銃規制に高校生立ち上がる—— 20年弱で15万人の生徒が学校の銃事件経験

高校生がついに立ち上がった。

「ヘイ、ヘイ、ノー・ガン!」

「NRA(全米ライフル協会=銃ロビー団体)は、失せろ!」

2月21日夕方(米東部時間)、気温が26度まで上がった首都ワシントンで、Uberに乗っていると甲高い声が聞こえてきた。見ると、50人ほどの高校生が連邦議会議事堂(キャピトル・ヒル)を目指して足早に歩いている。車を飛び降りて、写真を撮った。そのうちの1人の高校生はこう叫んだ。

「ワシントンエリアの高校生が集まって、議事堂前で、銃の規制を訴えるデモをします」

銃規制を求めてデモ行進する高校生

フロリダ州パークランドの高校での乱射事件を受けて銃規制を求める高校生らが全米で声を上げ始めた。

撮影:津山恵子

2月14日、フロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で17人が犠牲になった銃乱射事件をきっかけに、高校生のデモが全米で同時多発的に起きている。

世界が私たちの声を聞くべき

2月19日の祝日「プレジデンツ・デー」には、ワシントン近郊の高校生17人がホワイトハウス前で、地面に横たわるダイインを3分間行って抗議し、数百人の高校生がそれを見守った。17人はフロリダ州の事件の犠牲者数、3分は銃を購入するのにかかる平均時間だ。

「恥を知れ!」「NRA、今日は何人の子どもを殺したんだ?」

ワシントン・ポストによると、一部の高校生がホワイトハウスに向かってこう叫んだ。この時、トランプ大統領はフロリダ州に滞在、銃乱射事件の現場から64キロしか離れていないところで、ゴルフをしていたと同紙は伝えた。

このダイインを計画した「Teens for Gun Reform」のホイットニー・ボーエン(16)ら3人に、話を聞いた。

ホイットニー・ボーエン(16)ら3人

ソーシャルメディアを駆使しながら銃規制強化のために立ち上がった左からホルス・カトラー(17)、ホイットニー・ボーエン(16)とエレノア・ヌフタレン(16)。

撮影:津山恵子

「フロリダ州の事件はソーシャルメディアで知って、同じ年頃の子たちが犠牲になったので、絶望的になりました。起きてほしくはないけれど、自分の学校か近所で、同じことが起きるかも知れない。2日後には、Teens for Gun ReformのFacebookページを立ち上げて、19日のダイインへの参加を呼びかけました」(ボーエン)

Facebookページを立ち上げたことで、メディアやセレブがソーシャルメディアでダイインについて拡散。口コミも手伝って、当日数百人の参加につながった。

「私たちは18歳以下で投票はできないけど、私たちの声を世界が聞くべきだと思ったのです」(エレノア・ヌフタレン、16)

SNSでシェアされた高校生のビデオ

銃規制は、NRAなど銃保持の支持派と、規制強化派が真っ向から対立する深刻な問題だ。彼女たちは今、何を訴えたいのか。

「キャンディを買うみたいに3分で銃が買えるのは、クレイジーです。全米で、銃購入の際の身元調査をしてもらいたい。今回の事件の容疑者、ニコラス・クルーズ(19)は、暴力的な写真をソーシャルメディアに投稿して、連邦捜査局(FBI)に通報もされていたのに、銃を購入していました」(ホリス・カトラー=17)

クルーズ容疑者は、Instagramに銃や殺したカエルの写真を載せていたことが事件後に分かり、Facebookなどソーシャルメディアが、投稿の管理を徹底しなかったと批判を浴びている

一方、ボーエンら高校生が、学校での銃関連事件で初めて立ち上がったのは、ソーシャルメディアの威力でもあった。

事件直後、遺体や血の海が映り、悲鳴や泣き声が聞こえる教室のビデオや写真がシェアされたこと、そして、ダグラス高校の生徒が「大人は、子どもたちを守る義務を放棄している。もう黙ってはいない。高校生でも声をあげよう」と訴えたビデオが拡散したためだ。

「ビデオには、とても共感した」とボーエン。

事件後に否決された銃規制法

寝転んで抗議する学生

ワシントンでは多くの高校生たちが銃規制を訴える行動に参加した。

REUTERS TV/ via REUTERS

一方でボーエンらは、自分たちの身の安全のためという理由で、通っている高校名を明かしてくれなかった。ダグラス高校で声を上げた生徒らがソーシャルメディアで、お金を払われて犠牲者を演じる「クライシス・アクター」だという「陰謀説」を保守派が広めているからだ。

ダグラス高校の生徒は2月20日、フロリダ州知事や州議会議員に銃規制を訴えるため、同校から640キロ離れた州都タラハシーにバスで向かった。メディアがバスに同乗し、その様子を伝えたが、同じ頃、同州議会では、対人殺傷用銃器の購入を規制する法律を否決した。クルーズ容疑者やほかの銃乱射事件犯人が、短時間に多くの弾丸を発射できる対人殺傷用銃器を使ったことが、問題視されているにも関わらずだ。

一方で、全米では高校生だけでなく、銃規制の声が過去最大の高まりを示す数字も出ている。キニピアック大学の調査によると、有権者の66%が銃規制の強化に賛成で、同調査が始まって以来最も高かった。反対は31%だった。同時に、銃所有者の50%が規制強化に賛成していることも明らかになった。

トランプ大統領は、銃が購入できる年齢を18歳から21歳に引き上げること、購入の際の身元調査を強化する考えを示している。

15万人の生徒が構内の銃関連事件を経験

銃撃事件後の高校生によるデモ

「次は私かもしれない」。生徒たちにとって学校での銃被害は他人事ではない。

REUTERS/Kevin Lamarque

しかし、トランプ氏は2月21日、銃乱射事件の犠牲者家族や高校生との会談で、教師を銃で武装させるアイデアを披露し、批判を浴びた。トランプ氏も共和党も、NRAによる巨額の政治献金に縛られている。このため、オバマ前大統領も、全米で身元調査を義務付ける政策で頓挫した。今回の事件で、具体的な銃規制が連邦議会で可決するのかは、共和党が多数派の中、微妙な見通しだ。

「NRAから1セントも受け取らないと、今日ここで言えますか?」

同日、事件があったパークランドで開かれた集会で、高校生がマルコ・ルビオ上院議員(共和党、同州)に詰め寄った。ルビオは、「私は、私の政策や立法に賛成してくれる人たちを応援します」と答えるにとどまっている。

ワシントン・ポストの調べによると、1999年に12人が犠牲になり有名になったコロンバイン高校銃乱射事件以来、170の小中高校で、15万人もの生徒が、校内の銃関連事件を経験している。

事件から1カ月後の3月14日午前10時には、銃の規制を訴えている同高の生徒の呼びかけで、教室を17分間出て授業をボイコットする抗議行動も予定されており、全米の多くの高校生が同調する。

(文・津山恵子)

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