Visaは決済分野のワールドワイドオリンピックパートナーだ。
平昌オリンピック会場近くで手に入れたVisaと平昌オリンピックのロゴ入り手袋。実はコレ、ただの防寒具ではない。
日本で最もポピュラーなキャッシュレス決済と言えば、Suicaなどに代表される交通系ICを利用した改札通過だろう。新しもの好きの学生だった筆者は、10年ほど前に物理ICカードを仕込んだ自作のSuica手袋を作って改札を通ったりしていた。
Suica手袋は言ってみれば自腹実験みたいなものだったが、平昌五輪の会場では、まさに自分が作っていたものと同じような仕組みの手袋が大真面目に販売されている。
国際的な決済ブランドVisaが、平昌オリンピックで非接触ICタグ(NFC)内蔵の手袋やニット帽などに付ける「ピン」を販売。現地で実際に使ってみたので使用感をレポートする。
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取材地の江陵(カンヌン)会場では自動販売機でICタグ入り手袋が売っていた。
右側にある手のイラストに手のひらを当てて、手袋のサイズを確認する。
ICタグ入り手袋は全サイズ共通で6万5000ウォン(約6500円)。
自動販売機の上部ではステッカーやピン型のICタグが売っている。
自動販売機での購入にはクレジットカードが利用できる。
筆者が購入時、自動販売機の扉がうまく開かず外箱が破けてしまった。
中身が無事だったのは不幸中の幸い。海外の自動販売機にはよくあることだ。
手袋は少し薄手で氷点下の江陵では物足りなかったが、着け心地は悪くない。
両手の人指し指と親指は導電性のある素材が使われており、スマホの操作も可能。
手袋に同封されているICタグ。3万ウォン(約3000円)がチャージされている。
手袋で使う際は、背面の基板や台紙から取り外す。見た目は携帯電話のSIMカードのようだ。
ICタグは右手の甲にあるスリットに入れる。スリット付近には非接触決済によく使われるロゴがある。
早速、会場内にある大型のショッピングゾーンで試してみた。
ちなみに、会場内は現金とVisaの決済サービスしか使えない。
クレジットカードでもMastercardやJCBは利用できないということだ。
ショッピングゾーンにあった決済端末。磁気、IC、非接触の3種類の決済サービスに対応。
決済時には、右手の甲を端末上部に押しつける。認識から決済まではだいたい2秒ほど。
レシートには利用額と残高が表示されており、無事決済できていた。
今回のICタグの発行会社は韓国のロッテグループのため、同グループが運営する共通ポイントサービス「L.POINT」も同時に貯まっている。
キャッシュレス決済が普及する韓国とVisaはベストマッチ
韓国ではサムスン電子製スマホで磁気、NFC、2次元コードで決済が利用できる「Samsung Pay」も登場している(韓国や米国、オーストラリアなどで展開中)。
Visaは1986年からワールドワイドオリンピックパートナーとして冬季および夏季五輪で決済分野の技術協力やプロモーションを行っている。今回は手袋などだったが、2016年のリオ夏季五輪では同様の非接触タグを搭載する指輪を展開するなど、新しい決済体験の創出に力を入れている。
そんな中でも、今回の平昌オリンピックとキャッシュレス決済はベストな組み合わせと言える。なぜならば、韓国ではすでにキャッシュレス決済が広く普及しているからだ。Visaによると、2011から2016年までの韓国における決済方法の割合は、65%がクレジットカード、34%が現金となっている(ユーロモニターインターナショナル調べ)。
2020年東京オリンピックまでに日本のキャッシュレス決済も加速?
オリンピックなどの大規模イベントでは、行列が大きな課題となる。キャッシュレス決済は購入時にかかる時間を短縮する。
Visaは現状、2020年までのワールドワイドパートナー契約を国際オリンピック委員会と締結している。2020年東京オリンピックに同社がどんなユニークな施策を実施するか、またそれまでに日本の決済関連事情がどのように変化するのか注目だ。
(文、撮影・小林優多郎/取材協力・サムスン電子ジャパン)