グーグル、国防総省との契約が判明 —— 社員から猛反発も

ラリー・ペイジ氏

グーグルの共同創業者ラリー・ペイジ氏。

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  • グーグルは、AIとドローンについて、国防総省と契約を結んでいることを認めた。だが詳細は明らかにしていない。
  • 同社は技術は「非攻撃的」な目的に使われていると語った。
  • グーグルは長年にわたって軍事産業にかかわることを避けてきた。これは非公式な企業方針と思われてきた。
  • 国防総省に協力しているというニュースは、多くの従業員を動揺させているようだ。

3月6日(現地時間)、グーグルは一線を越えた。

実際にはそれ以前にも時々越えていた。だが米ギズモードが、グーグルは国防総省(ペンタゴン)にAI技術を提供していると伝えたことで初めて広く知れわたることとなった。

これまでグーグルの動向に注目してきた人にとって、同社が国防総省と契約しているという新事実は呆然とする出来事。グーグルは長年にわたって軍事産業にかかわることを避けてきたからだ。

同社の規則に明記されているわけではない。だが同社の姿勢は明らかだった。

政府の契約データが公開されているUSAspending.govで閲覧可能な過去10年の記録を見ると、グーグルと国防総省との間には10件ほどの契約が存在する。

契約はどれも取るに足りないもの。例えば、Google Earthへアクセスする1万ドルの契約、6000ドルのGoogle検索のハードウエア契約など。グーグルにとっては、ほんの些細な金額に過ぎない。

グーグルのような企業が軍と契約していないのは異例

技術革新の最先端企業であることを踏まえると、同社が軍と契約していないことは極めて異例のことだ。例えばマイクロソフトは、ここ10年で国防総省と数百件の契約を結んでいる。そのなかには、空軍との7800万ドル(約83億円)の複数年にわたるコンサルタント契約がある。

ボストン・ダイナミクスのロボット。

ボストン・ダイナミクスのロボット。

Boston Dynamics

グーグルは2013年にロボット開発のボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)を買収。その際、ボストン・ダイナミクスがすでに軍と結んでいる契約はすべて尊重するが、グーグルとしては国防総省と新たな契約を結ぶつもりはなく、軍の契約企業になる予定はないとまで公言している。

グーグルは結局、2017年6月にボストン・ダイナミクスをソフトバンクグループに売却、今、軍事用の殺人ロボットは作っていない。

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だが、AIに関する軍との契約は、明らかに同社の伝統から逸脱している。米ギズモードによると、意図せずこの契約が明らかになったことで、同社従業員の間に猛烈な批判が巻き起こっている。

記事によると、軍はグーグルのTensorFlow(テンソルフロー)を使用している。同社がオープンソースで公開しているもので、誰でもAIを使ったアプリケーションが作れる技術。例えば、ドローンが収集したビデオ映像の解析に役立てることができる。

グーグルと国防総省の契約は、「プロジェクト・メイヴェン(Project Maven)」として知られる実験的なプロジェクトの一部。おそらくグーグルの従業員が、TensorFlowや他のAI技術の使い方を軍に指導しているのだろう。グーグルは契約の金額を明らかにしていない。

グーグルの「非攻撃的」の意味は、多くの人の定義と違っている

今回明らかになった件について、グーグルは通常のビジネスとして軽く受け流そうとしている。同社は公式声明を発表し、常に「政府機関」に協力してきたと強調、教育省でも国防総省でも違いはないとした。

またグーグルは、契約は同社の技術を「非攻撃的」な用途に使用するものと主張している。

だが、「非攻撃的」が正確に何を意味するのかは分からない。確かにグーグルの技術は、映画『ターミネーター』に登場した「スカイネット(Skynet)」のようなシステム(グーグルのAIが敵を見つけ、ドローンが自動的にミサイルを発射するようなシステム)に使われているわけではないだろう。

しかし、グーグルは「非攻撃的」という言葉を、多くの人が思い描く定義よりも、かなり限定的な意味で使っている。

グーグルのAI技術ならドローンに、本を携えた生徒がいる学校と銃を携えた兵士がいる要塞を区別させることができるだろう。もちろん、ターゲットを攻撃するか否かの決断は、軍の担当者が行う。だが、そうした状況におけるグーグルの役割を「非攻撃的」とするのは拡大解釈だ

グーグルは同社の資産を危険に晒している

こうした動きは、同社の姿勢に大いに反している。グーグルは古くから「Don’t be Evil(邪悪になるな)」を非公式な行動規範に掲げてきた。

注目すべきは、グーグルの元CEOで、親会社アルファベットの元会長、エリック・シュミット氏が2016年春に国防総省の諮問委員会メンバーに任命されたこと。諮問委員会はシリコンバレーのイノベーションを軍に取り入れる目的で設立された。シュミット氏は2017年12月、最新科学や技術分野での取り組み、ならびに慈善活動に「専念」するためにアルファベットの会長を辞任した(ただし取締役にはとどまり、技術顧問に就任)。

方針転換の理由が何であれ、これはグーグルにとって憂慮すべき事態。なぜなら、グーグルの最大の資産は消費者の信頼だからだ。具体的には、グーグル —— ユーザーの検索履歴からグーグルマップを使って移動した外出先まで、膨大な個人データを蓄積し、恐るべきパワーを持っている —— を築いた共同創業者ラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏の方針が今後も忠実に引き継がれていくだろうという消費者からの信頼だ。

グーグル、そして親会社アルファベットは自動運転車についてはウェイモ(Waymo)、ヘルスケアについてはべリリー(Verily)など、我々の生活にいっそう浸透しつつある。そして創業者たちも年を取る。かつて掲げていた価値観をグーグルは今でも体現しているのだろうか、そう疑問を抱いても不思議ではない。

明らかにしておくと、グーグルが軍に協力すること自体には何の問題もない。テック企業の多くが軍に協力している。決めるのは各企業の権利だ。だがグーグルは何年も前に、自社の技術を戦争に使わないという選択を行っている。

もしグーグルが方針を変え、特に軍とともに高機能なAI開発を目指すのであれば、広く世の中と、そうした技術開発に取り組んでいる従業員に対して、誠実に説明すべきだ。

[原文:Google's military work reverses one of its oldest values — and it could jeopardize the company's biggest asset

(翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:増田隆幸)

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