タブレットにしない理由は? スマートスピーカーで注文できる「アレクサ居酒屋」で飲んできた

Amazon Echo Dot

アマゾンの「Echo Dot」が注文を受けてくれる居酒屋が、渋谷に登場した。

「居酒屋でアマゾンのスマートスピーカー“Echo”から注文ができる」

通称「アレクサ居酒屋」に行ってきた。実施店舗は「天空の月 渋谷」。たまたまなのだが、Business Insider Japan編集部から徒歩5分ほどの場所だ。この注文システムを開発したのは、IT企業ヘッドウォータース(東京・新宿)。アマゾンの「Echo Dot」で注文を受け付けて、人手不足といわれる飲食店員の負担を減らそうという狙いの実証実験。実験ではあるものの、実施期限はいまのところ設けられていない。

編集部員4人でアマゾンのAI、アレクサがどこまで有能なのか、実力を試しに行ってみた。

アレクサは意外と居酒屋に溶け込んでいた

天空の月 渋谷の外観

東京都渋谷区円山町にある居酒屋「天空の月 渋谷」。

訪れたのは、実証実験4日目となる3月22日の夜。音声認識の精度も試したかったため、ほかの客が訪れそうな19時に予約をとった。

部屋は個室で、6人ほど座れそうな大きめのテーブル。目の前には大きな窓があり渋谷の道行く人を見下ろせる。4人で入った影響もあるが、かなりスペース的に余裕のある印象だ。

天空の月 渋谷のアレクサ席

現状では1部屋しかない「アレクサ席」。4人分の食事を置いても結構余裕がある。なお、アレクサ席を確実に利用するには予約が必要だ。

Echo Dotはテーブルの窓際にちょこんと置かれている。しょうゆなどの調味料と並んで置かれており、ウェイクワード(Wake Word)である「アレクサ」と呼ばなければLEDも点灯しないため、存在感は非常に薄い。ひょっとすると、何も知らされずに部屋に案内されたら、我々メディア関係者でも「あ、Echoだ」とは気づかないかもしれない。

テーブルには通常のメニューのほかに、実験用に2枚の説明書きが置いてあった。1枚にはアレクサへの注文方法がチャット風に書いてある。もう1枚には、アレクサで注文できるドリンクの種類と番号が書かれている。

アレクサ席のAmazno Echo Dot

何食わぬ顔でしょうゆや楊枝と並ぶEcho Dot。

注文にはやや「慣れ」が必要

アレクサの使い方

席にはアレクサを使った注文方法が書かれた紙が置いてある。Webのフリー素材でおなじみの「いらすとや」の絵がここでも活躍。

Echo Dotなどのアレクサを利用したことがない人向けに説明しておくと、アレクサに何かしてもらうには、キーワードをある程度コマンド化した、独特の「フレーズ」を使う。

今回のシステムの場合、「赤ワイン」を頼むのであれば、「アレクサ、飲み物メニューを開いて」と話した後に「ワインの1番を1杯」といった具合だ。

アレクサで注文できる飲み物の一覧

カテゴリー名や番号は手元のメニューで確認できる。逆に言えば、この時点でここに載っていないメニューはアレクサでは注文できない。

混雑する店内での認識精度は?

近隣の客の声が聞こえる状態の騒音下だったが、音声の認識精度は悪くない。これはEchoシリーズのノイズキャンセルマイク機能「ビームフォーミング」が効きまくっているということだろう。

男性2名、女性2名で試したところ、最初のうちは何回か注文を誤認識したが、アレクサの音声コマンド待機のタイミングや注文コマンドに慣れてくると、さほど不自由なく注文できるようになった。

ちなみに取材時点では、7カテゴリー39種類の飲み物の注文に対応。食べ物やアレクサメニューにない飲み物は、従来通り店員を呼んで注文する必要があるが、「会計」「店員を呼ぶ」といった動作もアレクサで実行できた。

乾杯

アレクサで注文した飲み物が届き乾杯! 最初は数回注文をやり直したせいか、やや達成感があった。

「タブレットの弱点」をアレクサで解消する

ヘッドウォータース社

ヘッドウォータース社はPepper向けアプリなど、AIやクラウドを活用したソリューションを開発している。

ヘッドウォータース

すでに、チェーン展開する居酒屋などではタブレット端末で電子メニューを導入しているところも多い。

前出の特殊なフレーズのことを思うと、そもそも、タブレットの方が簡単なのではないか? という疑問もある。

ヘッドウォータースの担当者に直撃してみたところ、実際のところ、リリースへの反響で「なぜ、タブレット端末で行わないのか」と疑問の声も多く寄せられているという。

「新しい技術であるAIやスマートスピーカーで関心を得たいという狙いは、もちろんある」(ヘッドウォータース)とのことだが、実は「スマートスピーカーを導入した大きな理由は別にある」と語った。

同社は2016年にも卓上ロボット「Sota」を利用した注文・対話システムを構築、展開するなど、飲食業界との取り組みは過去にも経験している。多くの顧客企業と対話する中で、居酒屋は回転率より「客単価」を向上する取り組みを重要視していることがわかった。

カニクリームコロッケ

居酒屋はオーダーを受ける店員がオススメし注文を促すことで、客単価を上げている。確かに、取材班もついオススメされてつい「ずわい蟹のクリームコロッケ」を注文してしまった。絶品だった。

担当者は「居酒屋さんの多くはオーダーを受ける際、オススメのメニューなどを案内して単価を上げている。見るだけのタブレットではその機会が失われてしまうが、スマートスピーカーであれば、実際の人間と話すような感覚で、レコメンド(推薦)ができるのではないか」と期待しているという。

開発スピードで利便性を追求していく

生ビール

アレクサに向かって「とりあえず、生ひとつ」という注文ができる日は遠くない?

ヘッドウォータースは、このアレクサ居酒屋の応答システムの開発を、アレクサの標準開発ツール(SDK)を使うのではなく、同社の独自クラウドサービス「Multi AI Platform」を使っている。これによって、機能の追加・改善を容易にしているという。たとえば、会計の際に「店員を呼ぶ」機能はリリース後に「アレクサがあるのに、店員を呼ぶのに既存のベルを使うのは不自然では」という声に応えた結果だ。

Multi AI Platform

ヘッドウォータースの「Multi AI Platform」はAPI経由でSaleforceやSlack、G Suiteなどにも導入できる柔軟性をもつ。

ヘッドウォータース

今後は、メニューや席の拡充はもちろん、POSとの連携や「日本酒の豆知識」や日本酒をオススメする機能などを実装する予定だ。SFのような世界観が実現するのか、客単価が上がりビジネスとして成功するのか。ともかく、テクノロジーの進歩を新しい形で楽しめるシステムであるのは間違いない。

(文、撮影・小林優多郎)

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