時速1000キロのハイパーループCEO:初商用ルートはアジアか中東か —— 日本企業も参画

減圧したチューブの中を超高速で走らせる次世代輸送システム、ハイパーループ(Hyperloop)の開発を進めるハイパーループ・トランスポーテーション・テクノロジーズ(Hyperloop Transportation Technologies=HTT)は、2018年8月ごろまでに同社にとって初となる商用ルートの構想を発表する見通しだ。

最有力候補地はインド、インドネシア、または中東だという。HTT最高経営責任者(CEO)のダーク・アールボーン(Dirk Ahlborn)氏(41)がBusiness Insider Japanの取材で明らかにした。

ハイパールーフ超高速輸送システム

Hyperloop Transportation Technologies

来日したアールボーン氏は2018年2月23日、「現在、複数の国(の政府)と協議を進めている。初の商用ルート(Commercial Line)は6カ月以内に公表できるのではないだろうか」とした上で、「インドネシアやインド、中東の国々がメインエリアだ。これらの国・地域では、多くの人が200、300キロメートル離れたエリアから都市の中心部へとやってくる。ハイパーループを利用することで、たった10分でその距離の移動が可能になる」と述べた。

ハイパーループは、減圧されたチューブの中を列車が非接触で、空気抵抗を受けずに超高速で運行させる次世代の輸送システムとして世界の注目を集めている。約5年前にイーロン・マスク氏が構想を発表すれば、英ヴァージングループ(ヴァージン航空を傘下に置く)のリチャード・ブランソン会長が2017年にハイパーループ・ワン(Hyperloop One=本社:米カリフォルニア州)にスポンサーとして参画。

ハイパーループ・ワンがアメリカやインド、イギリス、カナダなどでハイパーループ構想の検討を進めると、ライバルのHTTは2018年2月、オハイオ州クリーブランドとイリノイ州シカゴの313マイル(約504キロメートル)を結ぶ構想の実現可能性を調査すると発表している。実現すれば、時速約700マイル(約1100キロメートル)の超高速次世代輸送システムは、わずか30分弱でアメリカ中西部の2都市間の移動を可能にする。

「最大の課題はテクノロジーではない」

HTT社長のダーク・アールボーン氏

ハイパーループはエネルギー効率の高い次世代交通システム、と強調するダーク・アールボーンCEO。

「最大の課題はテクノロジーではない。ハイパーループのコンセプトは以前から存在している。州当局や政府と共に進め、新しい法律やルールを作ることが現段階で一番重要なこと」とアールボーン氏。

「現在の公共交通の問題の一つは、政府の補助金、いわば税金に依存していることだ。にもかかわらず、アメリカの鉄道インフラは老朽化の問題を抱えているし、ドイツにでも多くの補助金が使われている」

現在までに行われてきた多くの調査を基にすると、ハイパーループの建設コストは1キロメートルあたり約2000万ドル(約21億円)。これは経済的に十分可能な水準だと、アールボーン氏は言う。また、税金を使わずにハイパーループを運営するためには、官民が連携する*PPPの形態が望ましいと、強調した。 従来の高速鉄道は、高速になればなるほど、より多くのエネルギーを消費するが、空気抵抗を受けないハイパーループを利用すれば、運営維持費は飛躍的に削減できると言う。

PPP: パブリック・プライベート・パートナーシップ(Public Private Partnership)の略。公民が連携して公共サービスの提供を行うスキームのこと。

参画する日本企業とアブダビでの調査

ハイパーループのカプセル

Hyperloop Transportation Technologies

HTTは、世界中の800人以上の専門家や47以上の組織・企業を開発チームに招き入れ、事業を進めている。1週間に最低10時間を開発に充てることと、ストックオプションの見返りを条件に従事しているという。

日本の大手企業1社はパートナーとして参画している。また、その他にも複数の日本の企業と協議を進めている」とアールボーン氏。「また、韓国では、複数の企業と政府がコンソーシアムを組成してハイパーループの調査を進めている」と加えた。

HTTが現在、最も重点を置いているエリアはどこかと尋ねると、アールボーン氏はアブダビ(アラブ首長国連邦を構成する首長国)を挙げた。アブダビの運輸当局と共同で、事業化調査を進めているという。

HTT社長のダーク・アールボーン氏

ベルリンで生まれ、イタリアに15年住み、家族と共に渡米。ダーク・アールボーン氏は多国籍の専門家たちとハイパーループの事業化を進める。

ベルリン生まれのアールボーン氏は、幼少期には考古学者になる夢を持っていた。ドイツの高校に通いながら銀行で働き、高校を卒業するとイタリアに移り住んだ。イタリアでは掃除用品の訪問販売を経験した後、代替エネルギーを取り扱う企業を自ら創業した。15年のイタリア生活を終えると、家族と共に渡米。アメリカ生活は9年になるという。

「なぜ考古学者になりたかったのか理由は定かでないけれど、違う文化に対する興味が強かった」とアールボーン氏。「HTTは、違う国籍や文化を持つ専門家やエンジニアたちをつないで、大きなプロジェクトを進めている。子どもの頃の夢とは違うが、共通点はあるのかもしれない」と語った。

(文・佐藤茂、写真・今村拓馬)

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