【本音座談会】私たちはなぜ30代でメガバンクを辞めたのか—— 三菱UFJからSansan、ユーザベース、マネフォへ転職

「From the Wall Street to Silicon Valley(ウォール街からシリコンバレーへ)」 ——有能な人材が金融機関からテクノロジー企業やスタートアップへと流れる動きは、数年前から海外メディアで取り上げられてきた。モルガン・スタンレーの元CFO(最高財務責任者)のルース・ボラット(Ruth Porat)氏が2015年にグーグルのCFOに抜擢されたニュースは世界で報じられた。

日本でも、「東京丸の内・大手町から六本木、渋谷、恵比寿へ」と、金融界からテクノロジーやスタートアップへの人材流出が起きている。ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーの米投資銀行で働く大物バンカーに限らず、国内のメガバンクで数年勤務した30代でさえもがベンチャー企業に転職するケースは増加している。

三菱東京UFJ銀行

三菱UFJフィナンシャル・グループは、国内では商業銀行、信託銀行、証券などを運営し、海外ではアメリカのMUFGユニオンバンクやタイのアユタヤ銀行などを傘下に持つ巨大金融グループ。アメリカの有力投資銀行モルガン・スタンレーとも戦略的提携を結ぶ。

REUTERS/Thomas Peter

依然として世界第3位の経済規模を誇る日本で、メガバンクはこの国の経済の背骨を構成する大きな存在だ。一流大学を卒業して、一度はダイナミックな金融ビジネスで働こうと志した彼ら、彼女らは、なぜ銀行を辞めるのか?そして、新天地で何をつかもうとしているのか?

約10兆円の時価総額を誇る三菱UFJフィナンシャル・グループを辞めて、今では規模の小さな企業やスタートアップで働く3人に話を聞いた。前編では、30代の3人が大手銀行・証券会社を辞めた理由について掲載する。

後編はこちら:年収減っても、元メガバンク30代がベンチャーに賭ける未来の市場価値 【本音座談会・後編】


  • 黒川慶大さん(30):2017年6月に三菱東京UFJ銀行からユーザベースに転職。神戸大学卒業後、2010年に同行に入行。法人営業に配属され、中小企業から大企業までを担当した。
  • 矢尾板千絵さん(34): 2015年3月にマネーフォワードに入社。青山学院大学卒業後、三菱東京UFJ銀行に入行し、営業本部やアセットファナインス部などに所属。2014年に銀行を辞めた後、約半年間、「自分探し」を目的に職を持たない生活を続けた。
  • 沢邉崇さん(35):2011年に三菱UFJ証券(現・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)からSansanに転職。青山学院大学卒業後、同証券会社に入社。リテール営業部に所属し株式や投資信託を個人投資家に販売した。トレーディング部に移動した後、三菱東京UFJ銀行に出向した。

「目の前のお客様を助けてあげられない」

矢尾板千絵さん(写真・左)と黒川慶大さん(右)

矢尾板千絵さん(写真・左)と黒川慶大さん(右)

Business Insider Japan

Business Insider Japan(以下、BI)メガバンクを辞めようと思ったきっかけから教えてください。

矢尾板:私の中で葛藤がありました。法人営業をしている中で、お客様(企業)に融資のご提案を続けていたにもかかわらず、経営環境が厳しくなった時に私の力不足もあって、最終的には融資を希望されるお客様のご期待に添えないことがありました。

月末越えの資金として50万円がなければこのお客様は破綻してしまうというときにも、貸せなかった時がありました。

状況が変化すれば判断が変わるのは仕方のないことですし、預金者の方からお預かりしているお金を貸し出すので、与信管理をしっかりやるのは当然のことです。ただ、お客様から見れば、「雨の日に傘を取り上げる」ようなことを、自分がせざるをえなくなり、目の前のお客様を助けてあげられないことに気づきました。

私の中では衝撃的な出来事で、自分の力不足を感じた時でもあり、銀行における私の存在意味とは何だろうと考えました。

自分で人生をコントロールするということ

黒川:僕の場合、やりたいことができないケースが多くなったことです。

もともとやりたかったのは、中小企業を支援することでした。実家が自営業(製紙業)ということもあって、そういう人を助けたいと思った。最初の頃は中小企業を担当させてもらって、企業の業績が悪くなれば、改善するための支援をしたり、融資をつないだりする担当をしていました。

もちろん、融資を出せなかったこともあるし、出さなかったこともあります。それでも、経営者と膝詰めで話せるポジションにいたからこそやりがいがあって、本当に面白かったなと思うんです。

それから、営業本部で大企業取引をさせてもらいました。良い経験ではあったけど、一人で経営者のところに行く機会が圧倒的に減りました。組織対組織のコミュニケーションになってくるので、いろいろな決定を踏まなければならない。自分だけでは何ともできない世界がありました。大企業取引について学ぶことや面白さはありましたが、一方で自分が企業の社長と会って何かを成し遂げることをもっとやっていきたいと思った。

東京・大手町

日本のメガバンクなどの大手金融機関が並ぶ東京丸の内・大手町の夜。

撮影:今村拓馬

BI中小企業を担当し続けたら、銀行を辞めることはなかった?

黒川:営業本部に移り大企業を担当するのではなく、どこかの支社で同じように中堅企業を担当していたら、もしかしたら辞めていなかったかもしれません。ただ、大企業を担当する部署に行くことができたから、考えることができました。そして、行動をしようと思えたんです。

20代後半になって、これから10年、20年とずっとそうやって運に任せて、やりたいことを会社に決められていくよりは、自分がやりたいことをしっかりと決めていった方が、自分にとって後悔はないだろうと思い始めました。そして、会社を飛び出しました。

自分で仕事をコントロールしたい

沢邉:私が会社を辞めた理由としては、2つのキーワードがありました。一つはいつかは「起業」をしたいと思っていること。二つ目に、仕事の「効率性」が悪いと感じたこと。将来独立しようというときに、ベストな環境はどこかと考えた時に、それは大きな会社ではないなと思いました。

大学時代にある新聞の広告枠を全国の社長にテレアポで販売する仕事をしていました。バリバリ働いて、売り上げも伸ばしました。大企業に入社して驚いたのは、夕方5時に上がろうとする社員の多さでした。

三菱UFJ証券(現・三菱 UFJモルガン・スタンレー証券)からSansanに転職した沢邉崇さん(写真・一番左)。

Business Insider Japan

BIお三方がメガバンクを辞めた理由に共通点はあるのでしょうか?

矢尾板自分でハンドルを握りたいとか、自分でコントロールしたいとか。自分で見える範囲で仕事をしたいということでしょうかね。

沢邉:自分で仕事をコントロールできないのをストレスに感じたことはありましたね。いきなり移動、転勤となると、ちょっと待ってと思いますよね。

銀行で働いていた頃の幸せの指標

BI銀行や証券会社で働いていた時に感じた幸せとは?

黒川:2つの観点がありました。1つはお客さんのために、課題があれば解決してあげて、「ありがとう」と言ってもらうことが自分にとっての幸せかなと思っていました。

大企業では勝手に大きな目標が降ってきます。その大きな目標に向かって、個人はその目標を達成するために全力を尽くす。厳しい目標を達成できないこともあるけど、みんなが背伸びして達成した時に、達成感を味わえるのが銀行の面白いところだと思うんです。仕事は9割つらいけど、1割の喜びを味わえれば幸せだと思う。顧客軸と社内軸でそれぞれ幸せを感じていたのかなと思いました。

BI目標は定量的なものでしたか?

黒川:そうでした。前年がこれくらいだったから、今年はこれくらい(の数値)という決まり方でした。景気には波がありますが、目標はいつも右肩上がりなので、時に目標の決まり方の意味がわからなかった。それでもみんなで何とかしていこうとしていました。達成した時に喜びがあるから、モチベーションを保っていられたのかもしれません。

夜の日比谷・丸の内

「やりたいことを会社に決められるよりは、自分がやりたいことを決めた方が、自分にとって後悔はないだろうと思い始めた。そして、会社を飛び出した」(黒川さん)

撮影:今村拓馬

矢尾板:私は、銀行の中での評価基準しか見えていなかったなと、思っています。今考えると、自分の視野はとても狭かったと思います。真面目に行動したいがゆえに、例えばあの案件を通したら、上司に褒めてもらえるとか、社内のことしか考えていなかった。失敗をした時にお客様に迷惑をかけるというより先に、あの人(上司)に叱られると考えてしまったり。

銀行は、異動先の本支店がどこになるかがとても重要で、異動先でその人がどう評価されているかがわかります。切磋琢磨する目的がいかに自分の次の異動先を良いところにするかになってしまう。すごい狭い世界にいるんだなと感じました。

だから、その評価基準の中でいかに幸せを感じることができるかでしたね。私は、銀行を出て視野が広がったなと感じています。


三菱UFJフィナンシャル・グループがまとめたデータによると、三菱東京UFJ銀行の従業員数は2017年3月の時点で、約3万4300人。4年前の約3万6500人から約2200人減少した。平均年齢は37歳11カ月で過去4年でほぼ変わっていない。平均勤続年数は2016年度で14年6カ月となっている。

(聞き手・構成:佐藤茂)

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