仮想通貨交換業者コインチェックから巨額の仮想通貨が流出した事件から、1カ月が過ぎた2018年2月26日から27日にかけて、利用者らが同社を提訴する動きが相次いだ。
27日までに、2つの被害者の団体が同社に預けていた仮想通貨の返還などを求め、同社などを相手に東京地裁に訴えを起こしている。コインチェック被害弁護団と法律事務所オーセンスがそれぞれ支援する原告団に加わり、訴訟に踏み切った利用者は、計144人となった。さらに、別の訴訟を準備する動きもある。
コインチェック被害弁護団の提訴は請求総額約4億円に
コインチェック被害対策弁護団の第1次提訴時の模様。2月15日撮影。
撮影:木許はるみ
コインチェック被害対策弁護団は27日、同社を相手に、仮想通貨の返還などを求めて東京地裁に第2次訴訟を提起したと発表した。今回、原告に加わった利用者は132人で、請求総額は約4億908万円。会社に加えて、和田晃一良社長ら3人の取締役と、監査役1人も被告としている。
同弁護団は、2月15日に利用者7人を原告として第1次訴訟を提起しており、2回の提訴で計139人が原告となっている。
法律事務所オーセンスでも提訴
記者会見する法律事務所オーセンスの弁護士(右)と、原告の男性(左から2人め)と女性(左)。
撮影:小島寛明
法律事務所オーセンスは、利用者5人が、同社と取締役3人、監査役1人を相手に仮想通貨の返還などを求めて、東京地裁に訴えを起こしたと発表した。提訴は26日付。
訴状によれば、和田社長らは、セキュリティの管理体制を構築する義務があったが、怠った過失があるとしている。仮想通貨の返還が遅れたことで生じた損害の賠償も求めている。
27日には、原告の40代の男性1人と20代の女性1人が、法律事務所オーセンスの弁護士らとともに、裁判所で記者会見した。女性は会見で、「セキュリティを理由にアルトコインの売買と送金を停止している。せめて売却して日本円の引き出しをしたいが、それすらできない。不信感から提訴に至りました」と話した。
コインチェック被害対策弁護団と、法律事務所オーセンスはいずれも、さらに提訴を希望する利用者が集まれば、順次提訴するとしている。
さらに別のコインチェック提訴の準備も
2月26日夜、都内で被害者の相談会を開いた「ITJ法律事務所」の弁護士。
撮影:木許はるみ
さらに、別の訴訟の準備も進んでいる。
ITJ法律事務所は2月26日夜、東京都内で利用者を対象とした相談会を開き、6人が参加した。
コインチェックが取引を停止してから、取引を再開するまでの間に、下落した仮想通貨の価値が損害にあたるとして、同社を提訴する準備をしている。
同事務所によれば、コインチェックに対する訴訟は、少なくとも10人を超える集団訴訟になる可能性があるという。同事務所が支援する「被害者の会」も近く設立される予定だ。
相談会に参加した自営業の男性(58)は、コインチェックにRipple(リップル)を預けている。ネムの流出が発覚した1月26日と2月26日のレートを比較すると、男性が保有するリップルは、日本円換算で約360万円下落しているという。
男性によれば、コインチェックは顧客の数が多いため、「(仮想通貨の)買い値が高かった」という。このため男性は、ほかの取引所から仮想通貨を購入し、コインチェックで売却。月に150万円ほどの利益を得たこともあったという。
(文・小島寛明、木許はるみ、撮影・小島寛明)