bitFlyer・加納CEOがいま仮想通貨業界について語る7つのこと:後編 —— 国際ルール整備からICOまで

取引所コインチェックから巨額の仮想通貨が流出した問題をきっかけに仮想通貨業界が大きく揺れる中、大手仮想通貨取引所bitFlyer(ビットフライヤー)のCEOで、業界団体のひとつ日本ブロックチェーン協会(JBA)の代表理事も務める加納裕三氏(42)がBusiness Insider Japanの取材に答えた。

後編は、仮想通貨の価値、国際的規制を巡る議論、仮想通貨を用いて資金調達する新しい手法ICO(Initial Coin Offering)、ビットフライヤーのこれからについて、加納氏の考えを聞いた。

インタビュー前編はこちら:bitFlyer・加納CEOがいま仮想通貨業界について語る7つのこと:前編 —— 過去最大の流出から見えた課題

ビットフライヤーの青いダルマ

ビットフライヤーの社内には「分散社会元年」と書いた青いだるまが飾られている。

撮影:今村拓馬

④仮想通貨の価値の源泉は、ブロックチェーンそのもの

Business Insider Japan(以下、BI):法定通貨は、景気動向や政府の政策などさまざまな要因で価格が動きます。一方で、仮想通貨はこうした価格を決定する要素が見えにくい。なにが仮想通貨の価格を決めているのでしょうか。

加納裕三氏(以下、加納):ブロックチェーン技術に価値があると思っています。逆説的ではありますが、ブロックチェーンが非常にハッキングしやすいシステムならば、ビットコインには価値は生まれません。いつ、自分の仮想通貨がなくなってしまうかわからなければ、そんな技術に価値はありません。技術的に、価値がなくならないという機能が備わっていることが、ビットコインに価値が生まれる一因になっています。

通貨の三原則も備えています。価値の保存ができ、移転できて、計測できる。これら3つを満たしています。これを実現したのは、ブロックチェーンです。そこにはやはり、なんらかの価値があります。

BI:仮想通貨LISK(リスク)の取り扱いをビットフライヤーが新たに始めたタイミングで、LISKの価格が動いたため、インターネット上にはインサイダー取引を疑う書き込みが見られました。これに対して、2月6日付で社内の情報管理についてプレスリリースを出しました。狙いは。

加納:我々はインサイダーをやる主体ではありません。株の世界で言うインサイダーは、情報を得て、その情報をもとに株を売買して利益を上げる行為です。もし我々がそういった行為に関わったとすれば、それは情報漏えいです。

インターネットではインサイダーでもうけたと言われていますが、プレスリリースを出すことでマーケットに対して、機密情報に関して厳格にやっているので、我々の知る限り情報漏えいやインサイダーはないということを伝えたかった。インターネット上の噂は価格が上がったり下がったりしているものを、無理やり当社に結びつけているように思えます。

加納裕三氏

ビットフライヤーCEOの加納裕三氏。社名は、加納氏が好きな飛行機が由来のひとつだ。

撮影:今村拓馬

⑤国際的な統一ルールを

BI:世界的な規制の必要性が議論されはじめています。欧州やアメリカでライセンスを取得する活動を通じて、感じていることは。

加納:ある国の財務大臣と話をしたときは、G20(20か国財務大臣・中央銀行総裁会議、2018年3月にアルゼンチンで開催)で話すと言っていたので、議論されるのだろうと思います。仮想通貨を網羅的に規制するようなルールがあったほうがいい。FATF(政府間会合の「マネーロンダリングに関する金融活動作業部会」の略称)から仮想通貨に関するレポートが出ています。FATFに参加している国は、ルールを守らないといけない。従って統一的なルールは、もとはFATFのルールだったんだと考えています。

FATFのガイドラインには、仮想通貨を禁止する際には闇市場での仮想通貨を使った犯罪・マネーロンダリング等に十分気をつけなければならないと書いてあり、「禁止」のハードルは高い印象です。韓国も中国もFATFに参加していますから、簡単に禁止することはできないと思うんです。先日、中国の高官と話をしたときには、「中国は禁止をしていない。無期限の延期をしているだけだ」とおっしゃっていました。

FATFのガイドラインを基に、もう一度原点に戻り、ガイドラインはどう機能してきたのか。もし国際的な統一規格をつくるのであれば、どの機関がやるのかということが気になっています。

国際的にも、仮想通貨はよくわからない得体の知れないもので、詐欺が多いと嫌う人もいます。価格も乱高下します。こういった課題を乗り越えて、未来の技術で価値のあるものが生まれたということを理解していただけるよう、努力をしないといけないと思います。

⑥ICO、ルールを決めて競争を

BI:このところ、仮想通貨や、仮想通貨で資金調達をする新しい手法ICO(Initial Coin Offering)を巡る規制のあり方について、さまざまな場面で発言されています。

加納:もともとJBAとして自主規制をしてきて、改正資金決済法ができて一段落したと思っていたところにICOがでてきたので、やはりルールが必要だと思い、2017年の秋ごろから発信しています。

ICOについていま議論しているのは、まずは投資家保護です。ホワイトペーパー(事業計画書)を後で書き換えるような案件があるので、それは問題です。また、トークン(引換券に相当)を発行する企業が、投資家とどのような約束をし、どのような義務を負っているのか。企業が発行するトークンやコインにどんな価値があるのか。これらを明確にする必要があります。

広告についても議論の必要があります。絶対にもうかります、というような広告も規制が必要です。

仮想通貨を浸透させていくうえで、民間主導の自主規制と政府による規制の両方が重要だと思います。いまは資金決済法と政令、金融庁の事務ガイドラインがありますが、自主規制も必要です。

自主規制は、民間のルールですばやく決められます。ただ、拘束力は非常に弱い。一方で法律は、当然国会を通さないといけないので、時間がかかります。民間のルールは、すばやく決めることができ、詳細なルールを設けることができます。こうしてレイヤーに分けてルールを設けるのは、いい方法だと思っています。

アメリカの当局の動きなどをみると、ICOに関しては、この1カ月、2カ月の間でやらないといけない状況だと思っています。

やはり詐欺が多いので、違法な業者は減るべきです。なにができて、なにをしてはだめかがクリアになる。そうなると、これまでグレーゾーンが怖くて技術開発をできなかった人が、これならできるということになる。ここに線があるんだとわかれば、開発がしやすい。線がないと、グレーゾーンを突っ走る人が得をして、真面目な人が損をしてしまう。線の位置を決めて、その中で競争すればいい。

bitFlyer cafe

ビットフライヤーの社内にはbitFlyer cafeもある。

撮影:今村拓馬

⑦これからの仮想通貨業界と会社

BI:メガバンクやLINEなど、強力なプレーヤーが仮想通貨への参入を表明し、業界の地図が大きく変わると言われます。

加納:みんなが競争している業界です。大手が入ってくれば絶対に勝てるというところでもありません。仮想通貨の世界は、サーバーの運用でかなり苦労します。サーバーを24時間、365日回していくには、経験とノウハウがいります。技術の部分で、4年間のアドバンテージを生かしていきたい。

BI:これからの会社の姿をどう描いていますか。

加納:一般論として、ベンチャーは資金調達をしたんであれば、イグジットを目指さないといけない。当社も資金調達をしていますから、株主に対しては結果を出さないといけない。ですから、IPOも選択肢の一つです。

ICOに関しては規制ができていないし、ルールも定まっていないので、当社としては、グレーゾーンでなにかするというコンプライアンス体制にはなっていないので、現状でICOをするということは考えていません。ちゃんと金融庁と話をして、なにがよくてなにができないのか、整理ができたうえでやるべきだと思います。

非上場でも上場企業でも十分な資金量で、「ブロックチェーンで世界を簡単に」というミッションを達成したい。そのために国際展開をして、取引所をやりながら、ブロックチェーンもやっています。無茶なミッションを達成するためには、十分なリソースは必要です。引き続き、仮想通貨だけではなく、フィンテックと言われるさまざまな分野にチャレンジをして、世の中を変えていきたい。

ぱっと見てもわからないけれど、携帯電話の中で電子マネーや仮想通貨が実はブロックチェーンで動いていて、非常に安く決済ができる。

ICOが制度設計をされ、規制があっても新しい資金調達手法として定着すれば、投資家にとっては、いままででは投資ができなかったような新しい考えの会社に投資ができるようになるかもしれない。少額でも投資ができるようになる。

国際送金は、面倒な書面をたくさん書いて、届くまで何日もかかります。手数料も高い。こうしたものは、変わっていくと思います。

世の中が変わっていくときに、当社が何らかの形で少しでも関わっていられたらいいなと思っています。

(聞き手・構成:小島寛明、佐藤茂、写真:今村拓馬)

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