レノボが日本市場にChromebookを投入する。
グーグル謹製のChrome OSを搭載するノートPC「Chromebook」市場に、PC業界の巨人レノボが国内参入する。3月13日、レノボは日本市場へのChromebook投入を発表した。
日本では影が薄いが、Chromebookはアメリカの教育市場で圧倒的なシェアを持っている。Futuresource Consultingの調査結果によると、アメリカのK-12(※)の教育市場では、2017年第3四半期におけるモバイルPCのOSシェアは、出荷台数ベースで59.8%と圧倒的。ちなみに、2位はWindowsで22.3%、3位はiOSで12.3%だ。
この強さの要因は、本体価格が比較的安く、無料でグーグルのオフィススイート(Googleドキュメントやスプレッドシートなど)が使え、学校側から端末の一元管理ができること、などがあると思われる。
※K-12:幼稚園から12年生(日本でいう高校3年生)までの期間のこと。
米国の出荷台数ベースでは、iOS、Windowsなどを大きく離してシェア1位を誇るChrome OS。
Futuresource Consulting
アメリカでは一定の支持を得ているChromebookは、日本では2014年7月にグーグルが国内導入を発表して「上陸」している。その後、台湾のPCメーカーであるASUSやエイサー、アメリカのデルやHPなどが日本市場向け製品を投入したが、大きな流行とまではなっていないのが実状だ。
MILスペックの頑丈性能、ノートPCとしてもタブレットとしても使える
今回、日本向けの投入が発表された「Lenovo 500e」。
発表されたのは「Lenovo 300e」「Lenovo 500e」の2製品で、どちらもChrome OSを採用したスタンダードなPCだ。多様な教育現場に対応するために、ノートPCとしてもタブレットとしても使える同社の360度回転ヒンジを採用。また、アメリカ国防総省のMIL規格(MIL-STD-810G)の堅牢性と防滴キーボードを備える。
500eは300eと比べて上位機という位置づけで、内蔵のデジタイザーペンやカメラにより創造性の高い作業ができるという。
500eのカメラは液晶上部に加え、キーボードの上にもある。これはタブレットとして使ったときにキーボード面が背面に来るため。
500eはEMR方式のデジタイザーペンを内蔵する。
予想実売価格は500eが5万8000円前後、300eが4万8000円前後(いずれも税抜)。発売日は5月以降で、文教向けの代理店を通して販売される見通しだ。
簡単かつ安全な端末管理システムが求められている
レノボ・ジャパン 教育市場担当の渡辺守氏。
なぜ、レノボはChromebookをいま、日本に投入するのか。
公共・教育担当のシニア・プロジェクトマネージャーである渡辺守氏は「2017年3月に文部科学省が公表した情報システムのクラウド化の方針を機に、学校や自治体単位でクラウドソリューション導入の意識が高まってきている」と説明。
すでに同社はWindows搭載の文教向けノートPC「Miix 320」と「Lenovo N24」を展開しているが、学校や自治体の間でChromebookという選択肢が挙がってきている。これは、管理ツールである“CMC”の機能が評価されているためだ」と、市場の理解度を理由とした。
CMCではユーザーやインストールできるアプリの種類などをウェブ上で一元管理できる。
グーグル
CMCとは、Chrome Management Consoleの略で、グーグルの提供するWebベースの端末管理システムだ。ほかのOSでもいわゆるモバイルデバイス管理(MDM)の仕組みは標準やサードパーティー製のものがあるが、監視ソフトのインストールや設定など事前の準備に手間がかかる。
渡辺氏は「Chrome OSはインストール不要で端末管理が可能で、かつWebで直感的に集中管理ができる」とCMCが教育現場で注目されている理由を語った。
NTTコミュニケーションズとの連携で差別化を図る
だとしても、CMC自体はすでに展開している他社のChromebookでも利用できる。
同社は他社との差別化ポイントとして、NTTコミュニケーションズとのパートナーシップを挙げている。NTTコミュニケーションズの提供する教育向けプラットフォーム「まなびポケット」とセットで販売を行なう。
販売代理店が導入を検討している学校や自治体に売り込む際、クラウドソリューションとハードウエアをセットで提案しやすくするためだ。また、レノボは販売代理店に対しても展示会やセミナーなどを実施し、サービスと製品をあわせた特徴のPRに努めていく方針だ。
NTTコミュニケーションズが提供する「まなびポケット」の概要。ひとつのIDで横断して複数のシステムが使えるSSO(Single Sign On)の仕組みが特徴的だ。
同社のChromebook事業はスタートしたばかりで、「現時点で投入予定の自治体などはない」(レノボ広報)とのこと。Chromebook日本上陸5年目になる2018年。教育向けプラットフォームと組み合わせた戦略で、アメリカと同様に教育現場での支持を得られるのか、注目が集まる。
(文、撮影・小林優多郎)