サイバーエージェントが仮想通貨事業への参入を進めている。仮想通貨交換業者としての金融庁への登録など準備が整い次第、取引所を立ち上げる予定だ。
インターネットテレビ局「AbemaTV」やスマホのゲームなどを手がける同社が狙うのは、エンターテイメントの分野で仮想通貨を中心とした経済圏をつくる「エンタメ金融」だという。サイバーエージェントの子会社、サイバーエージェントビットコインの卜部宏樹社長(31)は「仮想通貨だからできるエンタテイメント要素もあると思っている。そこを追求していきたい」と話す。
サイバーエージェントビットコインの卜部宏樹社長(31)。
写真:小島寛明
サイバーエージェントは2017年10月2日、子会社のサイバーエージェントビットコインを設立。仮想通貨取引所の運営などを手がけるビットバンク社からの技術協力を得ており、現在は、仮想通貨交換業者としての登録に向けた手続きを進めている。
2018年春に取引所の事業をスタートさせる計画だったが、コインチェックから巨額の仮想通貨が流出した事件の影響もあって、いまのところ、サービス開始について、はっきりした見通しは立っていない。
サイバーエージェントの主要な関連会社やサービス。インターネット広告・ゲーム・メディア事業が基軸事業だ。
参照:サイバーエージェント 2018年9月期第1四半期 決算説明会資料
最初に立ち上げるのは、仮想通貨の取引所だ。このサービスそのものは、特段、目新しいものではない。
AbemaTVや、音楽ストリーミングサービスAWAなどの開発で得たグループ全体の経験を基盤として、多くの人に安心して使ってもらえる取引所を目指すという。
「交換所としては、エンタメ要素はないので、セキュリティを重視して安全に使ってもらうことが最優先です」と卜部氏。
同グループが描く「エンタメ金融」はさらにその先にある。エンタメ金融の姿は例えば、次のような姿だ。
インターネットテレビ局の番組を通じて、視聴者が仮想通貨で商品を買う
仮想通貨をゲーム内の通貨とする
ブログを執筆した人が、仮想通貨で報酬を受け取る
仮想通貨を使って、好きな芸能人を応援する仕組みをつくる
現時点では構想段階だが、グループ全体で「エンタメ要素のある通貨」(卜部氏)を育てていく方針だ。
卜部氏は、大学卒業後にサイバーエージェントに入社。入社間もなく、スマートフォン向けのゲームを開発するアプリボット社を立ち上げたことで知られる。仮想通貨事業の前には、AbemaTVの立ち上げに携わっていた。
仮想通貨事業は卜部氏にとって、サイバーエージェント入社後3つめの新規事業の立ち上げになる。卜部氏は今回、これまではちょっと違う重みを感じているという。
「地方の銀行くらいの、本当にたくさんのお金を預かることになる。そういう意味で、気が抜けない」
(文・小島寛明、西山里緒、写真・小島寛明)