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世界経済フォーラム(WEF)の最新レポートによると、イギリスは旅行者に対する価格競争力ランキングで下から2番目、ビザ申請の簡単さでも下位という結果になった。これらの数値は、ブレグジット(イギリスのEU離脱)でさらに悪化しそうだ。
WEFは136カ国の観光業の状況を評価した「旅行・観光における競争力レポート(Travel and Tourism Competitiveness Report)」を2年おきに発表している。
今回、イギリスは「価格競争力」の面で、調査対象136カ国中135位だった。
価格競争力は、空港使用料と航空券への税金、ホテルの宿泊料金、物価(購買力平価:特定の商品の価格比較)、ガソリン価格の4つを基に算出される。
イギリスは物価が130位、空港使用料と航空券への税金が133位、ガソリン価格も133位で、唯一、ホテルの宿泊料金だけが中間レベルの59位という結果だった。
また、ビザ申請の簡単さは108位の評価だった。イギリスがEUから離脱し、EU域内の自由な移動を認める政策が適用されなくなれば、さらにランクを落とすことになるだろう。
EU離脱後も航空業界は「国際路線を守る」
イギリスにとって観光業は急速に伸びている領域で、英国政府観光庁によるとGDP(国内総生産)の9%、雇用の10%を占める。
EU離脱後当初はポンド安になって旅行がしやすくなるというメリットが注目されたが、長期的には観光業は大きなダメージを受ける可能性が高い。
現在、イギリスとEU諸国、アメリカを結ぶ航空路線は、EUとの協定に基づいて運航されており、EU離脱交渉で有利な条件を確保することは極めて重要になる。
ABTA(英国旅行業協会)は4日火曜日に声明を出し、「イギリス航空業界は、ほぼ全ての業界が加盟している世界貿易機関(WTO)から脱退するようなことはない。航空業界に不可欠な枠組みから撤退する選択肢はない」と述べた。
「航空路線の減少は、観光客、ビジネス客など、海外からイギリスを訪れる人たちへの大打撃となる」
ABTA会長のマーク・タンザー(Mark Tanzer)氏は「観光業はイギリスの大きな産業の1つであり、政府は離脱交渉中も交渉後も、業界が健全な成長を続けられるよう配慮することが不可欠」と強調した。
「多くの業界が自分たちの業界こそ最も重要であり、優先されるべきだと主張するだろう。しかし私は、島国であるイギリスにとって、交通手段こそ極めて重要だと心から思っている」
[原文:Brexit is set to damage Britain's tourism industry]
(翻訳:十河亜矢子)