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なぜNTTデータは「AI万能説」に異論を唱えるのか

囲碁、将棋でプロ棋士を破ったことで一躍注目を集めた人工知能=AI(Artificial Intelligence)。それはビジネスの世界をどう変えていくのか。AIの産業活用の最前線に立つNTTデータAI&IoTビジネス部長の谷中一勝氏、NTTデータとディープラーニング技術を活用した 「組込み領域でのAI」 の開発で協業しているAIベンチャー・LeapMind CEOの松田総一氏の二人に、Business Insider Japan 発行人 小林弘人が聞く。

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左から小林弘人、谷中一勝さん、松田総一さん。

「AIでは何もできない」が意味すること

小林弘人(以下、小林):ここ数年のディープラーニング(深層学習)の進展もあって、今、AIに注目が集まっています。ただ期待過剰な面もあり、「AIを使えば、人ができることは何でもできる」といった誤解もあるようですね。

松田総一さん(以下、松田):私は「AIって、何でもできるんでしょう」と言う人には、「いいえ、何もできないんですよ」とお返ししています(笑)。

谷中一勝さん(以下、谷中):AIは本来「適材適所」で導入していくべきものです。というのも今のAIでできることは大きく3つで、

1 予測すること

2 物体や音声、言語を認識すること

3 最適化すること

なんですね。それぞれ使われるテクノロジーが違っています。

第1の「予測」では、「設備の故障率はどれくらいになりそうか」とか、「この顧客に融資しても安全か」などを、過去のデータを基に予測します。機械学習(マシンラーニング)を用い、大量のデータを学習させて、「こうすればこうなる」という予測モデルを作ります。

第2の「認識」は、画像認識や音声認識といったディープラーニングが適しており、ここ数年の進歩が著しい分野です。

第3の「最適化」とは、たとえば24時間オープンしている職場で勤務シフトを決めるとき、法規上の休憩時間や、この人は何曜日が休みを希望かといった制約条件をもとに、最適なシフトを導き出すような作業です。この場合、数理計画法などの数学的手法を使って、最適解を導き出します。

小林:「AI=ディープラーニング」といった誤解もありますが、一言でAIといっても目的に応じて適用する技術が違ってくるわけですね。

松田:AI導入の最初のポイントは「何をしたいのか」という目的の設計です。AIが「ドラえもん」のように自分で考えてくれればいいのですが、現実にはそんなAIは存在しないので、人間が目的を明確にしなければならず、そこが時間のかかるプロセスでもあります。

最初の目的設定がうまくいくと、3つの領域のうち、どのアプローチでいくかも自然に決まってきます。

谷中:お客様の課題解決という意味では、複雑なディープラーニングよりもルールベースでの改善が適していることも多いんです。NTTデータの強みは、こと企業へのイノベーション導入に関しては、AI部隊だけでなく、事業戦略の課題の整理や情報活用戦略を立案するコンサルタント、データ分析を担当するデータサイエンティスト、ITエンジニアなどが協力して、お客様にとって最適のソリューションを提案できる点にあります。

「ベテラン職人の跡継ぎがいない問題」にAIは役立つ

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「AIを活かせている企業に共通しているのは、それが経営者の意志に基づいて進められていること」と谷中一勝さん。そもそも必要なデータが企業内に揃っておらず、そこからNTTデータがお手伝いをすることも多いという。

小林:人材不足の時代、ロボットやAIを活用すれば生産性を向上させることができますよね。

松田:実は、それは既に企業でやっているんです。それよりも問題なのは、ノウハウが属人的であることや、後継者がいないこと。職人さんが退職していく中で技術の断絶を避けるために、属人的なノウハウ、技術をAIによって見える化し、伝えていきたいという要望も現場では強くあります。

谷中:属人的なスキルで成り立っている仕事や、経験と勘に頼っている仕事が、現場にはたくさんあります。たとえば大型建設機械の運転技術などは継承しにくいと言われていますし、物流もベテランの人が個人の経験で荷物の振り分けを差配している部分があります。すべてをAIで自動化するのは難しいとしても、運転動作の特徴量を抽出したり、差配作業の中でも重要なパラメータを可視化して教育プログラムに入れることはできます。

小林:社会課題をAIで解決するわけですね。松田さんの会社(LeapMind)では、GPUやインターネット環境がなくても使える、機器に組み込んだ半導体だけでAIを動作させる(推論する)、いわゆる「組込みディープラーニング」の開発にも注力されていますよね。これはどういった使い方をされるものでしょうか。

松田:LeapMindでは、ディープラーニングのモデル圧縮やハードウェアへ実装する技術を提供しています。これまでのディープラーニングに、機器からクラウド上にある大規模なコンピュータリソースに通信回線でデータを送って、処理する仕組みがありますが、自動運転における障害物の認識など、瞬時の判断が必要となる場合はそれでは間に合いません。また、産業用途では、外部に極力データを出したくない場合もあります。「組込みディープラーニング」はインターネットに繋がずエッジ側で判断することができるため、そうした問題を解決するメソッドで、さまざまな機器に実装され始めています。

小林:私の友人が人工衛星の運用に携わっているんですが、あれこそリモートでの操作がかなり大変ですよね。その上で人工衛星への「組込みディープラーニング」の活用はどれくらい現実的ですか?

松田:宇宙開発における活用を視野に入れた研究・開発も進みつつあります。宇宙や海上など遠隔地では通信の遅延が大きく、エッジの活用が重要になってきます。たとえばタンカーの航路を管理するというケース。タンカーの航路に小舟が入ってきそうなとき、今は24時間人が張りついて監視し、危険を回避しています。これをAIで自動化することで、人の負担が減り、人の目では捉えきれない遠くの障害物まで検知可能になって、安全性が高まります。

小林:惑星探査ローバーのようなものこそ、エッジ側での処理が必要ですよね。AI処理をクラウドでしていたら、地球側で障害物を認識して避ける頃にはもうぶつかってる、なんてことが起こりえますよね?

松田:陸上でも建設機械やトラクターは自動運転がどんどん進められていますし、原子炉の内部や高圧電線の鉄塔上のように危険な場所での作業も、今後はAIを搭載した機械がリプレースしていくことになると考えています。

小林:三菱重工航空エンジン様でも、御社のAI支援を活用されていると聞きました。どのような分野で使われているのですか?

谷中:ジェットエンジンのブレードなどを製造する現場で使われています。もともと、お客様からは「製造ラインの歩留まりを改善したい」という話をいただき、機械学習を使った分析モデルを開発して納品したのですが、経年変化やメンテナンスによって、製造機械自体の状態も変化することで、どうしても予測モデル(AIが予測を行う際の判断ロジック)の精度が落ちてしまいます。そのため、「モデルの精度を維持するためには、人の手によるリモデリングが必要になります」と申し上げ、お客様と人の手を使わず予測モデルの精度を維持できないか?と検討し、開発することにしました。そして試行錯誤を重ねた末、ディープラーニングを用いてリモデリング(再学習)を自動で行うことで、精度を維持することに成功しました。現在、私たちはこの自動再学習技術を組み込んだソリューション「AICYCLE ™(アイサイクル)」を提供しています。

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精度の低下を検知すると予測モデルを自動で更新する技術「AICYCLE ™(アイサイクル)」を活用。

「ビッグデータを集めればいい」という大きな誤解

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「運転技術については自動運転も進んでいるが、現状だとタンカーの航路予測や資源採掘のための埋蔵位置予測などに適している」と松田さん。

小林:産業でのAI活用では、ディープラーニングを使うと「なぜそう判断したのか」の説明が人間ではできない、判断が「ブラックボックス化」するという問題もありますよね。用途次第では、ホワイトボックスを望む業種もありませんか?

谷中:現場では「なぜこうなっているのか、わかるように説明してほしい」という要望は強いですね。私たちもそうした場合はブラックボックス化しがちなディープラーニングだけにこだわる必要はないと提案しています。判断プロセスの明確な説明が必要であれば、従来のルールベースのアルゴリズムや、機械学習の手法で構築します。

松田:一方で人命に関わり、説明責任が問われる医療や自動運転は代替が難しい面があります。自動運転の技術は進んでいますが、実用で目指しているのはレベル3(条件付き自動運転。緊急時はドライバーが必要という条件)。レベル4(高度自動運転。ドライバーがいなくてもOK)は難しいんです。(人より判断の優れた)AIでもエラーをゼロにすることは難しいですし、現状では「なぜAIがそのような判断に至ったのか」という判断プロセスの説明が完全にはできませんから。

小林:企業がAIによる自動化を目指す上で、現状の課題は何でしょうか。

松田:それは明白で、「データが足りないこと」です。とりわけディープラーニングにおいては、形式の揃ったサンプルデータをどれだけ集められるかが重要です。 学習用のデータはアノテーション(意味づけ)が重要で、何の目的もなしに集められたデータはまず使えません。ビッグデータ自体が悪いのではなく、せっかく集めても、目的がなければ使えないということです。

小林:何でも良いからバルクでデータを与えておけば、勝手に認識してくれるわけではないのですよね。

谷中:さらに大企業顧客の場合は、部門ごとにデータ様式が違っているといったこともあります。実際、これがAI導入の障害となるケースが多いのです。このためNTTデータでは業務の一環として、お客様の各システムのデータ品質の把握から、データの収集、統合、蓄積、基盤構築などをお手伝いし、AI導入をサポートしています。

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人間の「課題を設定する力」があって初めてAIは活きる

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「ヘルスケアなど、今後は社会課題を解決するために活用が進んでほしい」と聞き手を務めた小林弘人。

小林:AIを活用する時代には、採用したい人材も変わってくるのでしょうか。

谷中:アカデミックな研究者も大事ですが、AIを理解しつつ、それをお客様の業務に当てはめられる人材も求められています。研究者は与えられた課題を解決していくことは得意ですが、お客様とのコミュニケーションを通じた目的や課題設定は、後者の人格のほうが得意です。AI導入では最初の課題設定が重要ですが、それはお客様とのコミュニケーションの中でなされるものです。

小林:企業が初めてAIを導入しようとする際、どんな準備が必要になりますか。

谷中:まず、AIには「適材適所」があることと、AIでできる範囲を知っていただくことです。それを共有して初めて、課題を抽出できるようになります。NTTデータにはデータサイエンティストだけでなく、AI活用についてのコンサルティングチームがあり、AIに知見のないお客様にも、納得いくまで説明できる体制を採っています。

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松田:大事なのは「目的設計と企業の強い意志」です。こういう課題があって、こういうことをやりたい、というのを明確にすること。要望を受けて調査を行い、アプローチの方法を決定し、データを整備し、モデルを作り、それを動かしながら修正……と時間がかかります。3カ月で結果が出るものではないので、やり抜く意志が問われるんです。

谷中:私たちもよくお客様にお話するのですが、AIは「なまもの」。やってみなければわからないことが多いです。AI導入がうまくいっているケースを見ると、最初の提案は現場から上がったものだとしても、最終的に経営陣がプロジェクトに対して強い関心を持ち、会社全体で進める流れができています。

小林:企業のAI導入はアスリートの肉体改造のようなもの。規模の大小は別にしても、経営サイドの課題として取り組むべきだということですね。




谷中一勝(たになか・かずまさ): NTTデータビジネスソリューション事業本部AI&IoTビジネス部長兼次世代技術戦略室長。1992年、NTTデータ通信(現・NTTデータ)入社。2008年、ビジネスソリューション事業本部部長。同本部企画部長などを経て、2016年より現職。AIやIoT、アナリティクスを活用したソリューション開発やサービス提供、コンサルティングなどのビジネスを展開する責任者を務める。

松田総一(まつだ・そういち):LeapMind 株式会社代表取締役CEO。エンジニアのスキルを可視化・マッチングするサービスを2010年に立ち上げ、シンガポール支社を設立し、同事業を事業譲渡。その後、個人投資家からの出資と自己資金でLeapMindを設立。2016年よりNTTデータと、ディープラーニング技術を活用した「次世代ソーシャルメディア解析ツール」の開発で協業している。

小林弘人(こばやし・ひろと):Business Insider Japan発行人。1994年、『WIRED』日本語版を創刊。98年、インフォバーンを設立。2007年「GIZMODO」日本版を立ち上げる。著書は『新世紀メディア論─新聞・雑誌が死ぬ前に』、『メディア化する企業はなぜ強いのか?』など多数。


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