WeWork入社を決めた元Uber高橋氏に送られた創業者からのメール —— 元GE役員も参画するその魅力

2018年2月1日に国内1拠点目をオープンしたコワーキングスペース「WeWork」が2月15日、日本の経営陣を正式発表した。GM(ゼネラル・マネジャー)に元Uber日本法人執行役員社長の髙橋正巳氏(36)、経営陣にはGEやVMwareの日本法人の幹部らを迎えた。国内の拠点は2018年中に、東京、大阪、福岡で10〜12拠点を設けたいという。ソニー、Uberで働いてきた髙橋氏は、なぜWeWorkを選んだのか。

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WeWork日本法人のGMに就任した髙橋正巳氏(左)。同法人のクリス・ヒルCEOは「全方面の私の右腕」と髙橋氏に期待する。

髙橋氏は、シカゴ大卒業、ソニー入社。パリに転勤、ビジネススクール「INSEAD」でMBAを取得、シリコンバレーで働き、ベンチャー企業の発掘、買収、投資案件に従事した。2014年にUberに入社、日本法人執行役員社長に就任、東京でUberEATSを立ち上げ、地方におけるライドシェアの実証実験を手がけた。

寿司のメールから思わず創業者の一面が

「WeWorkが日本でGMを探している」と髙橋氏がリクルーターから聞いたのは、2017年春頃だった。同年7月にWeWorkとソフトバンクで合併会社を設立することが発表され、「日本に対する本気度、規模感が見えてきた」。入社を決めたのは2017年秋頃だった。

同社幹部らと何度も話を重ねて、入社を決めたというが、「きっかけとなった出来事は」と問うと、WeWork創業者のミゲル・マケルヴィ氏とのエピソードを明かした。

「実は2017年夏に、マケルヴィ氏が来日した時に、いろいろと議論をした。WeWorkのカルチャーを、言葉だけでなく、行動で作ろうとしている姿に、非常にワクワクした」と髙橋氏。初対面の後、マケルヴィ氏にお礼のメールをしたところ、「ありがとう。実は今日は寿司を食べに行きたいが、いい寿司屋を知らないか」というようなフランクなメールが返って来た。ただし、メールには「PS」「メールは別途、ちゃんと返すから」というような言葉も添えられていた。

すると翌日、「本当にすごい長いメールをいただいて」。マケルヴィ氏が日本に感じている可能性や、髙橋氏がなぜUberにいて、何をしようとしてるか、議論をしたことへの共感がメールに書かれていた。

創業者が本当に人と人とのつながり、接点を大切にしていると感じた瞬間だった。創業者の方がそうしているのが、すごくうれしかった

WEWORK

コミュニティマネージャーを配置し、人々のつながりを生むWeWorkは、イノベーションの源になるのかもしれない。

髙橋氏はソニー時代、サンフランシスコに住み、ライドシェアやAirbnbなど、まだ日本では普及していない「非連続なサービスが世の中を変えている」と実感を持った。「日本からもこういうイノベーションが生まれる循環を作りたい」と強く思ったという。

そのためには、働き方、人々の接し方を変える環境が重要だった。髙橋氏の目指す「人と人が直接つながって、視野が広がって、刺激を受け、ハピネスがあって、新しいことが生まれること」、それはWeWorkが目指すところと一致していた。

前職のUberに対しても、「日本で伸ばせる価値を感じていたし、チームとしてもっと成長させたい思いもあった」。しかし、「人生は一度きりで、体も一つしかない。自分が残せるインパクト、自分がやりたいことを考えたとき、(WeWorkが)やりたいことだと直感的に思った

WEWORK

毎日のようにWeWorkでは、利用者が交流できるイベントが開かれている。

WeWork日本法人のクリス・ヒルCEOは「髙橋氏は、全方面の(私の)右腕としてサポートする存在」と激励した。日本法人の経営陣には、髙橋氏のほか、ゼネラルカウンセルに元VMware日本法人の法務責任者の吉川達夫氏、CFOに元GEジャパンCFOの佐々木一之氏を迎えた。吉川氏は、アップルやVMwareで日本法務責任者を歴任、佐々木氏は、GEに14年間勤務し、GE PowerやGE Capitalなどの事業部門を経験した。

バーガーキングや隠れたユニコーン企業が入居

オフィス

ガラス張りブースから他社の取り組みが見られる。

2月1日に六本木のアークヒルズにオープンした1拠点目は、共同出資者のソフトバンクと同社関連企業が利用者の半数を占めるほか、バーガーキングを展開する「BK Japan Holdings」、建築材料の「LIXIL」外資系のアドテクプラットフォーム「AppNexus」などが借りている。AppNexusは、報道によると、2016年末で評価額が約20億ドル(約2000億円)のユニコーン企業と言われている。

入居者の間では早速、協業の兆しが見えている。テレビCMなどの制作会社「AOI Pro.」は、隣の席に入社した企業が持つ、視聴者の印象「視聴質」を測る技術を応用できないか、と協業の可能性を模索しているという。同社担当者は「(テレビCMが減る中、)広告業は、いろんな事業体に入っていかないといけない」と入居の背景を説明し、「いろいろな技術がバラバラだと、ソリューションにならない。これまでは企業を検索して、アポをとってから始まっていた協業も、ブースのガラス越しに他の企業を見られる」と評価していた。

利用企業の中には、商品の発表会に使いたいという意見もあった。

Wework

メンバー専用アプリは、Facebookのように各地域ごとにフィードに、利用者の投稿が流れたり、「こんな人、スキルを求めている」と思えば、全世界に投稿したり、メッセージを送ったりすることができる。会議室の予約も可、コミュニティのイベントの情報も見られる。

原宿のビル「アイスバーグ」を丸ごとWeWork

WeWorkは、3月に丸の内北口、4月に銀座シックスの最上階と新橋のビル1棟、6月には原宿のビル「ジ アイスバーグ」(WeWorkアイスバーグ)のビル全体で、WeWorkをオープンさせる。年内には、10〜12拠点の開設を目指す。原宿の拠点について、「地域の人も立ち寄れる場所にしたい」とクリス氏は抱負を述べた。

WeWorkは現在、20カ国66都市に212カ所の拠点を持つ。日本は、世界の中でももっとも急速に拠点が増えている国で、クリス氏は日本での競合を「スターバックスくらい」と冗談で話し、日本での展開に強い自信を見せた。

(文、撮影・木許はるみ)

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