ネットメディアの信頼性向上のため——「インターネットメディア協会」設立準備会が発足

フェイクニュースにどう対抗するか——。

「トランプ候補をフランシスコ・ローマ法王が支持した」などといったフェイクニュースがソーシャルメディア上で拡散した2016年のアメリカ大統領選以降、フェイクニュースが大きな社会的課題となっている。

そうした中、2月26日、インターネットメディアの信頼性向上を目指そうと、「インターネットメディア協会」(JIMA、仮称)設立に向けた準備会が発足した。

「インターネットメディア協会」設立準備会

「インターネットメディア協会」準備会発起人はスマートニュースの藤村厚夫執行役員ら計9人。

準備会では、コンテンツプロバイダやプラットフォームなど、インターネットメディアが参考にすべきガイドラインを作成し、6月頃までに正式に発足を目指すという。

発起人は以下の9人。現時点では個人としての参加で、正式発足のタイミングで媒体としての参加になるという。

小川一氏(毎日新聞社取締役・編集編成、総合メディア戦略担当)

長田真氏(DIGIDAY日本版編集長)

工藤博司氏(J-CASTニュース編集委員)

阪上大葉氏(現代ビジネス編集長)

竹下隆一郎氏(ハフポスト日本版編集長)

藤村厚夫氏(スマートニュース株式会社執行役員メディア事業開発担当)

古田大輔氏(BuzzFeed Japan創刊編集長)

楊井人文氏(GoHoo編集長)

山田俊浩氏(東洋経済オンライン編集長)

BuzzFeed Japan創刊編集長の古田氏は設立経緯について、「WELQ事件やアメリカ大統領選におけるフェイクニュースの話題などを受け、ネットメディアでの情報発信のやり方などについて議論する場がないことに気付き、我々自身が主体的にそういう場を作ろうと1年以上前から有志で議論してきた」と説明。また加盟団体は、インターネット専業のメディアだけではなく、新聞、テレビ、雑誌などネット上で情報を発信するメディアやプラットフォームも対象にすることを強調した。

WELQ事件:2016年DeNAが運営していた医療系メディア「WELQ(ウェルク)」が不正確な医療情報を提供していたことが問題視され、WELQは運営停止となった。

媒体・情報の質を判断する基準を設定

一方、記事の裏付けの弱さや記事の内容の書き換えについては、既存の大手メディアも例外ではない。2018年に入ってからだけでも、産経新聞が裏付けの不十分な記事で沖縄の地元紙を批判し、共同通信は京都大学iPS細胞研究所で発覚した不正論文問題に、山中伸弥所長が関与していたかのように報じた後、訂正や修正の説明もなく、全面的に記事を書き換えた。

こうした事態について、東洋経済オンライン編集長の山田氏は、「急に記事を取り下げたりするのではなく、この記事はこうした理由で1週間経ってから公開停止します、と根拠を示すことが大事だ」と指摘した。

BuzzFeed Japanの古田氏の元にはWELQ事件以降、インターネット上で情報発信する際のガイドラインがあるなら教えてほしいという相談が寄せられたという。

JIMAでは、メディアの運営元を示す問い合わせ窓口を用意する、訂正や公開停止の方法を統一するなど、基本的なガイドラインを準備し、読者が良質な媒体・情報を判断する基準を設定する。ただし、「ネット上の警察になるつもりは全くなく、ファクトチェックを行うファクトチェック・イニシアチブ・ジャパン(FIJ)のような活動とも異なる。現在検討しているガイドラインは、著作権に関するものや、掲載した記事訂正のやり方や相談先、メディアの連絡先といった基本的なもの」になる可能性が高いという。

一方、講談社で行われた記者会見には、読売新聞やThe Wall Street Journalなど、大手メディアの記者も来ていたが、発起人に名を連ねている大手メディアは毎日新聞取締役の小川氏のみ、日本最大のニュースプラットフォームであるYahoo!ニュースも参加していないことに対して、実効性があるのか疑問の声も挙がった。

アメリカでは、Facebookが2018年1月19日、「信頼」できる報道機関をランク付けすることを発表するなど、プラットフォームとの議論は欠かせない。

JIMAでは引き続き、大手メディアも含めた各社と相談して加入を呼び掛けていくという。

(文、写真・室橋祐貴)

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