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今、アメリカでのベスト・ジョブは「データサイエンティスト」、その実態は?

今、アメリカでのベスト・ジョブは、データサイエンティスト。

今、アメリカでのベスト・ジョブは、データサイエンティスト。

Glassdoor

  • データサイエンティストはまた、アメリカで仕事をしている人が選ぶ“ベスト・ジョブ”に選ばれた。
  • Business Insiderは、今、アメリカで一番の仕事であるデータサイエンティストの実態を探るため、求人・キャリア情報サイト「グラスドア(Glassdoor)」のデータサイエンス・マネージャーにインタビューを行った。
  • データサイエンティストは高収入が得られるだけでなく、企業の意思決定に影響を与える重要な役割を担う。

3年連続で、データサイエンティストはアメリカのベスト・ジョブに選ばれた。

求人・キャリア情報サイト「グラスドア」のランキングによると、データサイエンティストは5点満点中、全職種で最高の4.8点となった。

職種ランキングの決定にあたって、グラスドアは求人情報から割り出した平均年収、求人数、実際にその職種に就いている人の満足度などを考慮した。

グラスドアによると、データサイエンティストの平均年収は12万ドル(約1270万円)、求人数は4524件、そして実際に働いている人たちの満足度は5点満点で4.2点だった。

アメリカで一番の仕事「データサイエンティスト」の実態はどのようなものか? グラスドアのデータサイエンス・マネージャー、リン・チェン(Ling Cheng)氏に聞いた。

なぜ、データサイエンティストはベスト・ジョブなのか

なぜ、データサイエンティストはベスト・ジョブなのか

グラスドアのデータサイエンス・マネージャー、リン・チェン氏。

Courtesy of Glassdoor

高収入で求人も多いことに加えて、データサイエンティストは企業を正しい方向に導くために大きな役割を担う。

「本当にやりがいのある仕事だと思う」とチェン氏はBusiness Insiderに語った。

「多くの企業が、自社が保有するデータの可能性に気づき始めている。様々な問いに答えるデータサイエンティストは、深い分析を行い、探偵のような役割を果たす」

「データから導き出される結果がどんなものであれ、それを受け入れるオープンな姿勢を持たなければならない。自分が信じるものと違っても、データが教えてくれることは何か? A/Bテスト、製品の評価、そして企業戦略に至るまで、効果があったものとそうでなかったものを見極める際に必要になる」


データサイエンティストの仕事とは

データサイエンティストの仕事とは、どんなものか

Shutterstock

データサイエンティストは、プロダクト・マネジメントやオペレーション効率など、企業の上層部の意思決定に影響を与える。

「企業によって異なるが、大まかに言えば、高いレベルの意思決定、製品やビジネス、戦略に関する決定に関して、本質を導き出す仕事と言える」

さらに、様々なデータを視覚的に分かりやすく伝えるダッシュボードの構築も含まれる。ダッシュボードは、多様な情報を表すチャートやグラフを表示する。

「グラスドアでは、求人情報の検索結果に対して、給与の推測値を表示する仕組みを構築した。データサイエンティストの主要業務は、本質や洞察を導くこと、ダッシュボード構築、製品企画だと思う」

データサイエンティストとデータエンジニアの一番の違いは

データサイエンティストとデータエンジニアの一番の違いは

Anita Borg Institute

データサイエンティストとデータエンジニアには重複する部分も多いが、両者の役割には明確な違いがある。

「データエンジニアの仕事は、データサイエンティストが必要としている全てのデータをタイムリーに揃えること」

データサイエンスをテーマにしたサイト「データクエスト(DataQuest)」を立ち上げたヴィク・パルチュリ(Vik Paruchuri)氏は「データエンジニアはデータをシームレスに扱うためのパイプラインを構築し、しばしば大量のデータを扱うために複雑なツールやテクニックを使う。データサイエンティストとは異なり、データエンジニアはソフトウエア開発のスキルにかなりの比重を置いている」と記している。

データサイエンティストは、データエンジニアを本当に頼りにしているとチェン氏。

「なぜならデータがきちんと処理され、何時間も待たずに着手できる状態で入手できることは必要不可欠。データエンジニアは我々が作業できるようにツールを構築し、データを処理してくれる」

データサイエンティストの典型的な1日

データサイエンティストの典型的な1日

Francois Mori/AP

他の多くの仕事と同様に、データサイエンティストの1日は日によって大きく違う。

「プログラミング、書類のチェック、プロダクト・マネージャーやデータエンジニアとの打ち合わせ、さらにデータを見て、自分なりの洞察を導き出す」とチェン氏。

「だが大体は日によって異なる。今日の午前中はメンバーの誰かがシェアした文書を読んでいた。そして内容を自分なりに解釈し、我々の業務にどう生かせばよいかを考えていた」

「その後は、他のメンバーが試作したプログラムをチェックしなければならなかった。まずはプログラムを見て、挙動を確認し、想定通りに動かすために様々な人と打ち合わせした」

「実装については、データエンジニアと連携する。一方、製品についてはプロダクト・マネージャーと連携している。また私はマネージャーなので、部下とも話をする」

データサイエンティストにまつわる誤解

データサイエンティストにまつわる誤解

Strelka Institute/Flickr

「誤解の1つは、データサイエンティストはただデータをいじっているだけで、あらゆる質問への答えは、企業の中の他の人が考えてくれるというもの。つまり、データサイエンティストはたくさん質問するだけで、他の人がそれに答え、それを持ち帰っているだけというものだ」

実際はそうではない。データサイエンティストはプロダクト・マネジメントやオペレーション効率についての上層部の決定に影響を与えることができる。

「ほぼ全てのプロジェクトで、データの分析を始めると、進むべき新たな方向、あるいはこれまで知らなかったこと、全く予想外のことなどが見つかる」

「上層部から与えられた質問に答えるだけではなく、そうしたことのためにデータサイエンティストは存在するのだと思う」

データサイエンティストが持つべきスキル

データサイエンティストが持つべきスキル

OpenTech Summit/Flickr

データサイエンティスト志望の人がこの領域で成功するには、テクニカルなスキルと起業家的なスキルの両方が必要。チェン氏は必要なスキルとして以下をあげた。

  • SQL
  • Python(ある程度)
  • R
  • モデル化
  • ダッシュボード構築
  • データ分析ツール「Tableau」(業務内容によるが、使えると良い)
  • Hadoopのような最新のビッグデータツール

「これらと同じくらい重要なのは、製品やビジネスに関するセンス。担当する分野への優れたセンスや理解があれば、的確な問題設定を行うことができ、担当している分野に関して、本当に意味のあるモデルを構築できる」

データサイエンティストになるには

データサイエンティストになるには

Alexis Glenn/George Mason University

データサイエンティストになるために必要な教育レベルは、望まれる役割や企業によって異なる。

「分析がメインなら、一般的に大卒であれば十分。だが機械学習(マシンラーニング)がメインとなるのであれば、さらに上の学位か経験が必要」とチェン氏。

チェン氏の経験では、STEM(科学、技術、工学、数学)分野で博士課程を修了した学生はデータサイエンティストになるケースが多い。データサイエンティストの仕事は一般的に給与が良く、リサーチや研究といった側面が博士課程の卒業生には魅力的に映るためだ。

博士課程を修了した学生をデータサイエンティストにする「インサイト・データ・サイエンス(Insight Data Science)」と呼ばれるプログラムもある。だがチェン氏は、そうした人物と数多く仕事をしてきたが、この分野で成功するための必須条件ではないと語る。

「データサイエンスは求人も多く、トレーニングを積んでデータサイエンティストになった人も数多くいる。本気で取り組むつもりなら、特訓講座やオンライン講座、オンライン学習サービス、オンラインコミュニティもある」

データサイエンティストを目指す人へのアドバイス

「製品やビジネスに関するセンスを身につける方法は、実際のデータを使ってプロジェクトを構築してみることだと思う。私はいつも未経験者に対しては、自分が興味を持てる対象を見つけ、それに関するデータサイエンス・プロジェクトを作る方法を考えてみることを勧めている」

独自のプロジェクトを立ち上げた有名な例としては、ネイト・シルバー(Nate Silver)氏のケースがある。同氏は、趣味でメジャーリーグベースボール(MLB)の選手の成績を予測し、発表した。

チェン氏によると、シルバー氏は2008年の大統領選挙において、全米50州のうち49州の勝者を正確に予想してより有名になった。さらに自身が立ち上げたブログ「FiveThirtyEight」で、2016年の大統領選挙においてトランプ候補(当時)が勝つ可能性を他の大半のサイトよりも高く予想した。

「データサイエンティストではなく、どんな職に就いていても、こうした分析を行うことができる。仕事の現場で、データサイエンス的な分析を行う例も見てきたし、そうした積み重ねで、実際にデータサイエンティストになれる。現在の仕事の中にも、データサイエンティストへの道がある」

[原文:What it's like to have the best job in America right now

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:増田隆幸)

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