EV大国へ国家あげてひた走る中国——世界の4割保有、上位占める中国ブランド

フランスやイギリスなど各国政府が自国内を走る自動車のEV(電気自動車)化を発表しているが、中でも急速にEV化に舵を切っているのが中国だ。EV分野における中国ベンチャー企業の躍進は著しい。

中国の大気汚染

REUTERS/Jason Lee

アメリカや日本、ドイツなど先進国における国内乗用車販売台数がここ十数年、伸び悩んでいるのに対し、中国では販売台数1000万台を突破した2009年以降、脅威の伸び率を見せ、2016年には2438万台までに拡大した。マーケット規模は、日本の6倍、アメリカの4倍ほどに相当する(図1)。暫定統計値ではあるが、2017年における中国乗用車の販売台数は前年比40万台増の2472万台。そのうち国産自主ブランド車の販売台数は約1085万台、全体の44%を占めている。2位以下はドイツ車(485万台、19.6%)、日本車(420万台、17%)、アメリカ車(304万台、12.3%)、韓国車(114万台、4.6%)、フランス車(46万台、1.8%)が並ぶ。韓国車とフランス車の販売台数が、前年比、それぞれ36%、29%減少しているのに対し、日本勢は前年比11%増と健闘、その成長率は外資系自動車の中では最も高い。

しかし、安心はできない。技術力をつけてきた中国自主ブランドの勢いは増すばかりで、中でもEV分野での中国ベンチャーの成長ぶりは目覚ましい。

テスラ抜いて1位は北京自動車のBAUC

図1

図1:2005年~2016年主要国ごとの乗用車販売台数(単年度)。

出典:Statista、MARDLINESの公開データを基に筆者作成

「Global EV Outlook 2017」によれば、2016年末時点の世界全体のEV(純電動自動車及びプラグイン・ハイブリッド自動車)の販売累計台数(保有台数)は、200万台を突破した。

国別で見た場合、中国の保有台数は最も多く65万台前後、世界全体の32%を占めており、その次をアメリカ、日本、ノルウェーと続く(図2)。

EV Salesが出した最新統計資料によると、2017年における世界全体EVの販売台数はさらに伸び、年間122万台に達し、2016年比で58%成長している。122万台の内訳を見ると、約58万台は中国市場で販売されたもので、全体の4割以上を占める。これらのデータと中国政府が発表したEV国内販売台数(2015年~2017年)を吟味した場合、2017年末における世界全体EV保有量は323万台であり、中国はその38%に相当する123万台を保有している。

2013年から2017年間のわずか5年間で、中国は、EV保有台数の世界シェアを6%から4割前後まで拡大させた(図3)。EVのほか、燃料電池車などを含めた中国新エネ累積保有台数は180万台に達し、世界全体の半分以上を占める。

図2

図2:国ごとのEV累積保有台数(2009年~2016年)。

出典:「Global EV Outlook 2017」を基に筆者作成

スライド3

図3:中国におけるEV累積保有台数および世界全体に占める割合(2017年)。

出典:「Global EV Outlook 2017」、MARDLINESの公開データ等を基に筆者統計

中国が突出しているのは、保有台数の多さだけではない。

EV Sales が発表した数字によると、2017年に販売された上位20車種のうち、9車種を中国メーカーが占めているのだ。

特に、販売数7万8079台でテスラを抜いて、トップの座についたBAUC(北京自動車)は、2016年ランキング42位からの大躍進を遂げているので、注目に値する。

一方、2016年の車種別販売台数ランキングで1位だった日産リーフ(日産)は、2017年には5万830台で4位に落ちた。対照的に、2016年64位だったトヨタプリウスプライム(トヨタ)は、2017年には3位までに浮上した(表1)。TOP20にランクインした中国車種の合計販売台数が約30万台であるのに対し、日本勢の合計は13万台を下回っている。

表1

表1:2017年EV車種ごとの販売ランキングTOP20 。

出典:EV Sales, World Top 20 December 2017 (Updated)

次のメーカーごとの販売台数ランキングを見てみよう。まとめた表2を見ると、中国メーカー9社がTOP20にランクインしており、合計販売台数は48.6万台(1社当たり平均5.4万台)であるのに対し、日本メーカーのランクインは3社、合計販売台数は13万台前後(1社当たり平均4.3万台)にとどまる。中国勢に対する日本勢の劣勢が目立つ。

表2

表2:2017年メーカーごとのEV販売ランキングTOP20。

出典:EV Sales, World Top 20 December 2017 (Updated)。

新築住居の駐車場には全てEV充電設備

2017年、世界自動車市場におけるEV占有率(乗用車)はまだ2%にも達していないが、2030年ごろには新エネ車の割合は30%までに拡大するとの試算もある。

中国政府が2015年に発表した産業中期戦略「中国製造2025」では、新エネ自動車産業をスマート化や低炭素化に推し進められる第三次産業革命のシンボルとして位置づけ、国家産業競争力の核心的利益として育てていく方針を打ち出した。翌2016年に発表した「中国製造2025解読:省エネ・新エネ自動車の推進」では、2025年までに自主ブランドによる年間新エネ自動車販売台数を100万台、国内市場占有率70%以上にすること掲げ、さらには2030年までに年間販売台数300万台、国内市場占有率80%以上とする目標を打ち出した。

他にも、2020年まで、グローバル年間販売台数TOP10 にランクインできる自主ブランド会社を育て、2025年にはランクイン企業を2社まで増やす目標を掲げているが、上記のとおり、この目標はすでに超過達成している。

環境保護の強化と先端産業育成に舵を切っている中央政府の意図をくみ、大気汚染対策とEV産業誘致の両立を狙う地方政府の支援も無視できない推進力となっている。融資から用地提供、EVの設計、認証、生産、販売などのプロセスにおいて、さまざまな支援策が受けられるため、ベンチャー企業であっても製品の開発から実用化までのコストは、他の国や地域に比べて低い。

北京自動車

REUTERS/Bobby Yip

充電インフラの整備も進んでいる。

中国政府は2020年までに、充電スタンド1万2000カ所、充電設備480万基を設置する目標を掲げている。2016年末時点のデータによれば、充電設備の国内設置量は14万基以上に達し、北京市、広東省の設置数はそれぞれ2万基を超えている。

2015年以降は、新築の居住用建築物の全ての駐車場に、EV充電設備を導入するか、導入スペースの確保を義務付けている。既存の建築物であっても、大型の公共建築物や民間駐車施設では全体の駐車台数の10%以上に相当する面積をEV関連設備用のスペースとして確保しなければならない。

中国の新エネ自動車の国内販売を促進させる重要な政策の一つが、新エネ補助金制度だ。2016年時点の基準として、1回の充電続航距離が250km以上の電気自動車の場合(プラグイン・ハイブリッドは除外)、1台購入するごとに補助額100万円前後が支払われる。

国内需要が予想以上に拡大したこともあり、中国政府は、2017年~2018年の補助金は80万円に、2019年~2020年は60万円までに下げる方針に変えた。しかし、このような方針変更は、さらなる駆け込み需要を引き起こす可能性があり、結果的に販売台数の拡大につながりそうだ。

クレジット管理制度の影響は?

2018年4月1日より、自動車(乗用車)企業の平均燃料消費量の抑制及び新エネ自動車の拡大に関するクレジット管理制度がスタートする。この制度は、3500kg以下の自動車を生産・輸入する事業者(生産台数2000台以上、または輸入台数3万台以上)を対象に、扱う自動車の省エネ性能の向上と新エネ車(EV、燃料電池車)の取り扱い比率を増やすことを目的としている。

事業者は新エネ自動車の割合を、2019年には10%以上、2020年には20%以上に引き上げることが義務付けられている。目標値を超過達成した部分はクレジットとして認められ、政府が構築した登録管理システムにおいて取引できる。目標を達成できていない事業者は、取引を通じてクレジットを取得することで不足分の義務を達成しない限り、翌年の生産・輸入計画の見直しや生産・輸入関連許認可における不利益措置が発動される。

世界の年間自動車生産台数を2400万台と見積もった場合、少なくとも2019年には240万台、2020年には480万台のEV・燃料電池車の生産量が見込まれる。

2017年、中国国内における日系自動車の販売は420万台、輸入量は60万台前後である。上記クレジット管理制度の導入により、日系企業の現地生産計画や日本企業による対中輸出戦略にさまざまな課題が残りそうだ。


金振:地球環境戦略研究機関(IGES)主任研究員。中国出身、2000年4月来日。2009年、京都大学大学院で法学博士を取得。2009年~2012年まで電力中央研究所/社会経済研究所・協力研究員、2014年~2017年まで科学技術振興機構/中国総合研究交流センター・フェローを務め、2017年5月から現職。研究分野は、中国環境政策(大気汚染対策中心)、気候変動政策(省エネ、新エネ、低炭素都市)、一帯一路戦略、東アジアにおけるETS制度。

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