「ウォール街のグーグル」を目指すゴールドマン・サックス

チャベス氏

「我々は業務のすべてを見直している。会社全体を、APIを核に再構築している」

Twitter.com/GoldmanSachs

  • ゴールドマン・サックスの幹部、マーティ・チャベス(Marty Chavez)氏が、同社の革新的な未来ビジョンを明らかにした。
  • 「検索ならグーグル」と言われるように、「リスク管理ならゴールドマン・サックス」と言われるようになりたいと同氏は述べた。
  • 「我々は業務の全てを見直している。会社全体をAPIを核にして再構築している」

数年前、2017年5月にCFO(最高財務責任者)に就任するゴールドマン・サックスのマーティ・チャベス(Marty Chavez)氏のもとに、グーグルの親会社アルファベット会長エリック・シュミット( Eric Schmidt)氏からメールが届いた。

「今度、そちらのオフィスにお邪魔して、あいさつをさせてもらえないだろうか」

「私たちはそれ以来、互いのビジネスが持つ共通点について意見を交わしてきた。両社の共通点の中には、野心的な目標もある。その点はぜひ強調しなくてはならない。また、いくつかはすでに実現したものもある」と、チャベス氏は今年はじめ、コンピュータ・サイエンティストが集まる場で述べている。

チャベス氏の発言からは、同社が見据える未来が浮かび上がってくる。それはウォール街全体の未来であるかもしれない。ウォール街(の各社)は、同社の取り組みに追随することがたびたびあるからだ。

その未来は「自動化」にとどまらない。自動化の波はもう何年も前から株取引の場にじわじわと押し寄せてきており、今や、自動化による影響をさほど受けないと従来は考えられてきた投資銀行業務にも入り込みつつある。

チャベス氏の発言はむしろ、ゴールドマン・サックスが目指すより革新的なビジョンと、同社の変化にグーグルが影響を与えたことを示すものだ。そして、ビジョンが実現すれば職を失う人が出てくるだろう。

「ゴールドマン・サックスの根本的な真実」

チャベス氏の発言は、2017年1月、ハーバード大学応用計算科学研究所での講演で行われたものだ。その様子をおさめた動画は3月初めにYouTubeで公開され、すでに数千回視聴されている。その中でチャベス氏は「検索ならグーグル。リスクならゴールドマン・サックスだ」と述べた。

講演でチャベス氏は、グーグルについて次のように述べている。

グーグルはソフトウエアサービスを提供しており、そのサービスは何十億もの人の注目を集めている。グーグルは、その何十億人分もの注目を広告主に売っている。

ゴールドマン・サックスについては次のように説明した。

望まないリスクを抱えているクライアントもいれば、あえてリスクを求めるクライアントもいる。我々の仕事は、彼らの望みを実現すること。それがゴールドマン・サックスの根本的な姿だ。クライアントが、手放したいリスクについて、あるいは求めているリスクについて、我々に電話したり、相談したりしなくなれば、我々は一切ビジネスができなくなる。

ゴールドマン・サックスはそうしたことを念頭に置きつつ、あらゆるデータを1カ所に集約する、いわゆる「データ・レイク(Data Lake)」を構築している。データ・レイクには、取引や市場、調査に関する情報のみならず、メールや電話、インスタントメッセージなどから得られた洞察なども集約される。同社はこれらのデータを1カ所に集積して、AIによる分析を進めている。

同社が目指すのは、スタッフがいつ、誰に連絡を取るべきか分かるようにすることだ。

データレイクの説明図

Goldman Sachs

「ゴールドマン・サックスに価値があるのは、膨大な量のデータを所有しているからだ。我々の仕事は、クライアントに我々に電話しようと思わせることだ。それにより、また驚くような量の情報が集まる。その情報を役立てて、クライアントにより良い結果をもたらすことが我々の仕事だ」

しかし、チャベス氏が描くビジョンは、データの有効活用を推し進めて社内ニーズに対応するだけではなく、さらに踏み込んだものだ。

グーグルのやり方がほんの少し違っていたらどうなっていたか、想像してみてほしい。例えば、検索したい言葉や情報があったとき、ユーザーはまずグーグルのセールスマンに電話をかけ、それを口頭で伝える。セールスマンは社内用のグーグル検索エンジンにそれを入力して結果を確認し、電話口で読み上げる。

グーグルはそんなやり方はしなかった。しかし残念なことに、それがウォール街のやり方だ。

要するに、まずデータを集積、分析し、次にそのデータをクライアントに渡している。

チャベス氏は講演で、以下のスライドを紹介した。上の図では同社の「現在の方法」が示されている。クライアントに対して、同社の様々な部署からバラバラにデータが送られている。

クライアントとの接点を集約することを説明した図

Goldman Sachs

一方、下の図で示された新しい計画「ターゲット・アーキテクチャ(Target Architechture)」では、ハブが1つある。ハブにデータが集約され、クライアントに送られる。

これは、APIをベースにした方法だ。APIは、コンピュータプログラムが相互に情報をやりとりするための標準的な方法で、人は介在しない。例えば、Facebookのアカウントを使ってスポティファイにログインする際、スポティファイのシステムはFacebookのシステムとログインAPIをやりとりしている。

よく知られているように、アマゾンのCEOジェフ・ベゾス氏は、数年前から同社が自社サービスを開発する際は、必ずAPIを使うよう徹底した。新サービス開発における効率とスピードを少しでも向上させるためだ。

チャベス氏は講演で、セールスフォースやeBay、エクスペディア(Expedia)がAPIを活用してどれほど売り上げをあげているかを力説した。

APIを活用したこうした方法では、データを取り込んで分析エンジンに投入し、ゴールドマン・サックスのデジタルプラットフォームを通じて、内外のクライアントに提供する。これこそ、チャベス氏が推し進めているものだ。

「かつてはAPIとは、人間同士が電話を使って会話することだった。そして、全てのツールやコンテンツ、分析ツールは社内だけに存在した。我々はこうしたシステムを根本的に、早急に置き換えようとしている。我々は全ての業務を見直している。そして会社全体をAPIを核にして再構築している」

同社が考えるデータ連携の図

Goldman Sachs

ただし、このモデルには痛みも伴う。

まず1つ目。ウォール街で働いているか、そこで働く友人がいるなら、チャベス氏が例としてあげた「グーグルのセールスマン」のような仕事をしている人がいるだろう。そうした人にとって、このAPI主導型の方法は良い知らせとは言えない。

2つ目。このモデルによって同社は、ある種のテクノロジー企業となる。

「我々はあらゆるやり方、あらゆる活動をAPIへと切り替えている。今、我々がこだわっていることは、APIを活用した情報のやり取りを美しく、完璧なものにすることだ。なぜなら我々は、電話を使ったやり取りというたった1つの接点しか持ち得ていなかった、硬直した組織をオープンなものにしようとしているからだ」

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source:Twitter.com/GoldmanSachs、Goldman Sachs

[原文:Goldman Sachs wants to become the Google of Wall Street (GS)

(翻訳:遠藤康子/ガリレオ)

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