モバイルの祭典MWCで、ノートPCやタブレットを発表した。
いまや世界第3位のスマートフォンメーカーになり、年々存在感を増す中国企業ファーウェイ。日本国内でも、SIMフリースマートフォンや格安スマホ市場を中心に知名度を上げている。
一方、日本の市場環境は変化し続けている。鴻海(ホンハイ)精密工業傘下で再建を進めたシャープは2017年、スマートフォンの国内出荷台数を前年から62%増加させ、シェアを伸ばした。一方、中国OPPOは2018年、日本市場に参入した。
果たしてファーウェイは2018年、日本市場でどう戦っていくのか?ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏に話を聞いた。(インタビュー収録:2月28日、「Mobile World Congress 2018」会場にて実施)
ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波氏。
SIMフリーより何倍も大きいキャリア向け事業
国内ではSIMフリースマホ市場でNo.1シェアを誇るファーウェイだが、実は日本におけるデバイス事業は「大手キャリア向けのほうが何倍も規模が大きい」と呉氏は明かす。
呉氏の言う大手キャリア向け製品には、ドコモの「dtab」やソフトバンクの「SoftBank Air」のように、ファーウェイのブランドが前面に出ないキャリアブランドの製品も含まれている。
さらに、1月にはauの2018年春モデルとしてファーウェイの「HUAWEI nova 2」がラインアップに加わった。nova 2の売り上げは、同社がSIMフリースマホ市場に導入しているどの端末の売り上げも上回っているのはもちろん、その実績は「我々の予想を大きく超えた」(呉氏)という。
日本ではauやUQ mobileが発売した「HUAWEI nova 2」。(写真はグローバル版)
MVNOや家電量販店におけるSIMフリー端末の取り扱いは急速に伸びているとはいえ、日本全国津々浦々までショップを張り巡らせ、大量の端末を売りさばく大手キャリアの販売力には遠く及ばないのが現状だ。呉氏によると、こうした大手キャリア市場は日本のスマホ市場の9割を占めると言う。
一方で、ファーウェイは規模の小ささを理由にSIMフリー市場を軽視しているわけではない。2014年に日本のSIMフリー市場に参入したファーウェイは、不確定要素が多い状況の中、販売チャネルの構築などに多大なコストをかけ、市場を開拓してきたパイオニアとしての自負がある。
OPPOの参入は「歓迎」実店舗はROI重視
こうしてキャリア市場とSIMフリー市場のバランスを取りながら注力するファーウェイにとって、中国市場でしのぎを削るOPPOの日本参入は見過ごせない。実際、日本法人の社内ではOPPOの国内動向にかなり敏感になっているとの話も伝わってくる。
この点について呉氏は、OPPOの日本市場参入を「どんなメーカーが入ってきても歓迎する」と言う。その理由は、前述の通り国内のSIMフリー市場が発展途上にあるからだ。
「2014年にSIMフリー市場に参入した際には、もっとたくさんのメーカーに来てもらいたいと考えた。2018年も新たなメーカーが参入してくるはずだ」(呉氏)と予想する。狭い市場で競争するよりも、まずはパイを増やすことが先決という考え方だ。
その中でも注目したい取り組みが、「ファーウェイ・ショップ」の展開だ。2月24日、東京・秋葉原のヨドバシカメラ・マルチメディアAKIBAの1階に国内初となるショップがオープンした。
秋葉原のヨドバシカメラにオープンした「ファーウェイ・ショップ」。
ファーウェイ・ジャパン
量販店の中に設置するショップ・イン・ショップとはいえ、3月2日に赤坂に店舗をオープンした台湾ASUSや、日本での店舗展開が注目される中国OPPOに対抗する実店舗展開として注目される。
関連記事:アジアのスマホ覇者「OPPO」の日本参入は世界戦略の第一歩だ
ファーウェイが国内におけるショップ展開の検討を始めたのは2016年の夏頃。当初は銀座8丁目の100平米の店舗や表参道なども候補に入っていたものの、採算性の懸念を捨てきれなかったという。
その根底にある考えとして、「店舗を出すことが目的になってはいけない。今後も出店の基準として、投資利益率(ROI=Return on Investment)を重視していく」(呉氏)と語った。
中国・深センには実店舗のファーウェイ・ショップも展開している。
OPPOは中国などに多店舗を展開しており、日本にも同じ戦略を持ち込むのかどうかに関心が高まっている。その中でファーウェイは出店の指標としてROIを重視し、一度出した店舗は定着させていくという意気込みが感じられる。
中国やアジアで多数の店舗を展開しているOPPO。(写真は中国・深センの店舗)
日本では派手な宣伝よりも「口コミ」重視
世界のスマホ市場でファーウェイは、アップルを抜いて2位になることを目指している。その上で足りないものとして、グローバルのコンシューマー事業を統括するリチャード・ユー氏は「足りないのはブランド力だ」と認めている。
それでは、日本におけるブランド力向上にファーウェイはどのように取り組むのだろうか。
呉氏によれば「ブランド力を高めるためにアグレッシブな手段は取らない。日本で最も重視しているのはブランド認知度ではなく、NPS(Net Promoter Score)だ」という。
NPSは顧客満足度やロイヤルティーを数値化したもので、これまでにもファーウェイは日本での製品発表会においてたびたびスコアを誇示してきた。その背景には、「NPSによって打ち立てられた口コミは、簡単に覆るものではない」(呉氏)との信念があるという。
また、ファーウェイは日本市場で「何位を目指す」といった目標を公表していない。重視しているのは「生き残ること」だという。
「日本市場から敗退したメーカーは、ライバルに打ち負かされるのではなく、消費者ニーズから離れた製品を出すなど自分で自分に負けている。日本市場で生き残ることができれば、それは成功である」と呉氏はその真意を語った。
日本市場で生き残っていくための方策としては「ローカリゼーション」を挙げ、「企業文化、社内フロー、製品を含め、日本市場へのローカリゼーションを進めること」(呉氏)と話す。
中国やグローバルのやり方をそのまま持ち込むのではなく、日本市場に最適化することで口コミが広がり、長期的にはブランド力につながるというわけだ。
3月27日には、カメラ機能をさらに強化した次期フラグシップスマホ「HUAWEI P20」シリーズの発表を予定している。この製品は日本も一次発売国に入っているという。
地に足のついた事業展開により、日本市場のニーズをとらえながら口コミによりブランド力を徐々に高めていくのがファーウェイの戦略と言える。
(文、写真・山口健太)