CBRE(ジャパン)リサーチ・エグゼクティブディレクターの大久保寛氏。「調査の結果を見ると、日本人に一番多いのは『分からない』の答え。先々の不透明感がこの回答につながっているのではないか」と大久保氏は、BUSINESS INSIDER JAPANとのインタビューで語った。

調査では、「親元から離れるとしたら? 」という質問に対して、「分からない」と答えた日本のミレニアルは4割以上で、やはりイギリスやアメリカ、中国、インドに比べて一番多い。一方、アメリカ人回答者の6割近くは「2年以内」と答えているが、日本はわずか2割弱だ。

「親元から離れて住むとしたら、いつ頃か」の回答結果

「わからない」との回答が日本では4割以上を占める。

CBRE

同じくCBRE(ジャパン)リサーチ部門でアソシエイトディレクターの貝畑奈央子氏は、日本の終身雇用制度が崩壊し、生涯賃金の予想が困難になる中、より保守的な購買心理が働いていると説明する。

調査を担当したCBREのアソシエイトディレクター貝畑奈央子氏

調査を担当したCBREのアソシエイトディレクター貝畑奈央子氏

BUSINESS INSIDER JAPAN

「昔は(不動産を購入すれば)資産価値が上がる、プラス終身雇用で給料も増えていくという未来がある程度見えていたので、住宅を買おうという気持ちが生まれやすかった。ただ、今は資産価値が上がる状況もイメージしづらく、未来に対する不安の方が大きくなっているのではないか」と指摘。

「(住宅の購入といった)大きな消費は、結婚や出産といったライフステージが変わるタイミングでないと、発生しづらい状況が今後も続くのではないか。ただ、消費そのものはなくならない。物を買うよりもサービスに費やす割合は増えていくだろうが、ミレニアル含め独身の人や子どもを持たない人たちがどのようなライフスタイルを送るかによって、消費行動も変わってくるだろう」と語った。

買いたくても、買えない

ミレニアル世代を住宅購入から遠ざけるもう1つの要因は、都市部を中心とした地価や住宅価格の高騰だ。中高年がその多くを所有する1800兆円もの個人金融資産を抱える日本では、家やマンションに対する需要は強い。そして、日銀の金融緩和政策は、都市部の地価や住宅価格をさらに押し上げる結果となった。

「首都圏では、マンションのベース価格が高い上、人手不足などが施工費を押し上げ、価格は高止まりを続けている。富裕層は購入できる価格レベルだが、ファミリー層などのエンドユーザーはあきらめざるをえない状況だ」と話すのは、不動産経済研究所・企画調査部の松田忠司シニア研究員だ。「50歳以上で、子育てを終えた人たちが、車を手離して、郊外の住居から都心の駅直結のマンションを買い求める動きも見られる」と松田氏は言う。

同研究所の調査レポートによると、2016年に主要都市で発売されたマンションの数は7万6993戸。前年比1.4%減り、3年連続で減少した。不動産経済研究所が行った調査によると、全体の5割近くを占める首都圏エリアが11.6%減る一方、関東地方では7.6%、中国地方は64.2%、四国では56.2%増加した。発売総額は約3兆5111億円だった。一方、2017年の発売数は前年から2%増え7万8500戸、このうち首都圏の発売戸数は6.2%増え3万8000戸を見込む。松田氏は「施工費がわずかに減り、供給量は少し増えてくるだろう」と見る。

加えて、賃貸住宅の質の向上も、相対的に住宅を買う動機を低下させているだろうと、CBREの大久保氏は言う。比較的に質の高い賃貸物件の供給量が少なかったが、こうした物件に対する需要があることが開発側に認知され始めたという。近年、1人暮らしやカップルを対象とする質の高い賃貸物件が増えたことで、住宅購入の必要性が減り、賃貸物件の供給量が増加傾向にある。住宅を買うにしても、ミレニアル世代は購入時期をより後ろ倒す傾向が強まっている、と大久保氏。

「今起きていることは恐らく、先進諸国どこでもたぶん起きてくること。1人あたり消費は今後、それほど増えてくることはないのかもしれない。今まで消費で成り立っていた資本主義経済というのが、少しずつ変わってきつつある。そういう意味ではすごい変わり目にいるのかもしれない」と大久保氏は語った。

(編集:佐藤茂)

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