74億円と2020億円、2社をグーグルと製薬大手に売却した起業家のアドバイス

フラティロンの創業者の2人

Saskia Uppenkamp

  • 32歳にしてナット・ターナー(Nat Turner)はすでに、1つめの企業を7000万ドル(約74億円)以上でグーグルに、2つめの企業を19億ドル(約2020億円)で大手製薬企業ロシュ(Roche)に売却した
  • ターナーと、31歳のザック・ウェインバーグ(Zach Weinberg)は2012年、がん解析データソフトなどの開発を行うフラティロン・ヘルス(Flatiron Health)を共同で創業。
  • フラティロンは当初、資金調達の準備を進めていたが、最終的にはロシュへの売却を決めた。ロシュはかねてから同社に投資していた。
  • 「シリアル・アントレプレナー(連続起業家)」を自認する2人は売却後もフラティロンに残る。「フラティロンは我々にとって普通の企業ではない」とターナーはBusiness Insiderに語った。

ナット・ターナーは、今回の話は簡単に実現したわけではないと指摘した。

ターナーは、フラティロン・ヘルス(Flatiron Health)のCEO。フラティロンは、スイスの製薬大手ロシュが2月16日(現地時間)に19億ドルでの買収に合意した企業、その評価額は21億ドルにのぼる。こうした大型買収は、シリアル・アントレプレナーであり、フラティロンの共同創業者であるターナーとザック・ウェインバーグにとっては2度目のこと。2人は2010年、1つめの企業(Invite Mediaという広告企業)を7000万ドル以上でグーグルに売却している

ニューヨークに本社を置くフラティロンは、がん患者がどのような投薬治療を受け、どのような効き目があったかといった臨床データを収集している。

そうした情報をもとに、臨床試験においてではなく、病院やがんセンターといった「現場」において、投薬治療がどのような効果を発揮しているかについて医療関係者に理解を深めてもらうこと、それが同社の目的だ。

資金調達から買収合意へと心変わりした経緯

ロシュ・グループは、様々な診断技術から、がん治療薬の開発まで、数々の事業を展開している。ターナーによると、ロシュ傘下のバイオベンチャー企業、ジェネンテック(Genentech)は、フラティロンの創業後すぐの2013年頃には同社のクライアントだった。その後2015年末に、ロシュはフラティロンへの1億7500万ドルの投資を主導した。

2017年9月頃、フラティロンはヘルスケア業界に流れ込んでいる資金を獲得すべく、新たな資金調達を検討する一方で、買収のチャンスがあれば、それを機に企業を成長させようと考えるようになった。

「とても注目されていた」とターナーはBusiness Insiderに語った。投資の申し出は何件もあった。

「戦略的な資金調達や他の手段を考え始めたのは、優秀な人材の確保とグローバル展開が不可欠だったため」とターナー。「遺伝子データなどに関して、グローバル規模なデータにアクセスする必要があった」。

ロシュ・ファーマシューティカルズ(Roche Pharmaceuticals)のCEOで、フラティロンの取締役を務めていたダニエル・オデイ(Dan O'Day)と会議を重ねたのはまさにそんな時だった。そして最終的に、ロシュによる買収が合理的という結論に達した。

「ロシュは資金だけでなく、はるかに多くのことを提示してくれた。資金は売却を決めた要因の1つだが、それは他の手段でも実現できたこと。ロシュへ売却した方が得るものがずっと大きかった」

フラティロンは、がん専門医や研究者、製薬企業と仕事をしていたため、ロシュへの売却においても譲れないことがあった。例えば、他の製薬企業と協力できる余地を残しておくことや、フラティロンを独立した法人組織とし機密情報が漏洩しないようにすることなどだ。

「我々にとって普通の企業ではない」

最初の企業をグーグルに売却したあと、ターナーとウェインバーグは暇を持て余した。1年も経たないうちに2人は起業を考え始めていた。それが2012年に創業したフラティロンだ。

今回、2人はそのままフラティロンに残る。

「我々は紛れもなくシリアル・アントレプレナー。だが、フラティロンは我々にとって普通の企業ではない」とターナーは語った。

もし今回の買収が、前回のような展開になっていれば話は違っていただろう。1つめの企業はグーグルに完全に統合された。フラティロンは独立した事業体として運営されるため、2人は今後も同社を成長させることができる。

「ザックと私には、自分たちの思うように企業を作り上げていく自律性が欠かせない。もちろん、この先どうなるかは分からない。我々はここで実績をあげていくつもり。そして何よりも、我々はミッションを続けられることにワクワクしているし、やり続けていくつもりだ」

ターナーは、同じようなゴールを目指す起業家にアドバイスをくれたが、その内容は売却などの取り引きをまとめることとはほぼ無関係。

「我々は、買収されることを目的にフラティロンを作ったわけではない。いつも言っているように、売却するために企業を作ってはいけない。何よりもまず、企業を築き上げることが重要」とターナー。

「企業をどうやって売却するかを考えてはいけない。企業を築き上げること、そして目指す目的に専念すべき」

誰かが買収したいと考え、タイミングが適切であれば、その時はうまく行く。

「お金を集めることは、ビジネスモデルではない」とターナーは最後に付け加えた。

(敬称略)

[原文:Startup cofounders who sold their first startup to Google for $70 million and their second for $1.9 billion reveal how they built wildly successful businesses twice

(翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:増田隆幸)

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