少しでも手頃な物件を探し続けてようやく出会えたのに、契約時に不要な支払いをしてしまってはそれまでの苦労が水の泡。さらに引っ越し代の節約や、家電などをオトクに入手など、「引っ越しの初期費用」の節約術があればぜひ知っておきたいところです。
これまで、内見時のチェックポイントや内見で役立つアイテム、物件探しのテクニックなどを紹介してきた引っ越しハック術。連載の4回目は、ライフハッカー編集部員Yの“引っ越しケーススタディ”をご紹介します。物件を契約し、いよいよ引っ越しというYはムダのないお金の使い方ができたのでしょうか。
SUUMO編集長・池本洋一さん(左)、グループマネージャー・小泉清さん(右)
Photo: ヨコヤマコム
引っ越し初期費用のジャッジしてくれるのは不動産・住宅に関する総合情報サイトSUUMO編集長・池本洋一さんと事業開発部グループマネージャー・小泉清さんです。
節約できるのはどれ? 引っ越し初期費用ハックを学ぶ
・編集部員Y:27歳、単身
・部屋探しのテーマ:クオリティや駅近・築浅などの条件は問わず、とにかく1円でも安く済ませたい
・契約した物件:東急東横線 学芸大学駅徒歩12分、アパート、築34年、21平米、家賃5万8000円(管理費3000円)
引っ越し初期費用・・・計40万1830円
【内訳】
●敷金・礼金・仲介手数料
敷金:5万8000円(1カ月分)
礼金:5万8000円(1カ月分)
仲介手数料:6万2640円(1カ月分+消費税)
●前家賃
家賃:5万8000円
管理費:3000円
日割り家賃:2万3790円(11日分)
●オプションサービス
火災保険:2万円
鍵交換代:1万6000円
消火剤:1万4600円
24時間サポート:1万9800円
●引っ越し代:6万8000円(2月中旬の週末)
敷金・礼金それぞれ1カ月分、仲介手数料、火災保険などのオプションサービス、引っ越し業者代を含めて合計40万1830円でした。これを見た池本さんと小泉さんからは、どんな言葉が出るのでしょうか。そして節約の余地はあるのでしょうか。
池本さん:うーん、1円でも安くあげたいと言うわりにはけっこう払っていますね。ちなみに家賃の交渉ってしましたか? 契約する前提だから「下げて」とストレートに言ってみてもよかったかもしれないですね。他の居住者の手前、家賃は下げたくないのが大家さんの心情だけど、そのぶん初期費用で調整してくれることもあります。
小泉さん:火災保険の加入は必須ですが、どの保険を選ぶかは入居者が決めてもいいんですよ。契約時の流れでついつい加入してしまいがちですが、築34年で21平米の家に2万円の火災保険は高いような気もします。一番安いプランを選ぶことができたかもしれません。24時間サポートもつけたんですね。フルオプションですね。
池本さん:消火器の設置は義務付けられていますが、場合によっては自分で持ち込むこともできるので、ここも検討の余地はあったかもしれませんね。
小泉さん:鍵交換代はすでに退去する人が負担していたのに、入居する人にも請求して二重取りをするなんてトラブルもたまに耳にします。
池本さん:家電はこれから購入ですよね。引っ越しは平日にはできませんか? 荷物が少ないのに引っ越し代が高いのは繁忙期だから仕方がないですが、平日にすることで料金が安くなることもあります。あと時間帯も日中ではなく朝イチ便や夜間便、なりゆき便を選べばさらにコスト削減になりますよ。ちなみに、物件を紹介してくれたのは管理会社ですか? それとも仲介会社?
編集部員Y:仲介会社でした。そのあと管理会社との契約というかたちに。
池本さん:なるほど、もう少し早く相談してくれていればよかったかもしれないですね…。
編集部員Yの引っ越しが成功か失敗かは本人が決めることですが、は検討の余地があったといえるでしょう。
この他に、最近プラスされることが多くなった「家賃保証サービス」の費用。連帯保証人を立てなくていい代わりに家賃1カ月の数十パーセントを負担するというものでしたが、最近は連帯保証人がいても請求されるケースも増えてきました。連帯保証人がいても、延滞された家賃を取り立てにいくのは大家さんや管理会社。そのわずらわしさを考えれば、保証会社が負担してくれるラクなサービスを希望する大家さんが増えるのもわからない話ではありません。
敷金・礼金なしの「初期費用ゼロ物件」は本当にオトク?
とにかく節約したい人にとっては「初期費用ゼロ」のうたい文句は魅力的です。おまけに成約金までプレゼントなんて都合のいい物件があると、何か落とし穴があるのではないかと勘ぐりたくなります。そんな初期費用ゼロ物件はどうなのでしょうか?
まず知っておきたいのが「敷金」は入居するときには無料でも、原状回復などのために退去するときにはお金がかかるということ。先に預けておくのか、あとで負担するのかという違いなので、今はお金がないけど引っ越ししたいという人には「敷金ゼロ」はおすすめです。先に敷金として預けておいた金額より、原状回復などの費用が安く済めば差額は戻ってきます。
「礼金」は不動産業界に昔からある慣習のひとつで、あくまでも「お礼」。以前は2カ月が一般的でしたが、最近は1カ月や無料の物件が増えているので、ここは上手に取り入れたいところです。
人気エリアなのに初期費用ゼロの物件は、家賃を少し高めに設定しているケースがあります。それは決して“悪”ではないんですよ。まとまったお金がないけど、毎月ランニングしていける人にとってはありがたい条件といえます。
それから人気がなくて大家さんが困っているために初期費用ゼロにしている物件もあります。人気のない物件を借りてもらうには、家賃を下げるか、初期費用をゼロにするか、リフォームして物件の価値を上げるか。そのなかで大家さんにとって現実的なのが“初期費用ゼロ”という選択です。
誰もが住みたいと思うような良質な物件を探しているなら「初期費用ゼロ」というキーワードは忘れたほうがいいと池本さん。初期費用ゼロである理由を想像して折り合いをつけながら、うまく活用しましょう。
引っ越し代金と、家具や家電の購入を切り詰めるには?
さて、初期費用に「検討の余地があった」とジャッジされ、少し落ち込み気味の編集部員Y。引っ越し料金やこれから揃える家電の購入で巻き返しを図ろうと画策しているようです。
まず、引っ越し費用について見直したところ、Yがお願いした引っ越し業者は2月は平日と休日に見もり料金に差はありませんでしたが、2月後半の平日午前に3万9960円という業者を発見。もしここに決めれば2万8040円の節約になります。どの業者も4月の新生活に向けて3月20日以降から跳ね上がり、さらに土日で値上がるという傾向に。あまり早く引っ越すと日割り家賃が高くなるし、引っ越しって本当に難しいですね…。
それから家具や家電の購入を検討しているのが、以下の2つのサービスだそうです。
●「メルカリアッテ」で中古品を格安購入
Screenshot via メルカリ アッテ
以前ライフハッカーでも紹介した『メルカリアッテ』は、フリマアプリの『メルカリ』の姉妹アプリで、名前の通り"実際に会って"ユーザー同士で取引するプラットフォーム。地域を指定して、そこから5km以内といった絞り込みもできるので、今住んでいるエリアはもちろん、新居の近くで家電を売りたいという人も探せます。
「冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなどの家電やまとまった家具一式などが安く売られていることもあります。車などで取りにいってしまえば配送料もかからず、質の良いものが安く買えそうです」(編集部員Y)
●大手家電量販店の「アウトレット家電」
Screenshot via ビックカメラ, ヤマダ電機
ビックカメラやヤマダ電機などの大手家電量販店で扱っている「アウトレット家電」も狙い目。旧型モデルの新古品や、清浄や点検を済ませた中古品を探すことができます。
「劇的に安いわけではないですが、プロのケアを経ていますし、品質が保証されているぶん安心です」(編集部員Y)
●地元の掲示板「ジモティー」
Screenshot via ジモティー
そして、地域のオンラインコミュニティーとして機能するWeb掲示板の「ジモティー」です。無料で利用でき、指定した地域の情報のやりとりができます。「売ります・あげます」のカテゴリーでは、家具や家電、自転車、生活雑貨など多くのものの売買や譲渡ができます。
「ユーザー数が750万人ということもあり、本当に豊富な情報があります。また、"0円"というカテゴリーがあるので無料のものも探しやすいです」(編集部員Y)
買う人もいれば、手放す人も多いのが引っ越し時期。タイミングよく良品を手にいれられるチャンスと考えていろいろ調べてみましょう。小さなことでも賢く節約して、新生活の楽しみのためにお金をまわしたいですね。
Image: ITTIGallery/Shutterstock
Source: SUUMO, メルカリアッテ, ビックカメラ, ヤマダ電機, ジモティー
大森りえ
ライフハッカー[日本版]より転載(2018年2月19日公開の記事)