スキージャンプ、なぜスキー板をV字にして飛ぶのか?

平昌オリンピックで練習するスロベニアのティレン・バルトル選手。

平昌オリンピックで練習するスロベニアのティレン・バルトル選手。

REUTERS/Kai Pfaffenbach

  • スキージャンプの選手は、踏切台から飛び出した後、浮力を最大化するためにスキー板をV字型に保つ。
  • 滞空時間を可能な限り長くすることは、ジャンプの飛距離を伸ばすことにつながる。
  • 1985年にスウェーデンのヤン・ボークレブ(Jan Bokloev)選手がV字ジャンプを採り入れたとされる。1992年には、オリンピックのメダリスト全員がV字ジャンプを行った。
  • V字ジャンプは、ジャンプの後半に空気抵抗がより大きくなるため、着地スピードを落とすことにもなる。

スキージャンプは、どれだけ遠くまで飛べるかを競う。

選手は最初、助走路を滑るときにはできるだけスピードを上げるために、空気抵抗を減らす姿勢をとる。だが空中に飛び出すと、体勢とスキー板の位置を変え、浮力を最大化させることで飛距離を伸ばそうとする。

昔はスキー板を左右平行にしていた。だがスキー板を離し、後ろを近づけた状態にすると、下からの浮力を受けられることが分かった。V字ジャンプは1990年代から定番スタイルとなった。

「ジャンプ選手はグライダーのように飛ぼうとしている」とバージニア大学の物理学者ルイ・ブルームフィールド(Louis Bloomfield)氏は2010年、Inside Scienceに語った

「空気を押し下げると、空気は押し返し、選手を上昇させる」

スキージャンプの技術は、過去200年の間にドラマチックな変化を遂げた。だが現在では、全てのオリンピック・メダリストがV字ジャンプを行っている。

進化の歴史

コングスベルガー・テクニック(Kongsberger technique)で飛ぶチューリン選手。1924年の第1回冬季オリンピック。

コングスベルガー・テクニックで飛ぶチューリン選手。1924年の第1回冬季オリンピック。

IOC

昔、選手は「アップライト・スタイル」で飛んでいた。ジャンプの間も真っ直ぐ立ったまま、「丘を直立したまま下って来る」と著書『White Heat: The Extreme Skiing Life』にウェイン・ジョンソン(Wayne Johnson)氏は記している。1860年、スキージャンプの父として知られるノルウェーのソンドレ・ノルハイム(Sondre Norheim)氏はこのスタイルで、99フィート(約30メートル)という当時の世界記録を打ち立てた。

ノルウェーのヤコブ・チューリン・タムス(Jacob Thulin Thams)選手とシグムント・ルート(Sigmund Ruud)選手が確立したコングスベルガー・テクニック(Kongsberger technique)が第1次世界大戦後、アップライト・スタイルに取って代わった。

選手は腰を曲げて前傾姿勢を取り、両手を前に伸ばす(スキーを越えて飛び込むような体勢)。そしてスキーを平行に保つ。コングスベルガー・テクニックで飛距離はそれまでの約150フィート(約46メートル)から、300フィート(約91メートル)を超えるまでになった。

次の大きな進化は、1950年代半ばにスイスのアンドレアス・デシャー(Andreas Daescher)選手が生み出した。デシャー・スタイルでは、両腕は体のすぐ横に付ける。スキー板はまだ平行のまま。このスタイルは30年以上、スキージャンプの主流となった。

大きな変化

ターニングポイントは1985年、スウェーデンのヤン・ボークレブ選手が「V字ジャンプ」を採り入れた。スキー板は、平行ではなくV字型に保たれ、頭はスキー板の間に置く。V字ジャンプによって飛距離は大きく伸びた。また、より安全なスピードでの着地が可能になり、怪我のリスクも減った。

スキージャンプの2つのフェーズ

スキージャンプには2つのフェーズがある。フェーズ1で選手は体勢を整え、フェーズ2でV字スタイルといった最終体勢を取る。

Jin, Shirnizu, Watanuki, Kubota, and Kobayashi

ジョンソン氏によると、風洞実験でV字ジャンプでは浮力が28%増加することが分かった。つまりこれは、選手が滞空時間を伸ばせることを意味している。

「今ではジャンプ選手は『スキーフライング』のジャンプ台から、当たり前に500フィート(約152メートル)以上飛んでいる」

日本人研究者が行ったコンピューター・シミュレーションによると、ジャンプの前半でV字ジャンプは、スキーを平行にした以前のクラシック・スタイルと比べると、かなり大きな浮力を得られることが分かった。

V字ジャンプとクラシック・スタイルの浮力の比較グラフ

V字ジャンプが得る浮力はクラシック・スタイルを上回る。

Jin, Shirnizu, Wafanuki, Kubota, and Kobayashi

そして、ジャンプの後半では、V字ジャンプはより大きな空気抵抗を生むため、選手は着地に向けてスピードを落とすことができる。

だがV字ジャンプはすぐに受け入れられたわけではなかった。飛距離は伸びるものの、スキーを平行に保つスタンダードな姿勢でなかったため、飛型点が低くなってしまった。実はV字ジャンプは、1969年にポーランドのミロスワヴ・グラーフ(Miroslaw Graf)選手が初めて行ったとされる。だが、当時理想とされていたスタイルからかけ離れていたため、しばらく歴史の中に埋もれていた。

「当初は冷笑されたが、V字ジャンプは成績を伸ばし、1992年にはオリンピックのメダリスト全員がV字ジャンプを行った」

オリンピックのオフィシャルウェブサイトには、そう記載されている。

[原文:Why ski jumpers hold their skis in a V shape

(翻訳:まいるす・ゑびす/編集:増田隆幸)

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