日本社会から、無駄な残業をなくすことはできるのか。
REUTERS/Issei Kato
Business Insider Japanが実施した「ミレニアル世代の残業リアルアンケート」では、若手・中堅の6割以上が「ほぼ毎日」か「必ず毎日」残業していることが明らかになった。しかし一方で、残業は「しなくて済む方法がある」「本当はイヤ」「続く職場は辞めたい」など、8割の人が抵抗を感じていた。
どうしたら自分の職場から残業をなくせるのか。同アンケートで、ミレニアル社員が考える対策編トップ7をみてみよう。
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8割が残業に違和感
「ミレニアルの残業リアル」アンケートは、「すぐ辞める若者は合理的」と指摘した東京大学の中原淳准教授のインタビュー記事に関連して実施。多くの職場で残業の常態化や、上司の残業体質が明らかになった(回答者の内訳詳細は文末に掲載)。
「残業することについてどう感じますか」と聞いたところ、約4割は「残業しなくて済む方法があるはずだ」、2割超が「本当はいや」、2割弱が「残業が続くような職場は辞めたい」と答えている一方で、2割は「仕方がない」「仕事をする上では当然、生じるものだ」と、割り切っている。
残業することについてどう感じますか
さらにアンケートでは、「あなたの職場で残業が発生しないためには、どんな方法があると思うか」と聞いたところ、鋭い書き込みが相次いだ。今回は残業をどうやったら減らせるのか。その上位7つを紹介する(自由回答をBusiness Insider Japanで分類)。
7位:時間規制の強化
強制的にオフィスから出させる、システムを使えなくするなどの規制強化を求める声は少なくない。残業の根強い風土を強制的にリセットしなければ、事態は変わらないと感じている。
「やはり定時をなるべく守るよう、人事などの第三者から指摘があることでしょうか」( 25-29歳、個人事業主、女性)
「会社の門を強制的に施錠する」(25-29歳、 一般社員、女性)
金銭的なペナルティーを求める意見も。「生活残業」が麻薬のように効いている社会では、一つの手かもしれない。
「定時以降は社員から居場所代を取る。仕事しない管理職を切る」( 40代以上、主任・係長クラス、女性)
6位:管理職が変わるべき
上司が残業体質だと、若手社員には絶望感がある。
「上司を一新しないと無理」(20-24歳、一般社員、男性)
「経営者が『限界まで追い込んだ経験が必要だ』と言っているので残業をなくすのは無理。まずは労働時間の実態把握が目標」(30-34歳、一般社員、男性)
こういうミレニアル世代が管理職に増えると、何かが変わるかもしれない。
「使用者が労働者の労働実態を適切に把握すること。私自身も2名の部下を持っているが、実態をしっかり把握し、想定のフル稼働よりも7割~8割程度の業務量になるように割り振っている。
突発的な業務はどうしても起こるので、100%の業務稼働量を前提にしていては回らないと思う」(30-34歳、主任・係長クラス、男性)
5位:業務のIT化
ITツールや新しいシステムを導入して、仕事を効率化して欲しいという声は、とくに20代で目立った。日本の労働生産性が国際的にも低い理由として、IT投資に消極的なことは、よく指摘されるポイントだ。
「既存のシステムが古いため手作業で作業をしている部分が多いので、ある程度金額を出してでも自動システム等を導入すると良いと思う」(20-24歳、主任・係長クラス、女性)
時にそれは悲鳴だ。
「商品の種類ごとの売上を可視化すべき。手っ取り早く言うとwindows 95なんか使うな」(25-29歳、一般社員、男性)
今日は定時で帰れるだろうか。
撮影:今村拓馬
4位:意識や風土を変える
ウラを返せば、残業を美化する風土があるということ。
「時間内に仕事を終わらせる、目処をつける技術を習得する。残業を決して美化しない」( 30-34歳、 一般社員、男性)
同じ会社の社員だからといって、一致団結している訳ではない。その多様性を理解することが、解になるという指摘は20代から。
「全員が同じ思いで仕事をしていないことを理解すること。生活のために仕事してる人もいれば、スキルアップを目指している人もいたりします。この二者に同じ仕事をさせても将来を考えると、後者の仕事のほうが会社に還元されるものは大きいはずです。ここの気持ちを汲み取り、かつ両者に見合ったもの(給与・役職・休暇 など)を与えてあげられれば一番かと思います」(25-29歳、一般社員、男性)
つまりは、こういうこと。
「昭和な発想からの転換。もう平成も終わりますから」(35-39歳、主任・係長クラス、男性)
3位:そもそも仕事の内容を見直す
過酷な目標やノルマは、残業を誘発しているという指摘は多い。
営業ノルマを社員に課さない(25-29歳、一般社員、男性)
そもそも、今やっている仕事は、本当に必要な「仕事」か。
「報告書・会議、特殊な形式により書くことに時間がかかる申請書を削減し、指揮系統を立て直して、従業員が実際の仕事だけに集中できる環境を作ること。そして、どうしでも残業が生じる部署で追加で人材配置すること」(30-34歳 一般社員、男性)
労働を安売りすれば、量で勝負させられる。
「取引先へ適正価格での労働力の提供。安売りしないこと」(一般社員、女性、35-39歳)
街のネオンは、残業する人たちの灯りかもしれない。
撮影:今村拓馬
2位:業務量を減らす
残業発生理由で1位だったのが「仕事量が多い」だったので、納得の上位。そのための方策を訴える声が多かった。
「無駄な会議、仕事を減らすこと」(35-39歳 、一般社員、男性)
「やらないことを作る」30-34歳、 主任・係長クラス、男性)
残業ありきの仕事量は、やっぱりおかしい。
「部として目指す業務遂行レベル/量を根本的に見直して、業務量を減らす(部の成果は減るかもしれないが、一人当たり何十時間も残業しない限り処理しきれない目標設定自体をおかしいと捉えなおす)」 ( 25-29歳、 一般社員、男性)
1位:人員を増やす
突出して票を集めた、堂々の1位がこれだ。
「人を増やす」(25-29歳、一般社員、女性)
「人を増やす」( 30-34歳、 一般社員、男性)
とはいえ、現在は人口減少と高齢化で、空前の人手不足。やるべきことはこれ、との指摘。
「人を増やす。その為に給料を上げ、休みを増やす」(20-24歳、一般社員、男性)
そうでなければこれ?
「売上を下げて仕事を減らすか、人を増やす」( 25-29歳、 一般社員、男性)
右肩上がりの経済成長時代の働き方から、抜け出す時が来ているのは間違いない。
「ミレニアルの残業リアル」アンケート:2018年3月にBusiness Insider Japanで実施。488人が回答。回答者の内訳は7割以上が20〜30代の若手・中堅社員。88%が会社員または団体職員だった。75%が男性、24%が女性。66%が一般社員で、主任・係長クラスが22%、管理職が6%。約6割が独身、既婚で子どもいない人が12%、既婚で子どものいる人は26%だった。小数点以下切り捨て。
(文・滝川麻衣子、集計協力・五藤絵梨香、松本幸太朗)