【実録】会社を変えた会議改革とは——いい会議は経営幹部人材と実行力を育てる

前回は経営会議を変えれば、会社が変わるのではないかという話をしました。

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経営会議の改革が有効であれば、経営会議の参加メンバーは自分の担当組織の会議にもそのノウハウを導入します。各レイヤーでそれが繰り返されれば、全社に伝搬し、会社のあらゆる会議が変わります。

今回はこの仮説のもとに行った実験について、みなさんにお伝えしようと思います。

この実験では、会議前の事前審議にITツール(Oneteam)を導入することで、会議の効率化だけでなく、データの「見える化」にもトライしました。データの活用により、経営会議参加者の特徴が分かり、能力開発や登用に活用できると考えたからです。

今回は、こんな壮大な実験の中間報告です。

会議風景

会議を変えることで、生産性や働き方までも影響が及ぶ(写真はイメージです)。

Shutterstock/TZIDO SUN

まずはやってみることが大事

私自身のメンターからの紹介で、Fringe81のCOO・松島稔さんに初めて会ったのは2017年9月のことでした。その1カ月後、Oneteamの佐々木陽さんも参加した食事会で、私は「経営会議を変えると会社が変わる」という企画書を準備して、共同実験の提案をしました。若くて柔軟な思考を持つ2人は即決。Fringe81社の経営会議にOneteamのツールを活用することが決まり、その瞬間「経営会議を変えると会社が変わる」チームがスタートしました。

その後、私が経営会議リニューアルのフローを設計、NDA(秘密保持契約)を結ぶなどし、12月には2社と新しい経営会議を始めました。2人と話をした後、たった2カ月で新しい経営会議の仕組みを導入できたのです。

Fringe81社はインターネット広告の技術開発などを展開する東証マザーズ上場企業ですが、判断が早く、物事の進め方がアジャイル的です。ちなみに、同時期に経営会議の変革を提案した一部上場企業は3月現在何も始まっていません……。このような大企業こそ経営会議の改革が必要なのですが、なかなか難しいのが実態のようです。

まずはとにかくやってみて、ダメだったらすぐに改善するという取り組み方も、経営会議を変えるには大事なのではないかと思います。

ここから先は、具体的にFring81でどのように会議を変えたのか、それによってどのように会社が変わったか、松島さんの報告を紹介します。

経営会議をリニューアルしてみた

◆経営会議の具体的な設定

Fringe81の松島です。弊社のボード会議では中尾さんのメソッドを基に下記の様に設計しました。ボード会議とは主に複数の事業部長レイヤーが参加する会議です。業務執行に関する重要な課題/意思決定を行う会議となります。

金曜日

  • 次週のボード会議のアジェンダをアジェンダオーナー(以下AO)が設定します(アジェンダオーナーは会議参加者の中から1人無作為に選ばれます)。
  • アジェンダの背景、討議事項に対してのAOの意見とその理由を事前にトピックチャットツールのOneteam上に投稿します。
  • AOは翌週の火曜日までに会議の各参加者に、AOの意見に対して賛成/反対/保留とその理由についての表明を依頼します。

水曜日】(ボード会議前日)

  • 会議参加者の意見とその理由をAOが集約します。
  • 賛成/反対の割合やその論点を明確にし、当日の議論内容についての構成を考えます。
  • 当日のアジェンダ、議論の進め方について整理しOneteamに投稿します。

木曜日】(ボード会議当日)

  • 事前に全員が追加情報も読んだ状態で会議に参加。賛成が大部分を占めるアジェンダは議論せず、意思決定の確認だけをします。他の以下2役を決め、議論をスタートします。
  • TO(タイムオーナー):会議の進行管理を行う人・議論の決定内容の進捗確認を会議後も把握する役目も負う。
  • DO(ドキュメントオーナー):会議の議事録をとる人。
  • 会議冒頭、整理した論点と参加者の事前の態度(賛成、反対、保留)を確認、それを前提として議論を進めます。

経営会議を変えてわかったこと

(1)会議のアジェンダ設定そのものが経営幹部候補の育成になる

普段、自分の担当領域のみを考えている事業部長クラスにとって、複数の部署をまたぐアジェンダを設定すること自体が、一つ上の視点を持つ訓練となります。また、事前審議を実施することで、良いアジェンダは「賛成/反対があえて二分化する」ものだと分かります。全員の意見が重なるものより、複数の論点を呼ぶ課題を設定できたかどうかで、議論が活発化し、事後振り返りもより有意義になりました。

不確実なビジネス環境での選択肢は、常に一方を優先させれば他方は犠牲にならざるを得ないという状況が発生します。特に、部署をまたぐ課題に対して態度表明してから議論すると、事業部長が一つ上の抽象度で自社の課題に向き合えます。

その際に「自分の立場を明確にして議論に参加する」ことが非常に重要だと気づきました。意見表明も立場が不明だと生産的な議論ができません。立場を明確にする習慣が経営に対する認識を深めることにつながると体感できました。

(2)活発な議論を通じた意思決定は、決定後の実行力を高める

意思決定は、時折現状を否定することがあります。過去、事業責任者が「本当はだめだと思ってた」という状態で意思決定として、実行が中途半端で終わってしまうことが多々ありました。事前に論点を明確にし、あらゆる角度から腹を割った議論することで、意思決定そのものに対しての納得度が確実に高まります。実行の徹底が何よりも重要なので、この議論の進め方が実行力そのものを高められたことは非常に驚きでした。

(3)事前に賛否が拮抗している課題はよりよい仮説が導き出せる

Oneteamで取得したデータ

会議で早く意見を表明する人はその会議の主導権を握り、柔軟に意見を変える傾向が見られた。

Oneteam上のログをいろいろな角度から振り返りましたが、会議の議題に対して、他の人が意見を表明しない中、真っ先に自分の立場を明確にしている人が、実際の会議の中でも主導権を取ることが多かったです。また事前の意見表明で早く投稿する人は、会議中に柔軟にポジションを変える傾向がありました。

また、賛成と反対が拮抗しているアジェンダに対する意思決定は、もともとAOが出していた意見とは全然違うものになる傾向が高いこともわかりました。賛成/反対という論点を超えた新たな仮説が生まれるときは、もともとの仮説より精度が高くなります。その時は会議を「本当にやってよかった」と参加者のモチベーションが上がります。

経営会議で変わった「意思決定のプロセス」

このプロジェクトを通じて一番考えたことは「Politics=政治」でした。政治、という言葉は社内政治などネガティブな意味でとらえられやすいですが、Politicsとはもともと「意思決定のプロセスそのもの」だと言われています。

Oneteam上での意思決定のプロセス/意見表明をオープンにすることは、高い役職の人や、会議で発言量が多い人の意見に引っ張られることがなくなります。透明性の高い会議では誰でもいつでも意見が言いやすくなり、さまざまな角度から課題を見極めることができ、参加者の納得度も高めることができます。


松島さんの総括にあるように、会議前の事前審議とツール(Oneteam)の導入が極めて有効であることが分かりました。その効果は過去の私の組織と同様かそれ以上の成果でした。今後は、この会議のやり方が各組織の他の会議にも伝搬していくかどうかがポイントです。

経営会議を変えて、全社が変わったという報告を楽しみにしています。

(文・中尾隆一郎)


中尾隆一郎:リクルートワークス研究所副所長。大阪大学大学院工学研究科修了。リクルート入社。リクルート住まいカンパニー執行役員(事業開発担当)、リクルートテクノロジーズ社長などを経て、現職。

松島稔:Fringe81株式会社取締役COO兼新規事業開発本部本部長。日英でオンライン上での音楽著作権/著作隣接権を扱うベンチャー企業に参画。2006年4月に株式会社ネットエイジ(現ユナイテッド株式会社)に入社。同年子会社のFringe81(当時RSS広告社)へ出向し営業/事業開発を担当。2013年7月にFringe81が親会社からMBO。取締役COOに就任。2017年6月にマザーズ市場上場。同年9月にOneteam株式会社社外取締役就任。

佐々木陽:株式会社Oneteam社長。2003年東急エージェンシー入社。数々の大手企業のデジタル領域の案件を推進。2008年リクルートへ入社。国内事業の新規事業開発を担当した後、2012年リクルートホルディングスグローバル本部で海外事業開発部門のGeneral Managerに就任。2014年US本社の KAIZEN platformに入社し、 Lead DG & Salesに就任。2015年Oneteam を創業。

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