「ペアーズ婚」は草食時代の救世主? アルゴリズムは僕より好みを知っている

マッチングアプリ

38歳の佐竹修さん(仮名)は2017年11月、ペアーズを介して知り合った31歳の女性と出会いから約4カ月で結婚した。

マッチング(デーティング)アプリの世界は進化と細分化を続けている。そんな中、マッチングアプリ(デーティングアプリ)を介した「結婚」がミレニアル世代の間でもじわじわと浸透してきている。

(関連記事:Tinder女子、なぜデートアプリにドハマりするのか?—— 求めてるのは王子様でもセックスでもない

大学の同期にTinderで再会

Tinderでは、特に気に入った人に対して「SUPERLIKE」を送ることができる。

Tinderでは、特に気に入った人に対して「SUPERLIKE」を送ることができる。(写真はイメージ)

2016年3月。人材系ベンチャー勤務の小橋涼平さん(28、仮名)は、いつものようにマッチングアプリ・Tinder(ティンダー)を開いてスワイプしていた。

ポンと表示されたのは、Facebookの共通の友人が35人という女性。顔と名前をチェックすると、慶應義塾大時代の同期生だった。

思わずニヤニヤしながら、“SUPERLIKE”(注:Tinderの機能の一つ。通常は自分と相手がマッチしないと「LIKE」は届かないが「SUPERLIKE」は相手がLIKEしなくても通知が送られる)を送ると、マッチした。

「ひさびさ。」

と送ると、返って来たのは、

マジでやめて

拒まれているかのようにも受け取れるメッセージだが、Tinderは互いのマッチ数が多いためマッチしてもメッセージに結びつかないことも多くある。

彼女からとりあえずは返信が来たことで打ち解け、久しぶりの再会となるデートに繋がった。

4カ月の間に4、5回ほどデートを重ね、付き合うことに。彼女は過去の自分の恋愛歴なども知っているため、信頼の置ける相手だ。

彼女と小橋さんは、2017年8月に結婚した。

「妻がまだTinderを使っていたら?考えたこともなかった(笑)。していたらイヤだけど、そこが信頼できなかったら結婚していないですね」(小橋さん)

友人同士の飲み会途中でも開くアプリ

マッチングアプリは、かつてあった「出会い系」というネガティブなイメージも薄れ、友人との共通の話題にあがる気軽な存在としてミレニアル世代の間に浸透してきている。

小橋さんは友人同士で飲みながらマッチングアプリを開くこともあったそうだ。

サイバーエージェント子会社のマッチングエージェントと調査機関デジタルインファクトの共同での調査によると、2017年の日本のオンライン・マッチングサービスの市場規模は256億円だった。同調査では、2018年にはこれが374億円(前年比46%増)に増加すると予測している。

オンラインマッチングサービス市場

国内のオンライン・マッチングサービス市場は、2018年に374億円になると予測されている。

参照:サイバーエージェント公式サイト

ニーズに合わせたマッチングアプリの細分化も進む。

デートにコミット」をコンセプトにしたマッチングアプリ、Dine(ダイン)を展開する株式会社Mrk & Coの代表取締役・上條景介さんは、マッチングアプリの「世代の違い」をこう表現する。

第1世代:「検索型マッチング」…自分の属性や趣味などを細かく入力して相手を探す。(例)Pairs(ペアーズ)、Omiai(おみあい)、Match.com


第2世代:「カジュアルマッチング」…第1世代の「検索の面倒くささ」を軽減。検索が不要で、スワイプで相手を選び、マッチしたらすぐにメッセージができる。(例)Tinder、Bumble、タップル誕生


第3世代:「サードウェーブデーティング」… 第2世代の「メッセージ交換の面倒くささ」を軽減。実際に会うところまでがアプリで設計されている。(例)Dine、whim(ウィム)、JOIN US (ジョイナス)

(参照:「米国のマッチングアプリ事情と、Dineの戦略」を元に作成)

アプリの市場分析をするApp Annieの調査によると、2017年の国内マッチングアプリ・ダウンロードランキングは、1位が「タップル誕生」、2位が「ペアーズ」、3位が「Tinder」。

ペアーズ、Tinder、Match.comなど45以上のサービスを世界に展開するアメリカのMatch Groupの時価総額は2018年2月1日時点で10億ドル(約1074億円、公式発表)を記録している。

小橋さんも独身時代、Tinderの他にも数種類のアプリに登録していたという。

彼女は「自分の半身的な感覚」

最近ユーザー数を伸ばしているのが第1世代である「検索型」だ。しかも実際結婚まで行き着く人も増えてきている。

ペアーズを運営するエウレカは、2017年にペアーズを介して結婚した人(入籍者数)を約1万8500人と推計している。

日本での「検索型」はMatch.com、omiai(おみあい)やペアーズなどがサービスを展開してきたが、なぜ今「検索型」で結婚する人が目立っているのだろうか。

エウレカの共同創業者で、現在はエンジェル投資家の西川順さんは、ペアーズ婚が増えている理由として「ユーザー数とマッチング率の連鎖」があるのでは、という。

ペアーズのユーザー数が増え、より多くの人と出会えるようになった。それに伴い蓄積されたデータも増え、そのデータを活用してアルゴリズムを改善することによって、マッチングの精度が上がっていることが原因だと分析する。

ペアーズの会員数の推移。

ペアーズの会員数の推移。2017年のペアーズを介した入籍者数は1万8500人と推計されている。JPが日本の会員数。

提供:エウレカ

大手インターネット広告企業に勤める佐竹修さん(38、仮名)は、2017年11月にペアーズを介して知り合った31歳の女性と結婚した。出会いから約4カ月のスピード婚だった。

「もう十分遊んだんで、そろそろ結婚を考えられる彼女を作りたいなと」

ペアーズは2016年頃から使っており、一度彼女もできたがその後に破局。しばらくのブランク期間を経て再開した。

飲み会の好きな先輩の影響で合コンもよく参加していたが、一回の飲み会につき1万円から2万円はかかる。

改めて連絡してもう一度会い、帰りのタクシー代などまで考えれば、一回の出会いにつき4万円から5万円。やはりコスパが悪い。

ペアーズは最初にその人の年齢など基本的なデータだけでなく、趣味や好みなどまで分かってから会えるので効率的だった。

同時進行で20人ほどと連絡を取り合っていたこともあったが、全員と会ってもきりがないため、「最低2週間は(メッセージを介しての)会話が続かなかったら会わない」と自分の中でルールを決めていた。

毎日のようにペアーズを使っていく中、現在の妻となる人と偶然、マッチした。

初めてのデートは浅草・ホッピー通りにある馴染みの飲み屋。ごちゃごちゃとした店内で、彼女が見せた店員や隣の客への態度に「すごくいい感じだな」と心が動いた。初めて会ったその日に「付き合ってください」と伝えた。

結婚

マッチングアプリで結婚する人の数も増えている。

写真:KirylV / Shutterstock

それは佐竹さんの人生で初めてのことだったというが、なぜ心に響いたのかは未だによく分からない、という。

交際を深めて行くうち、さらに意外な共通点が明らかになっていった。彼女の実家と自分の父親が通っていた大学が近くにあること。彼女と自分の姉の出身校が近い関係であること。彼女と自分、そして家族の誕生日が近いこと。

「僕は普段こういうことを言うタイプではないんですが、(彼女は)自分の半身的な感覚がすごくある。年齢も住んでいた場所も違うのに、波長があって好きなものが似ていて、って今までなかったこと」(佐竹さん)

「ユーザーを一番知っている存在」

エウレカの広報はペアーズを「ユーザーを一番知っている存在」であるとする。本人すらも気づかない潜在的なニーズに届かせる高レベルのマッチングを可能にするのは、以下の3つだ。

(1)詳細なプロフィール:年収・結婚歴・子どもの有無などだけではなく、「結婚への意思」「子どもが欲しいか」「家事・育児(への考え方)」「初回デート費用」などまで入力可能。「合コンでは聞ききれないファジーな項目までカバーしている」(エウレカ広報)


(2)コミュニティ:ユーザーは10万件以上のコミュニティに自由に所属でき、自分で作ることもできる。例えば前述の佐竹さんは趣味に関するものだけでなく「髪の毛が綺麗な人が好き」「歯並びが綺麗な人が好き」などのコミュニティにも所属していたという。


(3)ユーザーの行動履歴データ:例えば、朝にアプリを開く人同士をつなげたり(相関性を見出したり)と、ログインのタイミングを始めとしたユーザーの行動履歴もマッチングに活かされている。

「今、結婚しなくなっている、草食化していると言われてますけれど、みんな合理的になっているだけなんだと思うんです。普段から検索してほしいものにリーチできる生活をしている分、そうじゃないものに対する拒否感が強いだけ」(エウレカ広報)

前述の西川さんは「(マッチングアプリは)競い合うよりはまだ市場をみんなで広げていくフェーズ。ユーザーも複数のアプリに登録するので、一社総取りではない」とみる。

エンジェル投資家としての西川さんが考えるマッチングアプリの次の大きな市場は、「子育てもひと段落して、もう一度新しいパートナーを見つけたい」50代以上の層だという。

マッチングアプリが可能にする多様な出会い。これからは、どんなテクノロジーが次世代の愛を育むのだろうか。

編集部より:一部表現を改めました。 2018年2月26日 13:30

(文・写真、西山里緒)

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