左から「REI 2 Dual」「Priori 5」。
SIMフリースマホブランド「FREETEL」(フリーテル)が2月9日に発表した新型スマホ「REI 2 Dual」と「Priori 5」。この2機種は、フリーテルブランドの端末事業運営をプラスワン・マーケティング(以下POM社)から、MAYA SYSTEMが1月に買収して以降、最初の製品ということになる。しかし、企画・生産は実はPOM社時代のものだ。
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MAYA SYSTEM ECマーケティング部 部長の山崎正志氏。
フリーテル時代のいくつかの製品は、故障の発生(頻発?)など機械としての品質が必ずしも高くはなかった印象がある。元POM社の社員でMAYA SYSTEMのECマーケティング部 部長の山崎正志氏は、POM社時代の一部端末における品質の課題を認めた上で、「REI 2とPriori 5に関しては、端末の設計、デザインを自社で実施した」と自信を見せる。
発表会でのインプレッションから、新生フリーテルの今後を占う2つの端末の特徴を見てみよう。
ガラスの質感と動作がなめらかな「REI 2 Dual」
「REI 2 Dual」。2月16日からビックカメラやヨドバシカメラ、ECサイトなどで発売予定。
REI 2 Dualは予想実売価格3万6800円(税抜)の中級機スマートフォンだ。ボディーはガラスで覆われており、つややかな質感とすべすべとした触り心地。側面はラウンドしているため、ホールド性は悪くない。前世代機である「REI」はメタル調の素材を採用していたが、REI 2 Dualはガラス素材により180度違った印象のスマホになっている。
REI 2 Dualの幅は75mm。片手で持つにはちょうどいいぐらいだが、操作はすべるので難しい。
従来の「REI」などの中級機以下のフリーテル端末は、アプリの切り替え直後に表示にカクつきが見られるなど、日常でも性能不足を感じる場面があった。しかし、REI 2 DUALは発表会会場で触れている限りでは、アプリの起動、切り替え後の動作も一線を画すスムーズさがある。
これは、スマホの心臓部であるプロセッサー(SoC)を、MediaTek製からフリーテルでは初採用となる、スマホ向け半導体大手のクアルコム製Snapdragon 625に変更したことが大きいと思われる。
SoC:System On a Chip、1チップでコンピュータを実現する統合半導体のこと
背面にはカメラ2機と指紋センサーを備える。
標準カメラのぼかし機能を使うと、撮影後でもぼかし具合を調整できる。
また、REI 2 Dualはその名が表すとおり「デュアルレンズカメラ」を背面に搭載している。それぞれ1300万画素のセンサーを搭載し、一方は色をとらえて、もう一方はモノクロセンサーで細部を描写する。2つのセンサーで得られた画像を合成することで、暗所にも強いカメラ性能を実現している。
加えて、1600万画素の正面カメラでは、同社が「ナチュラル美顔モード」と呼ぶ、独自の美肌補正機能を搭載。セルフィー需要にもしっかりと答える仕様になっている。
“バッテリー交換”が復活した5インチスマホ「Priori 5」
Priori 5。2月23日より、REI 2 Dualと同チャネルで発売予定。
一方、Priori 5は予想実売価格1万6800円(税抜?)の入門機といえるスマホだ。ディスプレーは5型HD解像度(1080×720ドット)と、現在の市場では小ぶりなボディを採用。山崎氏も「日本で一番ニーズのあるサイズではないか」と語る。
背面カバーを外したところ。バッテリーには開発の名残でPOM社の名前がある。バッテリーも端末を扱う量販店で販売される見通し。
Priori 5の最大の特徴は、バッテリーの取り外し交換ができるという点だ。バッテリーは経年劣化で容量が少なくなるため、少しでも長く端末を使いたい人からは、交換対応の端末は根強い人気がある。
実は旧フリーテルのPrioriシリーズは、初代モデルから「Priori 3」まで、バッテリーの取り外しができるモデルだった(「Priori 4」で交換不可になった)。
「いまでも5〜6万人がPriori 3を使っており、(自力での)バッテリー交換の需要は大きい」(山崎氏)と、ユーザーの声を受けて“復活”した形だ。
また、Priori 5はREI 2 Dualと同じく、DSDSと呼ばれる2枚のSIMによる同時待受(Dual SIM/Dual Standby)に対応している。
注意したいのは、両者同じDSDS対応とはいうものの、REI2 DualとPriori 5で仕様が微妙に異なるということだ。中級機のREI 2 DualがmiroSDカード挿入時にSIMが1枚しか挿せない「排他仕様」なのに対し、Priori 5はmicroSDカードと2枚のSIMカードが同時使用できる“併用仕様”。SIMカードとmicroSDカードの組み合わせ自由度という点では、入門機のPriori 5の方が制限が少ないということになる。
Priori 5は2枚のSIMカードスロットと、microSDカードスロットをそれぞれ個別に搭載。いわゆる、DSDS(Dual SIM/Dual Standby)機能とメモリーカードが共存できる仕様だ。
1〜3万円の価格帯はメーカーの体力が試される激戦区
2月8日に発表されたばかりの「HUAWEI nova lite 2」。
ファーウェイ
正直なところ1〜3万円台の市場は、ただでさえ競合の多いスマホ業界のなかでも、価格・機能・質感のバランスが難しい領域だ。かけられるコストが限られ、量産でスケールメリットを出しやすい大規模メーカーの優位性が如実に表れるためだ。
例えば最近では、国内でも存在感を強めている中国メーカー・ファーウェイ(華為技術)が、新製品「HUAWEI nova lite 2」を発売している。実売価格は2万3000円前後(税抜)。現状、各格安SIM事業者での取り扱いのみとなるものの、REI 2 Dualと同じくデュアルレンズカメラや指紋センサー、最新のAndroid 8.0やアスペクト比18対9の縦長ディスプレーを採用している。nova lite 2が非常に強力なライバルであることは言うまでもない。
新生フリーテルとしては、入門機のPriori 5ではバッテリー交換可能という、他メーカーにはほぼ見られない特徴を打ち出しつつ、中級機のREI 2 DUALでは、Snapdragon採用によるスムーズな操作感で競合機種と戦っていくことになる。
今後、MAYA SYSTEMは自社のeSIM(契約情報などを、専用機器なしに書き換え可能なSIM)技術を活用した「海外でも使いやすいスマホ」をリリースするとしている。まずはこの新体制第一弾のスマホ2機種でどこまでの評価が得られるかで、次の本命であるeSIM搭載スマホへの期待値が見えてくるはずだ。
MAYA SYSTEMのeSIM技術が施された「海外SIMフリースマホ」が今後登場する見込み
(文、撮影・小林優多郎)