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- オリンピック選手は1秒でもタイムを縮めるために、ハイテクを活用した道具を数多く使っている。1000分の1秒が、金メダルと銀メダルを分けるからだ。
- そして、心理学的な手法も使っている。
- 平昌オリンピックでは、伝統的なカラーをやめ、「より速くなる」と考えられているカラーを使うチームもある。また体のブレを隠す効果がある模様を採用したチームもある。
1000分の1秒が金メダルと銀メダルを分ける。だからスピードのためなら、どんなことも(もちろん合法な範囲で)採り入れる。
平昌オリンピックでも、選手たちはエアロダイナミクスを追求した競技用スーツから、邪魔な光や音を遮断するジャケットやパンツまで、あらゆる手法を採用している。さらに青い競技用スーツや迷彩模様など、奇妙で新しい手法も採用している。
ノルウェーとドイツのスピードスケートチームは今回、それぞれ従来使ってきた明るいレッド、グリーンのレーシングスーツではなく、ブルーのレーシングスーツで戦う。チームのスポーツサイエンティストが、ブルーを着れば「より速くなる」と主張したためだ。
だが、ブルーによって“物理的に”速くなるわけではなく、全ては心理的なことのようだ。
2017年12月、ニューヨーク・タイムズのインタビューで、ノルウェーチームのレーシングスーツの責任者でスポーツサイエンティストのハバード・ミュクレブストは、カラーは素材のエアロダイナミクスに効果があるのかという質問に答えなかった。彼は笑いながら、ただこう答えた。「我々の新しいブルーのスーツは、古いレッドのスーツより速い」。
自信といった心理的な要因が、選手のパフォーマンスに劇的な影響を与えることは、多くの研究が示している。そしてカラーは、多くの心理的影響をもたらす視覚的な特徴だ。
だが、ブルーが選手のパフォーマンスを向上させるという研究とは、全く逆の結論を示す研究がある。
その1つ、イギリスの進化人類学者、ラッセル・ヒルとロバート・バートンは、ボクシングやレスリングのような競技では、レッド(ノルウェーの古いスーツの色)が選手のパフォーマンスを向上させるとしている。つまり、彼らはレッドが優勢と結論づけている。
リオ・オリンピックでのボクシングの試合。
Frank Franklin II/AP
2005年、ネイチャーに掲載された研究で、彼らは2004年のアテネ・オリンピックでブルーとレッドのユニフォームを着た選手を比較。勝利とレッドのユニフォームには、統計的に大きな相関関係があることを明らかにした。ブルーではなく。
つまり、ブルーがポジティブな結果をもたらすと考えるのは、まだ革新的なことなのだ。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学者が、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・サイコロジーに発表した研究では、被験者の1人はブルーは全ての色の中で、最も「楽しい」と答えた。他の研究ではブルーは創造性、冷静さ、寛容さと結びついているとしている。
だが研究のほとんどは決定的なものではない。明るさ、つまり明度が、カラー自体よりも人の反応とより関係しているという研究もある。
繰り返そう。パフォーマンスを実際に左右するのは、自信だ。
「ブルーを着たスケート選手は、レッドの選手より少し速いと彼らは言っている。それを信じたい」とノルウェーのスピードスケート選手、ヘゲ・ベッコ(Hege Bokko)はタイムに語った。
アメリカのモーグルスキーチームも同様にカラーが持つ心理的な効果に期待している。
コロンビアスポーツウェアがデザインした同チームのユニフォームは、同社が「雪迷彩」と呼ぶ模様になっている。プレスリリースによると、ホワイトとグレーのパターンは「大きな減点の対象となる選手の体のブレを隠す」ようにデザインされている。
だが選手たちは採点のために、膝にマーカーを付ける。そのため迷彩模様がどのくらい効果があるのかは分からない。
(翻訳/編集:増田隆幸)