ホームレスから年収1000万円以上に、サンフランシスコのNPOの取り組み

パソコンで作業する女性

Melia Robinson/Business Insider

サンフランシスコの中で、テンダーロイン地区ほど貧富の差が顕著に表れている場所はない。

ここでは、Uber、マイクロソフト、Twitter、スクエアなどの有名なテック企業のオフィスの外でホームレスが寝ている。注射針、ゴミ、排泄物などが、世界で最も貧しいスラム街と同じくらいに散乱している。麻薬の密売人が、テック企業の従業員がベンチャー企業が支援するカフェでコーヒーを買う隣で取り引きしている。

テックブームによる経済成長の恩恵が全ての人に行き渡っているわけではないことがはっきり分かる。

2015年、元ホームレスの男性がコード・テンダーロイン(Code Tenderloin)を立ち上げた。収監され、権利を奪われていたホームレスに職業訓練および基本的なプログラミングのスキルを身につけさせ、テック業界での就職を支援するNPOだ。

報告によると、コード・テンダーロインに参加した300人のうちの約半数は卒業後、仕事に就いている。なかには、マイクロソフトやLinkedInなどの企業でソフトウエアエンジニアやカスタマーサービス技術者として働き、1000万円以上の収入を手にしている人もいる。

コード・テンダーロインの参加者を追ってみた。いろいろなことを学んだ。

毎朝、テック企業で働く人たちはノートPCが入ったカバンをぶら下げ、代替食品のシェイクを手にし、EVスクーターに乗ってテンダーロイン地区にやってくる。

ツイッターオフィス

Justin Sullivan / Getty Images


長年ホームレスが住んでいるエリアを通り抜けなくてはならない人もいる。

テンダーロイン地区の光景

Robert Galbraith/Reuters


テック業界はこの10年で、テンダーロイン地区および周辺エリアに1万人の雇用を生み出した。だが、雇用がホームレスにおよぶことはほとんどない。

サンフランシスコのマーケットストリート。

サンフランシスコのマーケットストリート。テンダーロイン地区の南側の境界線となっている。

Melia Robinson/Business Insider


コード・テンダーロインのディレクター、ビクトリア・ウエストブルック(Victoria Westbrook)は、犯罪歴があったり、住居を構えるだけの経済力がない場合、ここで仕事を見つけることはとても難しいと語った。

コード・テンダーロインの様子

Melia Robinson/Business Insider


彼女自身が経験している。彼女は20年にわたり、ほぼ毎日、覚せい剤のメタンフェタミンを使っていた。有罪判決を受け、2016年に服役を終えた。

使用済みの注射針の回収ボックス

テンダーロイン地区に設置されている2つの簡易トイレの横には、使用済みの注射針の回収ボックスがある。

Stephen Lam/Reuters

服役を終えたあと、ウエストブルックはサンフランシスコの社会復帰訓練所に入った。入所者は許可なく外出することはできない。

毎日、部屋の中で本を読んで過ごした。外へ出るのはレストランで配膳係として働くときだけ。同じく服役歴のある友人が、コード・テンダーロインに申し込むことを勧めたとき、彼女は週に何度か外へ出られるならと話に飛びついた。

「ろくでもない話のように思えた。でも、外に出られるなら何でもよかった」

コード・テンダーロインで、彼女は4ページあった履歴書を1枚にまとめ、ネットワーキング・スキルを学び、創設者デル・シーモア(Del Seymour)や他の仲間と長い時間、話をした。彼女は「過去が自分を作っている。だが自分がそうしない限り、過去は自分を決めつけない」ことを学んだ。

創設者のデル・シーモア。

創設者のデル・シーモア。

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今では、コード・テンダーロインは1年中、開催されている。参加者はサンフランシスコ全域からやって来る。一時的な収容施設で暮らす人もいれば、以前のウエストブルックのように社会復帰訓練所で暮らす人もいる。

コード・テンダーロインの様子

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「中毒状態の人、あるいは手に負えないほどの精神的、行動的な問題を抱えていない限り、誰でも受け入れる」とウエストブルック。

コード・テンダーロインの様子

Melia Robinson/Business Insider

コード・テンダーロインは、応募者が改善のために必要としている支援を探すサポートも行う。

授業は週に3、4回、数時間にわたって行われる。18歳から24歳が参加する授業では、参加者は「エレベーターピッチ」を練習した。手短に自己PRを行う訓練だ。

コード・テンダーロインの様子

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「ゼン」と呼ばれる生徒が、セールスフォースでプロダクト・マーケティングマネージャーを勤めるボランティアのサンジュナの前に座った。ゼンは自分が関心を持っている分野、マーケティング、広告、AIについてエレベーターピッチを始めた。彼はいつかセールスフォースで働きたいと語った。

コード・テンダーロインの様子

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「関心を持っている分野が多すぎる」ため、ピッチは要領を得ないものだったとゼンは振り返る。サンジュナは、テック業界で働く人と会い、彼らが仕事のどんなところに興味を持っているかを聞くことで、キャリアについてより明確にできるのではないかと提案した。

コード・テンダーロインの様子

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参加者全員がテック業界で働きたいと考えているわけではない。

コード・テンダーロインの様子

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最年少の参加者の1人、ケンヤの目標は理学療法士。セールスフォースの従業員は、個性を生かしてエレベーターピッチをもっとメリハリのあるものにするよう励ました。

コード・テンダーロインの様子

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コード・テンダーロインは、地域社会に貢献するために、卒業生を雇用するようテック企業に申し入れている。卒業生はセキュリティー、カスタマーサービス、メンテナンスなどのエントリーレベルの職に就いている。

コード・テンダーロインの様子

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プログラムの後半になると、テック企業は参加者をオフィスに招き、さらに高度なコーチングを行う。セールスフォース、GitHub、Twitterの従業員がこれらのセッションを取りまとめる。

コード・テンダーロインの様子

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Twitterでは、ソフトウエアエンジニアのグループが、彼らがTwitterで働くようになるまでの経緯を伝えた。彼らの話で、テック業界で働くまでの経緯は様々なことが分かった。

コード・テンダーロインの様子

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仕事に応募する際、「ここの人たちは、正面からアプローチできるわけではない」とウエストブルックは語った。彼らの経歴は多くの場合、快く迎え入れられるものではない。

コード・テンダーロインの様子

Melia Robinson/Business Insider

以前、卒業生の1人がシリコンバレーの大手企業から仕事のオファーを受けた。だが彼女の犯罪歴を知り、その企業はオファーを取り消した。

カリフォルニア州には、企業が雇用を決める際に、雇用主が逮捕歴や判決記録を使用することを規制する法律がある。女性は地元の労働支援団体へ行き、企業に採用を再検討させた。2017年、彼女はプロダクト・サービス・アドバイザーとして、時給17ドル50セントで働き始めた。2カ月後、彼女はチームのMVPに選ばれた。

コード・テンダーロインは、通常であれば選考対象とならない求職者にとって、企業への新たなチャンスとなっているとウエストブルック。コード・テンダーロインはパートナー企業に働きかけ、求職者を推薦する。

パソコンで作業する女性

Melia Robinson/Business Insider

Twitterやドルビー(Dolby)などのテック企業が、コード・テンダーロインの資金の大部分を提供している。現在、最も多くの資金を提供しているのは、ボルチモアに拠点を置くWar Horse Cities。


2015年以降、コード・テンダーロインから100人以上が職についた。そのうちの35%は卒業後12カ月経っても同じ職場で働いていた。

コード・テンダーロインの様子

Melia Robinson/Business Insider

なかには、著名なテック企業で高額を得るようになった人もいる。

2017年1月、ホームレスだったプレストン・ファン(Preston Phan)はコード・テンダーロインに通い始めた。LinkedInに訪問した際、ファンは従業員の1人と意気投合し、彼に勧められた同社の実習制度に応募した。4月、彼は見習いのソフトウエアエンジニアとしてフルタイム勤務を始めた。年収は11万5000ドル(約1200万円)、住まいはサニーベールにある本社の近くの社宅。

ウエストブルックは、さらに実績を伸ばしたいと考えている。より多くの資金を集め、卒業後もメンターが長期的な支援を行う卒業生プログラムを作りたいと彼女は考えている。

コード・テンダーロインの様子

Melia Robinson/Business Insider


テンダーロイン地区にあるTwitterのコミュニティーセンター「NeighborNext」への訪問は、参加者がプログラムの基本的な原理を使って迷路を完成させるゲームにチャレンジして幕を閉じた。

パソコンで作業する女性

Melia Robinson/Business Insider


何人かは初めてプログラミングに触れた。これが新たなキャリアへの足がかりとなるかもしれない。

コード・テンダーロインの様子

Melia Robinson/Business Insider


(敬称略)

[原文:San Francisco's homeless are getting six-figure jobs in a gritty neighborhood that's been overrun by tech companies

(翻訳:まいるす・ゑびす、編集:増田隆幸)

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