8.5倍に成長した結婚式専用インスタ「#プレ花嫁」——超細分化する#、バブルの行き着く先は…

結婚を決めたら、まずは何をしますか? 結婚式専用のインスタグラムのアカウントをつくる。そんな動きが徐々に広がっている。「#2018年春婚」と検索すれば、投稿数は2万3000件近く。インスタは、「#卒花」さんと「#プレ花嫁」さんの情報共有の場になっている。

インスタで事前リサーチ→終了後はメルカリで売却

友人に秘密にしたい結婚式のサプライズ。アイデアの源は、インスタにあふれているようだ。

2016年7月に挙式をした会社員の女性(31)は、挙式の数カ月前、インスタグラムで結婚式専用のアカウントを作り、「#2016年夏婚」のハッシュタグを付け、結婚式の準備を発信し始めた

アカウント開設の目的は、式場で使う小物を手作りするための情報収集

女性は、ウェルカムボード、ピアス、両親への贈答品、座席表、芳名帳、招待状、フォトツリーなどを手作りした。式場をお願いすれば、数十万円かかることがある小物を、数万円に抑えるなど、ゲストの食事を豪華にした。

「#くるくる席次表」。紙をスティックのように丸めたイメージに合った席次表を、ハッシュタグ検索で見つけて、投稿者にDM(ダイレクトメッセージ)を送り、材料の調達先や作り方を聞いた。ウェルカムボードも、インスタの情報をもとに、土台とペンを「100均」で買って、自分たちでペンキを使って土台を白っぽく塗り、やすりをかけて、ナチュラルなイメージに仕上げた。

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友人には(披露パーティーの中身を)内緒にしたかったんです。直接知っている人でなく、同じことをしている人を探すのに、インスタは一番楽だった」。夏に挙式をする人も少なく、インスタに情報を求めた。「季節によって、式場の装飾も違う。夏に結婚式をした先輩花嫁をインスタで探し、参考にしました」と女性。

ケーキに飾るウエディング用の人形は、インスタで気に入った物を見つけ、雑貨店で同じ物を買った。式の後は、「メルカリで売った」という。

平日の夜や土日の空き時間にインスタで検索して、手作りをする妻に、夫は「そんなのあるんだ。女性はいろいろ大変だね」と話していたが、小物の半分は夫が作ってくれたという。

「#プレ花嫁」→「#今日で卒花」→「#卒花」

女性は、自身のアカウントで、式の準備から式の当日、ハネムーンの様子までを投稿した。準備段階は「#プレ花嫁」、結婚式当日は「#今日で卒花」と投稿し、#プレ花嫁の卒業を宣言した。

自身のインスタのアカウントのフォロワーは約280人。

女性は約8カ月間、更新をしていないが、「ウェルカムボードは、どうやって作りましたか」「二次会のドレスはどこの?」という質問がDMなどで寄せられる。モルディブに行ったハネムーンの投稿にも、「充電器は持っていきましたか?」と今も聞かれることがあるという。女性は「実は、私も行く前は同じことをしていました」と「#卒花」のモルディブ経験者に質問していた。

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#プレ花嫁は2年間で8.5倍

式場探しの口コミサイト「ウエディングパーク」によると、インスタグラム上での「#プレ花嫁」の投稿数は2016年から約2年間で、8.5倍近く増えた。投稿数は、2016年1月が33万件、2017年3月が156万件、2018年2月が280万件。

#プレ花嫁の前身は、結婚式の準備を紹介するブログだった。2013年ごろから、ブログをきっかけにしたオフ会のような、プレ花嫁会が開かれるようになった。20人ほどが集まり、結婚式で使ったエンドロールを流したり、ウエディングのアイテムを譲ったり。

「プレ花嫁」のワークショップや「卒花」(式を終えた花嫁)から学ぶウエディングフェアを企業が主催するようになった。式場によって、装飾の具合や持ち物が変わるため、「アニ嫁会」(アニヴェルセルというゲストハウス)やパレスホテルの会、外資や海外の挙式場の会など、式場別のオフ会もできていった。

プレ花嫁

2016年1月から2017年3月までで、「#プレ花嫁」の投稿は、約5倍に増えた。これ以降も、投稿数は増加している。

出典:ウェディングパーク

1年で散る#プレ花嫁インフルエンサー

「#プレ花嫁」の出現は、2014〜2015年ごろ。インスタが日本で利用され始めたことがきっかけ。投稿数が急激に増え、フォロワーが1万人を超える花嫁が登場し、ドレスのプロデュースも手がけるほど、人気が出た。#プレ花嫁のインフルエンサーのキャスティング会社もでき、結婚式関連のイベントにインフルエンサーを派遣しているという。

ただし、課題もある。#プレ花嫁のインフルエンサーは「式が終わってから1年くらいでご卒業される方が多い」(同社担当者)ため、最近はトップインフルエンサーは生まれにくい。

「#」が急増し季節や小物で細分化

wedding

#プレ花嫁の変化を分析する菊地さん。

「#プレ花嫁」の投稿数の急増に伴い、「#プレ花嫁が本来の役割を果たせなくなっている」と、ウエディングパークのブランドマネージャーの菊地亜希さん(34)は指摘する。そこで新たに登場したのは、「#2018年春婚」「#2018226チーム」など、季節や日付を限定したコミュニティー「花嫁さんは、式が同じ時期の人とつながることで、自分の結婚式の準備が進んでいるか、遅れているか知りたい」と菊地さんはみている。

「#幸せバトン」「#譲ります」もトレンドの一つ。結婚式で人からもらった古い物や、借りた物などを身につけると幸せになれるというジンクスがあり、インスタ上で「卒花」が「プレ花嫁」に小物を譲る現象が起きている。「ちょっとしたメルカリみたいですね」と菊地さん。150本のフォトプロップス(撮影用の小物)をインスタ上で買ったという人もいた。菊地さんは、「今後は、エリアや式場ごとなどに、#が細分化していく」と予測した。

もてなすアイデアをインスタで

なぜ、ウエディングに関してのブログやインスタの情報収集が根付いたのか。

ウエディングパークが約500人を対象に「結婚式で重視すること」をアンケートで聞いた結果、「予算」「家族の絆を感じる」「にぎやかさ」などの項目の中で、「ゲストをもてなす、感謝の気持ちを伝える」という項目が、もっとも多くの回答を集めた。2015年と2017年の同じ調査を比較すると、2017年はより多くの人がこの項目を選択した。

菊地さんは「結婚式の内容を目新しくすることで参列者をもてなそうと、インスタでアイデアを集めているのでは」と分析する。また結婚式の口コミサイトも増え、「ご祝儀を出す立場の参列者の評判も見えやすくなった」と説明する。

台頭するインスタを駆使しながらも、花嫁たちはそれにとどまらない。雑誌もネットも総合的に活用して、情報を収集する気合いの入れぶりという。

業界は、#プレ花嫁をチャンスに、結婚式の需要増に期待する。

同社の調査によると、今では入籍をしてから結婚式までに1カ月以上の期間を空ける人が8割を占め、結婚式の準備の期間は十分にある。

一方、「結婚式をする人は(入籍した人のうち)約半数しかいないと言われている」と菊地さん。「花嫁がインスタ上で結婚式を発信することで、業界としては、式を挙げる人が増えることを期待していると考えています」と話していた。

#2019年は、春夏秋冬の全ての季節の「#2019年○婚」の投稿が、50〜600件を超える。さらには「#プレママ」も盛り上がっている。タイムラインには、数多くの人生の一大イベントと、またそれを共有したいお願いが色濃く詰まっている。

(文・写真:木許はるみ)

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