競争率20倍も!インターン選考で二重化、学歴偏重進む採用活動——広まる就活格差

就活生の写真

企業がインターンシップを実質的に採用目的で利用しているために、学生の負担は増えている。

撮影:今村拓馬

3月1日の会社説明会解禁を受けて新卒の採用活動が本格化している。

そんな折、経団連の榊原定征会長は3月7日の記者会見で2021年卒の採用選考の解禁時期を前倒しする方向で検討することを表明した。具体的には現行の6月1日の選考解禁時期を3月1日とする案が浮上している。

もとはと言えば、就活の早期化や学業に支障を来すという理由で、2016年卒の選考開始時期を従来の4月1日から8月1日に後ろ倒しし、翌年には6月1日に変更した経緯がある。3月1日に前倒しすることは経団連の施策が失敗だったことを意味する。

それだけではない。経団連が2017年、「1dayインターンシップ」を解禁したことで、2018年は昨年以上に採用活動の早期化に拍車をかけている。2月のインターンシップ実施企業はリクナビ・マイナビ・キャリタスの主要就職サイトの合計で延べ1万3000社を超え、そのうち1dayが約76%(1万2000社)を占める。

実際、1dayは一方的に会社をアピールするための事実上の会社説明会と化している。

早速、怒りの声を上げたのが日本私立大学団体連合会だ。2月19日に発表した提言で「インターンシップの大半が1dayインターンシップであり、就業体験とは名ばかりで、事実上は会社見学あるいは企業説明会といった内容のものが半数近くを占める」と指摘。「1dayインターンシップという呼称は廃止すべきである」と訴えている。

インターンから6割内々定

今回の経団連の就活解禁前倒しの検討表明は、経団連自ら招いた結果と言えなくもない。

じつは1dayインターンシップに限らず、(採用選考解禁の)前年夏に数日間開催される「サマーインターンシップ」から実質的な選考が始まっている。本来のインターンシップは在学中に働きながら仕事の内容や業界の知識を学び、将来のキャリアに生かす就業体験のこと。経団連や文部科学省は採用活動に利用することを禁止しているが、実際は「採用直結型インターンシップ」になっている。

面談する学生の様子

面接ではなく「面談」の名のもとに進む選考。

REUTERS/Yuya Shino

もちろん経団連に加盟していない外資系企業やベンチャー企業がいつ選考し、内定を出すかは自由だが、このインターンシップは経団連加盟の大手企業も多数開催している。そして主に3年生を対象としたインターンシップ選考と並行して、正式選考解禁日の6月1日以降は4年生を対象に一般選考を実施するという“二重選考”を行っているのが実態だ。

就活サイト各社の「インターンシップサイト」は6月1日にオープンする。学生はインターン参加のエントリーシートを提出。7月中旬までに複数回の面接を実施し、参加の可否を決める。この面接でインターンの参加資格を得ることが選考の第1ステップとなっている。

ではどのような流れになっているのか。毎年約400人を採用している経団連加盟企業の大手製造業の人事担当者はこう明かす。

「7月に複数回の面談による選考を実施し、夏に事務・技術職別に5日間のインターンを実施しています。実施期間中に学生の発言や振る舞い、グループの中でどういう立ち位置にいるのかといった点をじっくり観察し、当社がほしい学生かを見極めている。インターンシップ終了後も学生と頻繁にメールで連絡を取り合い、工場視察や関連する事業の職場視察などいろんな企画を考え、関係がとぎれないようにフォローしています。終了後の懇親会は必ずやっています」

インターシップに参加した学生に対する具体的な選考は、3月の広報解禁以降に始まる。面接ではなく“面談”のスタイルで、通常選考と同じように複数回実施し、最後の役員面接も変わらない。もちろん選考で落とされる学生も多数発生する。だが、合否を伝えることなく、合格した学生には「次の面談日の日程を連絡し、予定を入れておくようにと伝えますが、選考とは言えないので、不合格の学生には不合格と言えないのでそのままになる。ほとんどの学生が理解しているのではないか」(人事担当者)と言う。

そして“内々定”を出すのは3月中旬から4月の間である。驚いたのは、毎年の内々定者のうち、インターンシップ参加者は採用予定枠の6割を占めるという。残りの4割の選考は5月にスタートし、正式選考解禁日の6月1日以降に内々定を出す予定だ。

難易度高い大手企業インターン

人事担当者は「インターシップ選考と一般選考という2段階の選考を実施していますが、外部に対しては、『一応6月1日は守っています。インターンシップは通常選考ではないので若干早めにやっています』というメッセージも含まれている」と語る。この2段階選考スタイルに変わってから選考時期が集中することなく、採用担当者の負担は軽くなったという。

インターンシップを通じた前倒しの選考で企業側は楽になったと言うが、学生は二重、三重の負担を強いられている。売り手市場とはいえ、大企業志向の強い学生が多い。就活開始は大学3年生になったばかりの5月からインターンシップ参加に向けてスタートする人も多い。そして第一関門のインターンシップ参加の難易度も高い。有名企業になると倍率は20倍近い狭き門だ。

実際にインターンシップに参加できなかった上智大学の女子学生はこう語る。

「複数の会社のインターンシップに応募しましたが、二次、三次選考で全部落とされた。大手のシンクタンクのグループ面談では4人のうち私以外はすべて東大生でした。言いたいことも言えないまま、面接担当者からの質問攻めでボコボコにされました。インターンは学歴重視なんだなとわかり、落ちたショックで立ち直れず、秋以降は家に引きこもっていました。2月から就活を再開していますが、選考ではインターンシップ参加者が優先されると聞いていますし、総合職ではなく、一般職もありかなと考えています」

インターンに落ちたら一般選考を受けるしかないが、前述したように採用枠はすでに絞られている。運良くインターンに合格しても採用される保証はない。従来と違ってハードルは高い。

就活エリートには機会増

東大安田講堂

優秀な学生にとっては企業から早い段階で企業から声がかかる。

撮影:今村拓馬

一方、東京大学の男子学生は3年生の5月から就活をスタートし、複数の日系大手企業のインターンシップ選考に合格し、今も参加企業からイベントに誘われるなどつながっている。

「インターンシップの参加者は東大、早慶、一橋の学生が多かったですね。すでに外資系のコンサルから内定をもらっていますが、第一志望は日系大手なので就活は続けています。仲間の中には3年の夏に外資系銀行から内定をもらって就活が終わったやつもいます。就活を始めてから4月で1年になりますが、本当に長いです」

この東大生は恵まれているほうかもしれないが、就活が長期化している現実に変わりはない。

今の就活はインターンシップに名を借りた“学歴重視”の早期選別に始まり、複数企業のインターンシップに参加した学生は結果的にいくつもの内定を勝ち取るチャンスをえる。一方、インターンシップから漏れた学生が懸命になって大企業に再び挑戦しても合格率は低く、挫折して中小企業に入社せざるをえないのが実態だ。意に添わない就職が結果的に早期の離職を促している可能性もある。

採用選考時期をいつにするかという議論の前に、今起きている“就活格差”に翻弄される学生の状況を改善することが先決ではないだろうか。


溝上憲文(みぞうえ・のりふみ):人事ジャーナリスト。1958年鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマに執筆。『非情の常時リストラ』で2013年度日本労働ペンクラブ賞受賞。主な著書に『隣りの成果主義』『超・学歴社会』『「いらない社員」はこう決まる』『マタニティハラスメント』『辞めたくても、辞められない!』『2016年残業代がゼロになる』『人事部はここを見ている!』『人事評価の裏ルール』など。

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