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裁量労働制の拡大が謳われる「働き方改革関連法案」が議論中の現在。しかし、残業規制などの時間的な制限を制度として取り入れることが、本当に業務改善につながるのでしょうか。そんな裁量労働制に賛成・反対の意見が入り乱れる中、今までスルーされがちだったある観点から業務の効率化を見直すためのチェックリストが発表されました。
非効率な働かせ方「忖度仕事」って?
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組織風土の変革をサポートする株式会社スコラ・コンサルトによって作成されたのは、上司の部下に対する非効率的な働かせ方をチェックすることができる「部下の仕事を増やす上司の言動チェックリスト」です。 私たちが業務を上手く進めるために上司に対して行う働きかけや上司から不定期に依頼される業務とは本来関係ない仕事は、いわゆる「忖度仕事」。そんな忖度仕事が突然上から降ってきたことは、組織で働く誰しもが一度は経験したことがあるはず。
なら、そんなムダな仕事を作っている上司こそが部下の働き方を邪魔する最大の原因なのでは…!? という、普段感じることはあってもなかなか口に出せない上司あるあるがチェックリストという形で提案されました。
このチェックリストが意図するのは、このような「上司による無意識の指示」によって日々生み出されている非効率的な業務を洗い出すことで、部下に対する働かせ方の構造を根本的に見直すことです。
裁量労働制が外からの働かせ方改革なのだとしたら、このチェックリストは企業の中から働き方改革を前進させようという取り組みだと言えそうです。
仕事を増やす、上司のあるある言動チェックリスト
Data: 株式会社スコラ・コンサルト
たとえば、チェックリスト(1)の「そういえば」上司は、ミーティングや会議のたびに出現する上司あるあるの一つ。遭遇確率の高いあるあるですが、さらにこんな上司の何気なさそうな発言で会議の流れも変わってしまった…という不幸な経験がある部下も多そうです。
すでに、こちらのリストで実際に経営者と役員にチェックを受けさせた企業例もあるのだとか。チェック後、上司の行動や部下の仕事量がどの程度改善されたのかが非常に気になるところです。
上司の「無意識の指示」による「忖度仕事」10選
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先ほどのチェックリストは上司向けでしたが、以下はそれらのあるあるを受けて、部下サイドが忖度してしまいがちな行為。こちらも心当たりがある人が多いのではないでしょうか?
① 「もしかしたら聞かれるかもしれない」ことを想定して資料をあれこれ準備する。会議の前には担当者が部長や役員に細かく説明する。
② いつも上司対策のために入念な資料づくりをする。
③ 事前説明、根回しなどに時間をかける。会議に説明要員として駆り出される。代理出席を求められる。
④ 情報収集、詳細な資料づくりにエネルギーを使う。資料枚数も増えていく。
⑤ 上司の好みに合わせて資料をつくる。カラーやグラフなど、本質とあまり関係のない見栄えの良い資料が社内基準となる。
⑥ 指示の意図や目的が不明確なため、それらしき数字(データ)をとりあえず調べ上げる。 目的に対する効果よりも、インプットに対するアウトプットをその場しのぎで考える。
⑦ ミスが起きると膨大な作業と責任が発生するため、それを認めて、ミスから学ぶ姿勢がなくなる。ミスを恐れて保守的、過剰に防衛的になり、うまくいっている報告やそのための資料を作成する。ミスが起こっても隠し自部門内での対応で終わらせる。
⑧ 目先の鎮静化をはかるため、実態から乖離した表向きの対策が次々と課せられ、対応する現場の仕事は複雑・煩雑になる。負担感が増すことで規則やルールが守られないため、現場では何が問題かわからず問題が再発し、また対策が打たれることになる。
⑨ 部下は上の意向の「的当て」に考える時間を割き、意に沿うような資料づくり、対応をしようとする。
⑩ 根回し、説明、調整仕事に時間をかける。妥協点、落とし所を探るために工数をかけても結局、ありたい姿にならない。決めても心が入らず、実行されない。
リストや具体例を眺めてみると、どれも「あるある!」と思わせられるものばかり。しかし、部下である私たち自身も良かれ悪かれこのような忖度仕事をすることに慣れ過ぎてしまっているので、それが本来は不必要で無駄な仕事であることを忘れてしまっているようにも感じます。
だからこそ、この「あるあるチェックリスト」でチェックすることで、あるある上司を持つ部下は本来の仕事を遂行するためにどれだけ無駄な労力を使っているのかを自覚し、一人でも部下を持つ上司は自分の何気ない一言でどれだけの時間が無駄に使われているのかを一歩離れたところから認識できる、良いきっかけになるはずです。
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Source: スコラ・コンサルト
(文・井上可奈子)
ライフハッカー[日本版]より転載(2018年3月12日公開の記事)