「元パワハラ被害者ですら、自覚なきパワハラはする」#MeToo イベント参加者男性らの告白

セクハラや性的被害を告白する「#MeToo」の数々のイベント。登壇者の言葉を聞くと、その深刻さやまっすぐさに、同じ女性でありながら、正直、気後れしてしまう自分がいる。会場の男性たちはどう感じているのか。参加者に聞いた。

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男性は、女性が多く集いがちなイベントは正直怖い?

遠慮する気持ちがある

セクハラを告白した、政治アイドルの町田彩夏さんやグラビアアイドルの石川優実さんら女性4人が登壇した2月下旬の#MeTooのイベント。当初は、安全に話をするために女性限定の催しにする案もあったが、結果的に約60人の参加者のうち、半数弱が男性だった。会場にいた2人に話を聞いた。

音楽関係のライターの男性(52)。登壇者との縁で、セクハラ関連のイベントに初参加。

・参加の理由は?

「正直、来づらい気持ちはありますよ。遠慮する気持もがあって。男性が分かりもしないのに、『うん、うん』って会場でうなずいているのもどうかな。ただ、こういう状態だから、イベントにお邪魔してみて、分かる努力をしないとな、と思って」

・できることは?

「男性同士は、『女性に何をしたか』という話で盛り上がることがある。(とても、女性には聞かせられず) 引くチキンレースみたいに。男子運動部の部室のノリを捨てないとね」

「加害者に自分がなるかもしれないと思うと、どれだけ自覚をしても、しすぎることはないのかな」

・被害者の気持ちを理解するには?

「自分が被害者になると考えるといいのかな。男の人が自分のことを触ってくることを考えると……」

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出席者の半分近くが男性だった#MeToo関連のイベント。町田彩夏さん(左から2人目)と石川優実さん(左から3人目)。

撮影:木許はるみ

見たくないという感じ

教育関連の事業をする男性(44)。登壇者のツイートを見たことを機に参加。

・イベントや#MeToo関連のニュースの受け止めは?

「過去の不正を暴かれる不安感。見たくないと言う感じがある」「自分も女性に脇が甘い。女性に馴れ馴れしくして、仲良くなれたらいいなっていう下心もある」(お互いに楽しい関係を築きたいが、相手が嫌に思っていたら、)「とても怖いこと」

・「不安感」はどこから?

相手を傷つけることを無意識にしてしまう、そういう社会に自分はいる。セクハラしようとしていなくても、セクハラをしているかもしれないし、セカンドレイプをしているかもしれない。言葉にならない不安感がある」

・うっかりセクハラしないために、何かできそうですか。

「(登壇者の言葉を引用し、)自分の半径数十メートルに(セクハラをしないようにと)伝えていくのがいい」「『セカンドレイプとは何か』とか『こういう言葉で傷ついている』と分かる用語集があれば、知識をもとに考えられる」


続いて、2月下旬、ブロガーのはあちゅうさんと、ジャーナリストの伊藤詩織さんが対談したビジネスカンファレンス「MASHING UP」。この日は、カンファレンスの一連の流れで、働き方改革などに関心のある男性や人事関係者の姿もあった。

対談が終わると、隣同士で「んー」「何と言えばいいか」「言葉を選びますね」と言葉を交わすIT企業の人事担当者の男性らも。

男性は、社内で男性の同僚がセクハラをしたら、男性側を心配してしまう可能性に「男からすると分かる。加害者にも家族があり、ほかの面も知っている。全てが崩壊する。人に倫理を犯していると言われると、それまでですが」と本音を漏らす。

ほか、3人の男性に話を聞いた。

セクハラ、パワハラ経験した男性

ウェブメディアに勤務する会社員男性(44)

・セクハラについて感じることは。

10年以上前に、女性の上司から「男なら飲めるでしょ」と酒を飲まされ、「逆セクハラ」を受けた。

「誘われて付き合っているのは自分」だという意識もあり、同時に女性に対する男性的な欲もあり、恥ずかしさや楽しさを持ってしまう自分がいて、「逆セクハラ」の被害を口にできなかった。

・イベントの感想は?

「もやっとしたものが残る」「受け取った人がハラスメントだと感じるとセクハラになる」「(登壇者の被害が)氷山の一角だと思うけど……」とうまく飲み込めない気持ちも。「女性だけで集まるとガードをつくってしまう」

銀行に勤務する男性(37)

・パワハラやセクハラについて。

前職でパワハラを受けた。そして、現在の職場では、自分がパワハラをする立場になった。「パワハラの被害を受けたから、パワハラしないと思うでしょう? 自覚なくやってるんです」

現職では、指導の気持ちで男性の部下に接していたら、上司から「周りの人が、こういう風にお前を見ている。パワハラの事例があり、行動を謹んで」と言われた。よくなってほしいと指導をしていたら、第三者から見たら、違ったんだ。相手がパワハラだと思ったら、パワハラなんだ

「パワハラにジェンダーが入ると、セクハラになると思う」「パワハラを受けて黙っている人もいっぱいいますよ、と思ってしまう」

・被害者のためにどんな制度があればいいと思うか?

「会社の顧問弁護士は会社とグル。相談をしても、隠ぺいや黙るかどっちか、だと思う」

同僚ら複数人が評価する「360度評価」の制度を入れることで、「被害者本人が責任を追及するのではなく、周りがプレッシャーを掛け合うことができる

・セクハラはしていない?

「んー、注意しています。会社でも注意されている。仕事をする一員として男女の区別はしていない。どう生産性を上げるか、(性別は)意味がないこと」

「(相手が嫌だと)言ってくれないと分からないですよね。セクハラをしていないとは言い切れないですよ。もしかしたら、同僚がいやだと思っているかも。ただ、身体的なこと、性的なことはしていないと誓えますが、『女だから』というのが行動や言葉に現れているというのはあるのかもしれない」

夫婦、同僚、カップルで議論する人たち

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伊藤詩織さんとはあちゅうさんが対談したカンファレンス。働き方改革などに興味のあるビジネスパーソンらが出席した。

撮影:今村拓馬

エンジニアの先輩男性(31)。20代後半の後輩女性と参加。

会社が研修費を支給してくれ、働き方改革に興味があり、来場した。

・イベントに参加する前の気持ちは。

はあちゅうさんが電通時代に先輩から受けたセクハラについての記事を見て、「特殊な状況なんだろうな。電通だと、そういう人がいるのかな?」と思っていた。「つらくて怖い話と思いつつも、『本当かな?』とリアルに感じられていなかった。

「自分にとっては、セクハラに心当たりがないので、他人事だった。自分はセクハラをしないし、そういう人は多くないと思っていた

(そこで後輩から指摘が)「(特殊な状況と思っているのは)あなただけ。男の人は、女子にしか見せない顔がたくさんある」

はあちゅうさんが話す様子も見るうちに、「言葉、思い、声の震え、情報量が多くて、リアルな感情が伝わってきた。耳が痛いというよりも、つらい経験に耳を塞ぎたい気持ちになった

・過去の行動を振り返り、セクハラかも

「若手のときに、社内で飲んだとき、服を脱いでしまうことがあって、いやな思いをした人がいただろうな。無自覚にセクハラなんだろうという怖さ、そういうの(行動)を持っている怖さに気付いた」

上司に見せる顔と部下に見せる顔が違う人がいる。セクハラをパワハラに置き換えると理解ができる

嫌なら会わなければいいけれど、会社は選択の余地がない環境。上の立場にいると、部下が笑っていても、仕事の関係だと意識することも忘れないようにしよう」

後輩の女性が「社内の内部通報制度に来る通報は、社員と関係者が約1万人もいるのに、年間数件らしい」と話すと、男性はその数字を額面通りに受け取ろうとした。すると、後輩女性は「ここで(受け止め方の)違いが出る。1件の通報の裏には、500件ぐらいの通報されていない事案があると思う。制度にかかるのが全てじゃない」とすかさずに男性に指摘した。

先輩と後輩の風通しの良さ、関西弁のノリで対談後、30分以上も議論が途絶えない2人。セクハラ関連の話題をするとき、もし相手を傷つけたら、と敏感になって言葉を選んでしまうが、話をしないことには理解も進まない。分かりたいという気持ちを持って、親しい間柄で話をしてみるのも、被害や加害を防止する第一歩なのかもしれない。

(文:木許はるみ)

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