官僚のメンタル休職者は民間の3倍。国会対応、政治家の理不尽に翻弄される

森友学園への国有地売却に関する決済文書改ざん問題で、近畿財務局の職員が自殺したと報じられている。“忖度”の言葉が象徴するように、官僚の仕事のあり方が注視されている。

人事院によると、メンタルヘルスを理由に1カ月以上休職している国家公務員は、全職員の1.26%、厚生労働省による全産業の調査と比較すると、休職者の割合は約3倍だ。民間企業の働き方改革で音頭をとる霞が関が、疲弊しているようだ。

官僚

国を支える官僚たちの働き方の実態とは。

人事院によると、精神的理由、いわゆるメンタルを理由に1カ月以上休職している国家公務員(精神及び行動の障害による長期病休者数調査、非常勤職員除く)の割合は、全体の約1.26%。厚労省の調査によると、全体の産業を対象にした同様の休職者の割合は0.4%。単純比較はできないかもしれないが、国家公務員の休職者の割合は、全産業の休職者の3倍にあたる。

人事院によると、メンタルによる休職者(1カ月以上)は2016年度は延べ3495人、男性2704人、女性791人。全体の職員27万6585人に対する休職者の割合は、約1.26%。省庁別は公表していないという。

休職している職員の休職期間は、1カ月〜3カ月が1338人で38%と最多、3カ月〜6カ月が671人、6カ月〜1年が711人、1年〜2年が530人。2年〜3年が176人、3年以上が69人。

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メンタルにより休職をしている国家公務員の割合は、毎年度1.2%台。

出典:公務員白書

休職者の割合はここ数年、横ばい傾向だ。2015年度が1.20%、2014年度が1.24%、2013年度は1.26%だった(公務員白書より)。

一方、2016年の厚労省の労働安全衛生調査(実態調査)によると、メンタルの不調を理由に、1カ月以上休業した人(全体の産業、事業所規模)の割合は0.4%。産業別で、「情報通信業」が1.2%ともっとも高く、「金融業・保険業」が1.0%で続く。

森友問題に関連して言えば、自殺した近畿財務局の職員も数カ月前から休職していたと報道されている。

自殺した職員は月の超過勤務が100時間以上

財務省

人事院、省庁とも、取材に対し、省庁別の超過勤務を公表しなかった。「これまで公表していないから」などが理由。

REUTERS/Yuriko Nakao

国家公務員(非常勤職員を除く)のうち、2016年度に自殺をした人は37人、2015年度は35人、2014年度は45人にのぼる。

国家公務員の精神疾患の公務災害認定(民間の労災と同様、非常勤職員含む)された件数は、2016年度は5件(うち自殺は3件)、2015年度は9件(うち自殺は0件)、2014年度は10件(うち自殺は2件)、2013年度は16件(うち自殺は5件)。

2016年度に精神疾患として認定された自殺者の3人の超過勤務時間数は月平均100時間〜120時間が1人、140時間以上が1人、その他が1人というように、長時間労働が負担になっている。

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国家公務員の精神疾患に関し、公務災害認定を受けた件数。認定前の協議件数は、過去10年間は、年14〜56件。

出典:過労死等防止対策白書

超過勤務で生理が止まる

なぜ国家公務員の休職者は多いのか。各省庁に省庁ごとの休職者数や理由を尋ねたが、「非公表」として回答は得られなかった。実際、官僚はどのような状況で働いているのだろうか。

社員による企業の口コミサイト「Vorkers」には、多くの企業で働く若手社員からの「本音」の書き込みが見られる。中央官庁についても、国を動かすやりがいや柔軟な働き方を評価する書き込みの一方で、政治家に寄り添う苦労や長時間労働の実態に関する回答もみられた。

国土交通省の「退職検討理由」に関する2016年7月の書き込み。

観光庁にいた頃、年度末残業が200時間以上(毎日深夜帰宅、土日出勤)となった時、生理が止まった。仕事が面白く麻痺していたが、真剣に退職して実家に帰ろうと思った。(在籍3〜5年、現職、新卒、女性)

財務省の入省前に「認識しておくべき事」に関する書き込み。

本当に日本の財政に関わっていきたいのか、それは自分を押し殺してでもやりたい事なのかよく考えるべき。予算策定時期には百時間超の超勤がザラにある部署も。(在籍5〜10年、現職、新卒、男性)

人事院によると、国家公務員の2016年の年間の超過勤務の平均時間は全体で235時間、本省(霞が関周辺の本府省)は366時間。

2015年の年間の超過勤務のうち、「超過勤務の縮減に関する指針」で定めた上限の目安360時間を超えた職員は、全体の22.5%、本省の46%。720時間を超えた職員は、本省では7.5%。人事院の担当者は「本省は国会、委員会で急な質疑があったり、災害の対応もあったり、自分で仕事のスケジュールを立てることが難しい業務が多い」と超過勤務が多い理由を話した。

働くのは議員のため?

Vorkersには、多忙な業務内容そのものへの疑問も多く書き込まれていた。

2017年8月の財務省の「成長・キャリア開発」に関する口コミは以下。

忖度、公文書作成スキル、幹事力、ストレス耐性、処世術。民間では役に立たないと思う。(総合職、在籍5〜10年、退社済み、新卒、男性)

口コミには、国民ではなく政治家を相手にするような仕事に対し、疑問を持つ書き込みもあった。経済産業省に関して、掲載された2017年2月の口コミ。

日々の業務は、社会へ貢献している面も少なくはないが、基本は(実際に社会の利益とは反する)政治力への貢献の場合が多かった。(I種、在籍3〜5年、現職、新卒、男性)

2017年5月の経産省の「モチベーション・評価制度」に関する書き込み。

政治家の理不尽な要求で省全体で大騒ぎしているところなどを見ると情けなくなる。(課長補佐、在籍15〜20年、退社済み、新卒、男性)

国交省の「入社後のギャップ」に関する2016年10月の書き込み。

誰のために働いているのかわからなくなる。上司のためなのか、議員のためなのか。議員のために働いてそれが国のためになればよいが、政治家が腐敗しているため、そうはならない。だから辞めた。(総合職、在籍5〜10年、退社済み、新卒、男性)

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官僚の政治家との付き合い方は、仕事にどのような影響を及ぼしているか。

REUTERS/Issei Kato

「事務次官は執行役員程度」

小泉政権以降、政治家や官邸の力を強める流れがあり、民主党が掲げた「政治主導」でその動きが加速、さらに「内閣人事局」(国家公務員の人事管理を担う)が2014年に設立され、審議官以上の人事は内閣人事局に人事権が移った。この影響が口コミにも現れていた。

経産省の「入社理由と入社後のギャップ」に関する2017年5月の書き込み。

若手が一番活躍できる官庁というのは事実。ただここ十数年の傾向として、次第に上が強くなっている。また政治主導の時代で「事務次官」が企業の執行役員程度の扱いになっており、その上に官邸や政治家などがいる。また天下り先の減少に伴い、幹部層の年齢も上がっている。(課長補佐、在籍15〜20年、退社済み、新卒、男性)

ある財務省職員は、2017年8月の「経営者への提言」の書き込みで、次のように意見した。

職員は国会対応等で非常に疲弊しています。職員にとって国会対応が過度な負担とならないよう、各部署で当番制は徹底した方が良いかと思います。(事務、在籍5〜10年、現職、新卒、男性)

Vorkersには、上記の財務省、経産省、国交省に対して、やりがいや人材育成を評価する口コミも多く、特に経産省は業界の総合ランキングが2位で、「社員の士気」「風通しの良さ」が高く支持されている。あくまで、過酷な職場に対する口コミは一部の意見だ。

実際、キャリア官僚の志望者が受ける国家公務員総合職の採用試験の倍率は2017年度、11.0倍と依然と高い。ただ、前身の1種試験が始まった1985年と比べると、過去2番目の低さだ(最も低かったのは2016年度)。現在、各省庁は新卒採用に向け、説明会を活発に開いているが、財務省が3月中旬に企画した説明会は、取材を受け付けなかった。

説明会で予定されていた若手官僚の「ホンネ」座談会では何が語られ、「第一線で活躍する」理財局などの出席者は、学生達に何を話したのか。


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(文・木許はるみ、撮影・今村拓馬)

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