メッセージアプリ「LINE」の現在の月間アクティブユーザー数は7300万にも昇る。
LINEは「社会インフラ」としての機能をさらに強固にしようとしている。
LINEはアプリ上の法人向け公式アカウントの新機能を発表した。ユーザーはLINEの認証を受けた特定のサービスの通知を「フォローなし」で受け取ることができるようになる。
SMSのようにフォローなしで通知が来る
現在でも、企業などが提供する公式アカウントをフォローして、各社のウェブサービスなどとの連携設定をすれば、パーソナライズ化された通知を受け取ることは可能だ。たとえば、ヤマト運輸の配達予定通知などがそれにあたる。
しかし、この「フォロー」と「連携設定」というのがユーザーの手間になる。また、公式アカウントをフォローすると、自分にとって不要なキャンペーン情報を受け取ることにもなる。
LINEの通知メッセージの想定ユースケース。荷物の運搬や飛行機の遅延・予約情報、公共料金の支払いなどの通知が、特別な設定なしで受けられる。
LINE
そこで、今回の新機能である「通知メッセージ」は、LINEに登録されている電話番号を活用する。たとえば、荷物の到着通知であれば受取人の電話番号、飛行機の遅延情報であれば予約時の電話番号がある。それらの番号とLINEの登録番号がマッチすれば、通知が届くというわけだ。
仕組みとしては、スマートフォンや携帯電話などのSMSと非常によく似ている。テキストベースのSMSと大きく異なるのは、視覚的にも機能的にもよりリッチな体感ができるというところだ。
公共性やユーザーの利便性は重視、広告利用は禁止
とはいえ、ユーザーとしてはフォローもしていないアカウントから、急に通知が来るのは気持ちのいいものではない。
同社によると、公式アカウントで通知メッセージを使うには別途同社の審査が必要だ。同社に利便性や公益性など認められる必要があり、かつ広告的な内容は配信できないとしている。
「ユーザーと企業のコミュニケーションをスムーズにしたい」と語るLINE代表取締役社長の出澤剛氏。
今回発表された初期参画企業は、日本全体のインフラを支える企業が名を連ねている。参画したのは東京電力エナジーパートナー(TEPCO)、中部電力、東京ガス、日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)、ヤマト運輸の6社だ。サービス開始時期は企業によって異なるが、2018年中を目処に展開。TEPCOは5月初旬、JALは秋頃を予定している。
TEPCOは本日から公式アカウントを開設。電気料金の確認などがチャット上でできる
中部電力は同社の電力使用可視化サービス「カテエネ」を連携させる予定
東京ガスも料金の支払いや保守点検の日時変更などをLINEを通して行えるように
JALは段階的にLINE上で使える機能を実装する
ANAは予約内容などの通知や搭乗券としての利用も想定
ヤマト運輸は、すでに展開中のサービスを拡張する形だ
ユーザーは通知メッセージ機能の利用を選択することができる。設定画面ではすべてのメッセージを拒否でき、通知を初めて受け取ったときに企業別にメッセージを拒否することも可能だ。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクがRCSの導入を検討か
もちろん、LINEだけがこのようなユーザーに直接メッセージを送る仕組みを用意しているわけではない。日経クロステックによると、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が「RCS(Rich Communication Services)」の導入を検討しているという。
RCSは、SMS同様に電話番号さえわかればコミュニケーションができる仕組み。SMSは文字だけだったが、RCSでは高解像度の写真の動画の送受信やグループチャットなども可能となっている。そして、なんといってもスマホのプリインストールアプリで、かつ設定なしで利用できるのが長所だ。
しかし、そんなLINEより有利な性能を持っていも、RCSの普及には大きな壁が存在する。国内で最大シェアを誇るiPhoneだ。
Booking.comのRCS利用想定例。宿の予約の完了通知が届いている。
iPhoneでは、すでにApple IDを持つユーザー同士でインタラクティブなコミュニケーションができる「iMessage」が展開されている。iMessageでは、LINEの通知メッセージやRCSのような他企業との連携機能はステッカーやアプリの拡張機能としての提供に留まっているが、アップルがやろうと思えばいつでもAPIを各企業や公的機関に限定公開するなど、同様の機能を実装できるはずだ。
iPhoneは電話としてSMSの送受信を当然サポートしているが、グーグルの息のかかったRCSにすんなりと対応するとは考えにくい。インフラとしてのメッセージ機能としては、設定などはやや必要だがどの端末でも使える分、日本国内においてはLINEの方が現時点で優勢と言えるだろう。
LINE出澤氏(写真中央)と参画企業各社の代表たち。
(文、撮影・小林優多郎)