ベゾスの野望を体現する「アマゾン村」潜入、噂の“シャボン玉ビル”はAmazon Goの隣!

Amazon Go1号店

Amazon Go 1号店が位置するのは、シアトル中心部の米アマゾン本社キャンパスで通称「HQ1」と呼ばれるエリア。Amazon Goの一番の「お客さん」は社員だというわけだ。

先日、米ワシントン州シアトルで1月22日より一般向けの開放が行われた「Amazon Go 1号店」の体験レポートを公開した。このAmazon Goだが、実は同社が「HQ1」と呼ぶシアトル市内中心部に広がる本社キャンパスに併設される形で存在しており、店舗自体がHQ1を構成するビルの1階スペースを利用しているほか、周辺はアマゾン関連のビルや建物で囲まれている。

同社は現在もなおHQ1の建設を続けており、実際にAmazon Go向かい側の広大な敷地も工事の真っ最中で、間もなく巨大なビルが出現するだろう。またアマゾンは米国内に第2の本社キャンパス「HQ2」を建設する計画を立てており、多くの都市がHQ2候補に名乗りを上げて話題になったことも記憶に新しい。

筆者はアマゾンテイストにあふれたこの周辺エリアを「アマゾン村」と呼んでいる。今回、Amazon Goと合わせてこの“アマゾン村”周辺の様子も紹介しよう。

2016年のアマゾンHQ1の航空写真

2016年時点のアマゾンHQ1付近の航空写真。中央のビル1階にAmazon Goはある。現在周辺の古い建物の取り壊しが始まっており、間もなく新ビルが建設される。

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バナナスタンドと不思議なガラス球体の建物

Amazon HQ1はシアトル中心部のデニー公園(Denny Park)周辺に広がっている。いわゆるシリコンバレー企業的な「キャンパス」とは異なり、アマゾンが周辺一帯の敷地をすべて所有しているわけではない。

エリア内に存在するいくつかのビルや建築物を合わせて「HQ1」と呼んでいるが、それらビルのほとんどは新規に建設されたもので、比較的古いビルや住宅が建ち並ぶ同エリアのなかで異彩を放っている。外観は実に特徴的だ。

Dopplerと呼ばれるビルの入り口付近

「Doppler」と呼ばれるビルの入り口付近の様子。隣のビルとは空中回廊で接続される。

このうちの1つ「Doppler」と呼ばれるビルに近付くと、「GO BANANAS!」の看板が見えてきた。実はアマゾンは無料のバナナスタンドをHQ1エリア内に設置しており、誰でもバナナをもらえる。

バナナはこっち

Dopplerの入り口付近に「GO BANANAS!」の看板が。無料のバナナスタンドの所在を示すサインだ。

これはアマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏の発案で、地域コミュニティ貢献の一環だ。昼時はAmazon Goにずっと張り付いて色々な動作を体験していたため、筆者がバナナスタンドに立ち寄ったのは夕方近く。バナナは残っていなかった。

バナナスタンドの看板付近にはシャトルバスが待機しており、HQ1の別のビルとを結んでいる。徒歩20分程度でまわれるエリアとはいえ、ビル同士はそれなりに距離がある。キャンパス間をバスが結んでいるというのは、アメリカの大企業では珍しくない。

アマゾン本社のバナナスタンド

市民サービスの一環としても提供される無料のバナナスタンド。


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シアトル市内のアマゾンビル同士を接続するシャトルバス。これはDopplerと、Blackfootと呼ばれる建物を往復している。

Dopplerのビルを離れてAmazon Goの店舗があるエリア周辺に近付くと、大きなガラスドームが見えてくる。ガラスの球体を3つつなげたような形状で、発表当時は「Bubble(泡)」などと呼ばれていた。

同社が発送に使う梱包材(“エアキャップ”や“バブル”と呼ばれる)になぞらえたニックネームなのかもしれないが、周辺は公園として整備されており、実質的にHQ1の中心的場所に位置している。アマゾンではこれを「Spheres」(スフィアーズ)と呼んでおり、アマゾン社員(「アマゾニアン」と呼ぶらしい)らの憩いの場所であると同時に、温帯植物園の環境でインスピレーションを磨いてほしいとの願いで設けられた設備となっている。

アマゾン本社の脇にある通称「Spheres」

「スフィアーズ」と呼ばれる特徴的な形状のガラスドームとHQ1を構成するビルの1つ。Amazon Goはこのビルの1階にある


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NBBJがデザインしたスフィアーズの断面図。社員向けの食堂や休憩室となっている。

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なお、このスフィアーズだが、Amazon Goの一般開放とほぼ同じタイミングで、1階スペースの一部が展示場として一般開放されている。スフィアーズに入るなり、入り口のスタッフが開口一番「スフィアーズへようこそ。Amazon Goはもう体験したかな?とってもクールだろう?」と話かけてくる。

聞けば、Amazon Goは1年近くにわたる社内テストを繰り返すことで、現在のレベルの買い物体験を実現できるようになったという。社員らが総出でテストを繰り返して鍛え上げた自慢のサービスというわけだ。

スフィアーズのエリアのほとんどは社員専用エリアで、一般利用者は立ち入ることはできない。自然をリスペクトした展示の数々は、ベゾス氏やアマゾンの思想を体現しているように思う。施設の一部ではあるものの、先ほどのバナナスタンドと同様、地域に溶け込むためのコミュニティスペースとして機能しているわけだ。

スフィアーズの入り口の注意書き

現在、ガラス玉のような建物「スフィアーズ」1階の一部は外部開放されており、展示場として誰でも入れる。


スフィアーズの内部

内部の様子。スフィアーズの思想のほか、環境を考えるための展示スペースとなっている。


スフィアーズ内部の展示

実際の地球の自然環境に関する説明コーナーもある。


オールジェンダー対応のトイレ

スフィアーズ内のトイレはオールジェンダー対応ということですべて個室。

買収されたホールフーズもAmazon色が濃くなる

アマゾン本社ビルの建設

HQ1の建設はまだ続いており、Amazon Go向かいのエリアも新しいビルが2棟建つ見込み。

今度はビルの一群から離れ、HQ1周辺エリアでも東端に近い場所に行ってみることにした。ここには、去年2017年6月にアマゾンが買収したオーガニックスーパー大手Whole Foods Market(ホールフーズ)の店舗があるからだ。

別にここがホールフーズの本店というわけではないが、お膝元であるHQ1のホールフーズ店舗が一体どんなものなのか、興味があった。行く途中の計3ブロックほどのエリアは現在工事の真っ最中であり、各種報道によれば、ここに少なくとも巨大なビル2棟が建つ予定だ。いうまでもなくアマゾンのビルであり、間もなくHQ1を構成する存在となる。

ホールフーズはオーガニック食品を中心に扱う「こだわり」系スーパーの代表格であり、米西海岸ではTrader Joe'sなどと並んでこういった食品を好む層の人気を集めている。パッケージングされた食品のほか、米系のスーパーではあまり見かけない鮮魚コーナーがあり、すぐに食べられる量り売りの総菜コーナーやバーなどの併設されている。旅行者でもちょっとした食事にはありがたい存在だ。

アマゾン本社からもっとも近いホールフーズ

HQ1から徒歩5分ほどの場所にあるホールフーズにやってきた。アマゾンが買収したオーガニックスーパー大手だ。

店内を少しまわってみたのだが、そこかしこにAmazonの息吹が感じられるサービスや製品が置かれている。「やはりお膝元」と思うと同時に、「人気の大手スーパーがAmazon傘下になった」ということを改めて感じる。

サンフランシスコ市内のホールフーズではInstacart(インスタカート)という商品ピッキングサービスの利用者が多く、インスタカート用の専用ロッカーが設置されていた。一方、ここシアトル店に設置されているのは、宅配受け取りの「Amazon Locker」だ。

ホールフーズに設置されたAmazon Locker

店舗の入り口付近にはAmazon Lockerが設置されている。


ホールフーズ店内で販売されるKindle

食品コーナーのど真ん中になぜか突如出現するAmazon製品の展示と販売コーナー。Echo各種やKindle/Fireなどの製品が並べられている。


レジで買える「Amazon Prime」

レジにはAmazon Prime会員向けの割引販売サービスを知らせるのぼりが。バレンタインデーの1週間前だったため、バラの花のギフトがセール対象となっている。

さらに、食品スーパーなのになぜかEchoやKindleの販売コーナーがある。また、Amazon Prime会員向けの割引サービスがレジに掲示されてもいる。日本でも小売のキーワードになりつつある、ネットからリアルまであらゆるチャンネルで同じ購入体験を実現していく「オムニチャネル」。各社の取り組みはいまだなお悪戦苦闘が続いているが、Amazonはそうした状況に目もくれず、自己流のアプローチを展開しているように思える。

テクノロジー好きの人の観光スポットになりつつあるAmazon Go。シアトルを訪問した方は、ぜひともその周辺エリアも合わせて探索してみてほしい。

(文、写真・Junya Suzuki)

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