政府は2018年3月5日、仮想通貨取引所コインチェックから日本円で返金を受けた場合は課税所得になりうる、との答弁書を公開した。立憲民主党の逢坂誠二衆議院議員が2月16日に「コインチェックで生じた不正送金に伴う日本円返金の課税に関する質問主意書」を提出していた。
写真:今村拓馬
共同通信ウェブサイトによると、麻生太郎財務大臣は2月6日、閣議後の記者会見で「預かっている金を返しただけでは(対象に)ならないが、(利益を上げたかの)形による」と述べ、コインチェックが日本円で返金する場合、返金額が顧客の取得価格を上回っていれば、所得税の課税対象となる可能性を示唆していた。
所得税法では、一定の要件を満たす損害賠償金などを非課税としている。2013年12月13日には、旧ライブドア社の粉飾決算事件に絡み、株価急落で同社が株主らに支払った賠償金について、課税対象と主張する税務署と株主側が訴訟で争った結果、神戸地裁は、原告側の主張をほぼ認め、課税の一部取消しを命じている。税務署側が控訴しなかったため、この地裁判決は確定している。
こうした経緯を踏まえ、立憲民主党の逢坂衆議院議員が、「(コインチェックの)日本円による返金は、『損害賠償』であるとみなし、非課税にすべきではないか」と質問したところ、政府は2月27日に閣議決定した答弁書で、日本円での返金については、「どのような法律関係に基づき行われるものか現時点において明らかではない」とした上で、「一般論としては、損害賠償金として支払われる金銭であっても、本来所得となるべきもの、又は、得べかりし利益を喪失した場合にこれが賠償されるときは、非課税所得にはならない」と見解を示した。
コインチェックは1月28日、不正流出の対象となった仮想通貨NEMの保有者に対し、日本円で返金すると発表。具体的な時期は「現在検討中」だが、補償総額は日本円換算で約463億円に達する。
日本円で返金された場合、課税対象になるのか、ネット上ではさまざまな意見が飛び交い、政府の見解が注目されていた。
仮に課税対象となれば、不正送金の被害を受けた投資家が強制的に利益を確定させられ、納税を迫られることになる。
(文・室橋祐貴)